1 はじめに
今、日本は明治維新、第二次世界大戦後に次ぐ「第三の変革期」にあると言われております。かつてのこれら変革は、いずれも強い外圧を契機としてもたらされ、既存の価値観を打ち砕き、わが国は自らの力で大きく発展してきました。そして同時に、国民誰もが日本は変わると感じてまいりました。
ところが、今日の社会状況は時代の流れの中で大変な変化、変容を遂げているにもかかわらず、急速な少子高齢化、情報化、グローバル化、未曾有の財政難などの環境の変化は、平常を揺るがすほどの衝撃とは受け取られず、誰もが大変だとは思いながらも、ともすれば現状に流され、構造改革も道半ばであります。
私は市政の枢要を担って30数年経ちましたが、「この世に生き残れるのは、変化に対応できるものだけ」との思いを強くいたしております。
地方分権が進展し、一方では今後とも更に厳しくなると予測される財政環境下では、当然のこととして行政のできることも限られてまいります。今までどおりのことを、今までと同じようにやっていたのでは、市民生活に必要不可欠な公共サービスの確保すらも守れません。
限られた財源の中であっても、市民満足度を高めていくには、「市民ができることは市民で」といった市民の力が主体的に発揮される社会を構築しなければなりません。その上で、市民と行政が役割と責任を明確にして協働することができれば、高槻市の活力は生まれてくるものと確信いたしております。
このような認識の下で、私は、昨年、市政二期目を担うに当たり、まず、8月にホームページを抜本的に刷新し、10月にはフラット制を導入して機構改革を実施いたしました。これらは次のステージへの「変革」の基礎づくりであります。市内はもとより、全国から数多くいただくご意見から、「高槻市が変わろうとしている」ことが十分に伝わっていると確信し、その手応えを感じております。
その基盤の上に立って、「持続可能」、「高槻の魅力向上」という視点で市政全般にわたり抜本的な見直しを図り、施策を選択し、人材、予算等の資源を集中して、とりわけ子どもにかかわる子育て、教育を最重点に取り組んでまいる所存であります。
第一、第二の変革期の明治維新、第二次世界大戦後は、日本にとって大変な時期であったからこそ、教育の重要性が認識されて、今日の日本を築く人材の育成がなされました。子どもたちを「人財」に育てるのは次代の社会に対する私たちの責任であります。
人口減少が目前に迫り、次世代育成が国を挙げての課題となっております。少子化の流れを変えることも重要ですが、加えて、心しなければならないのは、子どもたちがどのように育ち、成長しているのかであります。
かつては、まちのあちらこちらで、群がって日の暮れるのを忘れて駆け回る子どもたちの姿がありました。そこには、自分たちで作った集団のルールがあり、石ころひとつで遊びを生み出す創造力とエネルギーにあふれていました。
有り余るほどの豊かさの中で生まれ育った現代の子どもたちが、明るさを失い、元気な子どもらしい心を見失いつつあるのではないかと懸念されています。少子化という、子どもの育ちには厳しい時代であるからこそ、次代の高槻を担っていく子どもたちに、個性豊かなオンリーワンとの自信と生きる力を育み、地域ぐるみで、子どもを健やかに安心して育てられるまちづくりを目指して「子育て」、「教育」を最重点施策とするものです。
変革期にあって、私はまちづくりに市民の皆様と夢を共有したいと思います。その一つに、都市型公園の整備を契機として「サッカーのまち高槻」に「ガンバ大阪」の誘致に向け、スポーツが生活の一部となる‘スポーツ文化’の醸成へと引き続き調査研究してまいります。
こうした特色のあるまちづくりにより、高槻ブランドを創造して、全国に中核市高槻の存在感をアピールし、「住みたいまち、訪れたいまち高槻」を目指しております。
緩やかながら景気回復の兆候が関係者によって言われるようになり、「失われた時代」からようやく抜け出しつつあると言われる今がまさに、地方自治体にとっても正念場なのであります。
この10数年間、「変革」を先送りしてきたことにより日本再生の好機を逸したことを教訓に、将来に向かってやらなければならないことには機を失することなく真摯に取り組み、従来からの「ものさし」を改め、本年を将来に向けた「変革元年」としてまいりたいと存じます。
以上、市政運営につきまして、私の基本的な考え方を申し述べましたことを踏まえ、1次代を担う子どもの育成 2 高齢者が安心して暮らせる環境づくり 3
都市機能と調和する産業振興 4 都市の活性化や交通環境の向上 5 環境にやさしい循環型社会 6
