自治体バランスシート
自治体バランスシート(自治省ガイドライン)
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自治省ガイドライン 自治体バランスシート作成マニュアルの概要
○自治省がバランスシートの作成マニュアルを公表しました(平成12年3月)。 タイトル『地方公共団体の総合的な財政分析に関する調査研究会の報告書』です。以下、その概要を紹介します。
地方公共団体の総合的な財政分析に関する調査研究会報告書
平成12年3月
自治省
はしがき
「地方公共団体の総合的な財政分析に関する」調査研究会」は、地方公共団体の財政状況を総合的かつ長期的に把握するための手法について調査及び研究することを目的として、平成11年6月に発足したものである。
地方公共同体の財政状況の分析については様々な手法が用いられてきている。
従来から地方公共団体の財政状況を示す、いくつかの財政指標が開発されているが、こうした財政指標は、地方分権の時代により役に立つものであることが求められている。また、類似団体別市町村財政指数哀のように、地方公共団体をグループ化して比較分析しようとする手法も用いられているが、社会経済情勢の変化の中で、分析手法としての有効性を改めて検討することも必要である。さらに、最近ではストック情報への関心の高まりからバランスシートの作成に取り組む地方公共団体も現れているが、バランスシート間の比較可能性を向上させる観点等から、作成基準を求める意見もある。
当研究会では、研究会発足の初年度である本年度は、住民・地方公共団体の関高の高いバランスシートの具体的な作成手法を検討するとともに、昭和30年代から採用されている類似団体別財政指数表の有効性を検証することとし、平成11年6月2日から平成12年3月13日まで9回にわたり研究会を開催し、これらの課題について精力的に検討を進めてきたものである。
このたび当研究会では、これらの課題について一定の整理を行ったので、その検討成果をし、広く各地方公共団体の参考に供することとしたものである。
バスシートについては、公営企業会計等との連結決算等まで含めれば課題は少なくないが、ここでは単一の地方公共団体の普通会計についてバランスシートを作成する場合を念頭に、具体的な手法について明らかにすることとした
また、頴似団体別市町村財政指数表については、具体的なデータ分析に基づき、現行の類似団体の頼型設定湧基準が、態様が類似している団体をグループ化し、財政状況の比較検討を行うという目的に照らして有効なものとなっているかどうかについて、短型設定基準の有効性について検証を試みることとした。
地方公共団体の財政状況の把握の手法について検討すべき内容は幅広く、今回の検討結果はその一部に留まるものである。
当研究会としては、今後、財政指標等の課連についても積極的に検討を進めることとしたい。今回一通り整理をしたバランスシートの作成手法についても、地方公共団体等のご意見もいただきながら、さらなる改善を図っていきたいと考えている。
第1 バランスシートの作成手法について
T はじめに
地方公共団体の予算、決算、財政状況等については、地方自治法等の法令の規定により公表が義務付けられている。
各地方公共団体においては、かねてより自らの財政状況の分析等に工夫を講じているが、昨今その一手法として、バランスシートの作成を試みる団体が出てきている。また、経済戦略会議が平成11年2月26目に小渕総理に対して行った答申(「日本経済再生への戦略」)の中にも、「公会計制度の改蓄」として地方公共団体を含む公的部門への企業会計の導入の必要性の指摘が盛り込まれた。
地方公共団体のうち、公営企業等ではバランスシートが導入されており、普通会計についても、かねてから地方公共団体の協力の下にバランスシートの研究が進められてきている。例えば、昭和63年には財団法人地方自治協会が自治省の協力を得て「企業会計的手法による財政分析と今後の財政運営のあり方に関する研究会」を開催し、24市町でバランスシート作成のシミュレーションを行い、その成果を公表している。
しかしながら、現在のところ、普通会計のバランスシートの作成基準は統一されておらず、地方公共団体間で作成したバランスシート問の比較が困難であるとの指摘がある。
以上の諸事情を踏まえ、当研究会では、地方公共団体が普通会計の財政状況をわかりやすく公表することを支援する観点から、地方公共団体が普通会計のバランスシート作成に取り組む場合の「作成マニュアル」を検討することとしたものである。
U 当研究会の検討の槻要
当研究会では、まず地方公共団体の財務活動の特徴を、特に企業との仕較において確認するところから検討に着手した。本来、企業活動に由来するバランスシートを地方公共団体についても意味のあるものとするためには、バランスシートが地方公共団体の財務活動の実情を十分踏まえたものであることが求められると考えたためである。
まず活動の目的では、企業が利益の追求を目的としているのに対して、地方公共団体は住民福祉の増進を臼的としており、利益の概念を持たない。また、財務活動は、企業が利益を追求するための弾力的な財務活動を認めているのに対し、税金を活動資源とする地方公共団体の財務活動は、予算の議会での議決を通して、議会による統制の下に置かれている(財政民主主義)。
このため地方公共団体の経理では、予算の適正・確実な執行に資する現金主義が採用されている(これに対して、企業は発生主義)。
また、財政状態が悪化した場合には、企業では企業体の解散(清算)もあり得るのに対して、地方公共団体では財政再建の手続に移行し、清算は予定されていない。
次に、当研究会では作成しようとするバランスシートの意義について改めて確認した。バランスシートは、企業の財政状態を明らかにするため、一定の時点において当該企業が保有するすべての資産、負債等のストックの状況を総括的に表示した報告書であるが、地方公共団体にバランスシートを導入した場合、当該地方公共団体の財政状況をどのような意味で明らかにすることができるかを予め確認する必要があると考えたためである。また、地方公共団体で作成されるバランスシートは、住民に資産等の状況を明らかにする上でも役立つものであることが望まれる。
さて、会計学における解釈も参照すると、いわゆるバランスシートの意義はいくつかに分類することができる。
一つには財産目録の要約表としてのバランスシートがある。
これはバランスシート作成の目的を企業の債務弁済能力の把握に重きを置いた考え方であり、換金価値のあるものを、時価により、資産に計上するものである。これに対し、バランスシートを期間損益計算の補助手段として用いるために、費用となっていない支出を一覧表にしたバランスシートがある。さらに第三の分類として、企業内部における資金の源泉と使途を表すバランスシートがある。
これは、経営資源の状況とその経営資源を調達するための財源の状況を明らかにするものであり、企業の合理的な経営管理に役立てようとするものである。資産の評価は原則として、取得原価によることになる。
当研究会では、これらのバランスシートの意義を勘案した結果、専ら第三の考え方に沿ってバランスシートを作成する見解をとることとした。
すなわち、第一の考え方は企業の清算を前提にするものであるが、地方公共団体では清算が予定されていない0 また、第二の考え方は期間損益計算を前提にするものであり、営利活動を目的としない地方公共団体の財務活動に馴染まない。これらに対して第三の考え方は、もともと効率的な企業経営を行うために経営者が自らの経営資源等を的確に把握することを目的として提唱されたものであり、税金の効率的な活用が求められる地方公共団体の財務運営に役立つものと考えられるためである。
以上の検討に基づき、当研究会としてはバランスシートの作成に当たっては、いわゆる取得原価主義を採用することとした。取得原価は支出の事実に基づくものであり一義的に決められることから、地方公共団体問の比較にも馴染むものと考えられる。
取得原価としては決算統計*2のデータを用いることとした。決算統計のデータは資産形成のために実際に投下された税等の額を示しているからである(データの妥当性)。また、決算統計のデータを用いることにより、原則的に全ての地方公共団体を通じて統一的にデ山夕を把握できること(各地方公共団体問の統一性)、電算処理化された昭和44年度に遡ってデータの操作が比較的容易であること(データ収集の簡易性)等の特長も指摘できる。この手法によることで、小規模な地方公共団体でも址較的容易にバランスシ山卜作成に取り組むことが可能になるものと考えられる。
なお、昭和43年度以前の取得財産は、現在の物価水準からみてその価額が相当に小さく、減価償却を行えば未償却残高は僅少であるものと考えられるが、昭和43年度以前の取得財産についても確実なデータに基づくもので、各地方公共団体が資産計上することが望ましいと判断する場合には、計上することが適当であると考えられる。
続いて、バランスシ}ト作成に当たっての基本的な前提条件を整理した。
当研究会においては先行研究の成果を基礎に、近年地方公共団体で作成されているバランスシートも参照しながら検討を進めることとした。また、検討に当たっては、複数の市の協力の下に、決算統計等の資料の制約等を確認することとした。
まず、対象とする会計は普通会計*3とした。
公営企業会計では既にバランスシートが作成されているところである。
また、流動・固定の別は一年基準によることとした。
続いて、資産の部の整理を行った。
有形固定資産の評価額は、決算統計の普通建設事業費の額を累計することにより求めることとした。普通建設事業費とは、道路、橋りょう、学校、庁舎等公共用又は公用施設の新増設等の資産形成に資する事業に要する投資的確費である。
また、実際の有形固定資産が、土地を除いて、経常的に減価している事実に鑑み、後世代に縦承される資産を把握する観点から減価償却を行うこととした。
なお、減価償却は耐用年数が資産の特性を極力反映していることが望ましいこと、決算統計資料との整合性を図ることが好ましいこと等を勘案し、決算統計の普通建設事業費の区分ごとに、地方公営企業法施行規則の定める耐用年数等を参考にして耐用年数を設けることとした。維持補修等を行うことによって、相当長期にわたって供用されることが予想される資産があるが、こうした資産についても、実際に経常的に減価している事実に鑑み、耐用年数を設けることとした。
国等より補助金等の交付を受けて形成された有形固定資産は計上することとしたが、他団体に支出した補助金、負担金等により形成された有形固定資産は計上しないこととした。これは、当該団体が所有・管理する財産を資産計上するとの考え方に基づくものである。
また、有形固定資産は行政目的別に分類・表示することとし、別途内書きで土地の取得累計額を一括表示することとした。これは、バランスシートができるだけ財政運営にも役立つように資産形成分野を明らかにすることが望ましい、との考え方によったものである。
なお、当該団体に形成されている資産の状況を住民にわかりやすく開示する観点から、決算書に添付される「財産に関する調書」等の内容を踏まえ、主な有形固定資産について、附属書穎で取得価額、減価償却累計額等の情報を表示することとし、土地については附属書類で主要な分野ごとの昭和44年度以降の取得累計額を明らかにすることとする。
また、今回の研究会の検討においては繰延資産は設けないこととした。繰延資産は将来費用化するものを資産の計算項目として計上する手法であるが、今回の研究では、損益計算を前提としていないこと等から繰延資産は設けないこととしたものである。
負債の部では、次のような検討を行った。
地方債に関連しては、将来の交付税措置が予定されている地方債の表示方法が議論された。この場合、将来の交付税措置とは基準財政需要額に公債費の一定割合を含めて算定するということであって、後年度に現金の収入が予定されることと同義ではないので、本義に表示等しないこととした。なお、この情報については参考として、別途、附属書類に表示することも考えられる。
また、見返り資産のない、いわゆる赤字地方債についても当該団体の財政状況を認識する上で重要な情報と考えられることから、負債の部に計上することとした。
退職給与引当金については、地方公共団体の実務においては、通常、退職手当が制度化されていることから、負債科目に計上することとした。退横手当を支給すべき事由が既に発生していること及び財政状況を的確に表示する観点から、要支給額の100%を引当金計上することとした。
なお、退聴手当組合*4に加入している地方公共団体については、退職手当の支払億務を負うのは、直接には退職手当組合となることから、加入団体自身の負債科目に計上すべきか議論がなされたが、支給される退職手当の財源は組合構成団体の負担金で賄われていることから、こうした団体についても退職手当要支給額を計上することとした。
債務負担行為に関連しては、PFI等により整備された、見返り財源の無い資産の貸方表示の方法が議論されたが、これについては、見返り財源を「債務負担行為」として負債科目に計上することとした。また、第三セクター等の揖失補償等に係る債務負担行弟の設定額は、債務が確定したものを除き、いわば偶発債務に相当する参考情報として欄外注記することとし、利子補給等に係る債務負担行弟設定額も参考情報として欄外注記することとした。
正味資産の部では、次のような検討を行った。
まず、部の名称について、バランスシートの利用者がこの部を、企業会計における資本、持分のように誤解しないような名称とすべきとの指摘があり、当研究会では、正味資産の名称を用いることとした。
正味資産科目は、国庫支出金・都道府県支出金と一般財源等に区分して表示することとした。ここで盟庫支出金・都道府県支出金とは、資産形成の財源となったものを指しており、財政運営上重要な情報であると考えられる。また、国摩支出金・都道府県支出金は普通建設事業費の区分ごとに耐用年数に合わせて償却することとした。
以上の検討のほかに、作成したバランスシートの活用方法について検討した。企業会計の財務指標を参考にした分析手法、行政運営コストの分析等が議論されたが、これらについては、今後、バランスシートの作成事例を積み重ねる中で分析の知見を増すことが必要であると考えられる。先述したとおり、今回検討した作成手法によれば、地方公共団体でのバランスシート作成の取組が容易になると考えられることから、多くの作成事例を検討することを通じて、バランスシート間の比較可能性を向上させるとともに、作成手法の一層の改良・改善を図ることが期待される。
なお、地方公共団体と民間企業とではその活動目的、資産の意味等が大きく異なることは先述したところであり、当研究会において検討したバランスシートと民間企業のバランスシートを単純に比較することはできないことに留意しなければならない。
Vバランスシートの具体的な作成手法
以下は次回に 
(7月7日)
★株式会社第1勧銀総合研究所が主催した『自治体向けバランスシート作成活用セミナー』があって参加しました。今、自治体の決算が単純に歳入・歳出を表すものだけてはなくて、民間企業でいうところの貸借対照表(バランスシート)を作成・公表すべきであるという議論が高まっています。住民に対する情報公開やアカウンタビリティーの側面からも指摘されています。
そんな中で、東京都や熊本県、三重県、藤沢市などにおいてすでにその取り組みがなされ、検討・公表されているものも出てきているとのことでした。自治省からも作成ガイドラインが出され、この会計年度末現在のバランスシートが高槻市においても作成が検討されるのではないか、という情勢です。 学習した中身については、別の項を起こして紹介したいと思います。
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