歴史、文化、自然に親しめる環境づくりを重点施策として、平成16年度の市政を運営いたしてまいります。
2 平成16年度の重点施策について
T 「次代を担う子どもの育成」への取組
近年、少子化の急速な進行や、核家族化、地域における人間関係の希薄化など家庭及び地域を取り巻く環境が大きく変化してきております。
こうした中で将来を見据えたとき、今こそ、「子育て、教育」に力をそそぎ、次代を担う子どもたちの育成を図ることが、未来の世代に責任を持つ我々の最重要課題であり、このことこそが、高槻は「住みよいまち、住みたいまち」と実感していただけるものと、考えております。
そこで、次代を担う子どもを育成するために、以下の取組を進めてまいります。
まず、「子育て支援」に向けての取組であります。
一点目は、次代の社会を担う子どもの育成に向けて、「次世代育成支援対策高槻市行動計画」を平成16年度末を目途に策定してまいります。
二点目は、「子育て「あんしん」ネットの構築」に向けての取組を進め、子育て支援の充実を図ってまいります。
地域子育て支援センター、ファミリー・サポート・センター等のサービスの提供に加えて、新たに、「子育て支援総合コーディネート」、「育児支援家庭訪問」、「子育て出前保育講座」の各事業を実施してまいります。
特に、子育て支援情報の充実を図り、多様な子育て支援サービスの情報提供を行うとともに、コーディネーターが個々の相談に積極的に対応してまいります。
三点目は、保育所への待機児童の解消に向けて、更に努力をしてまいります。
仕事と子育ての両立支援に向けて、民間保育所の増改築による施設整備や定数の見直しにより定員の増員を図ってまいります。
四点目は、「幼稚園における子育て支援の充実」について検討してまいります。
平成16年度に策定します「幼児教育振興計画」において、本年4月から試行する市立幼稚園2園での保育時間の延長を図ることなどによって、幼保一元化を具体化させるための課題や問題点の研究、検証を行うことを始め、幼稚園での子育て支援の充実方策について明らかにいたします。
次に、「良好な教育環境の整備」への取組であります。
まず、一点目は、小・中学校における英語教育の充実であります。
昨年9月から「スーパーイングリッシュクラス」を実施し、すべての中学校に外国人の英語指導助手を配置し、英語で授業を行っております。
小学校におきましても、二学期からすべての学校で6年生の「総合的な学習の時間」を活用し、英語に慣れ親しむ「英語教育支援事業」を行ってまいります。
二点目は、すべての小中学校の普通教室と職員室への「冷房設備の設置」についてであります。
二学期までに冷房設備を設置できるよう全力を尽くし、子どもたちが良好な環境の中で年間を通じて、学習できるようにしてまいります。
三点目は、「少人数授業」についてであります。
4月を目途に「少人数授業」が実現可能になるようにしてまいります。
小学校1年生において、1学級が35人を超える学級を有する学校に指導者1名を配置し、一人ひとりの児童にきめ細かな学習指導等を行い、小学校生活をスムーズにスタートできるようにしてまいります。
これら三点の事業につきましては、府内各市に先行し、より充実した形で実現してまいります。
四点目は、阿武山地区にオープンします「図書館と公民館の複合施設」についてであります。
本年秋にオープンしますこの複合施設は、児童生徒が学校活動だけでなく、地域で世代を超えた人々との交流の中で、多様な学習を体験できる生涯学習の拠点にもなるものであり、積極的な活用を望むものであります。
これらの取組により、未来の社会を担う子どもたちが生き生きと育ち、確かな学力と豊かな心を育てられるまちづくりに努めてまいります。
U 「高齢者が安心して暮らせる環境づくり」への取組
次に、「高齢者が安心して暮らせる環境づくり」であります。
少子化とともに高齢化も確実に進行しており、誰もが尊厳を持って、住み慣れた地域で自立し、支えあい、心豊かに過ごすことができるために、国が社会保障制度全般の厳しい見直しを進める中で、持続可能な福祉サービスの提供に努めることにより、「高齢者が安心して暮らせる環境づくり」に取り組んでまいります。
一点目は、「地域福祉計画」の策定についてであります。
高齢者等が住み慣れた地域で安心して暮らせるように、地域住民の意見の反映に努めながら、自助、互助、公助が有機的に組み合わされた地域福祉システムの構築を目指して、平成17年度中を目途に策定してまいります。
二点目は、「高齢者地域支えあい事業」についてであります。
高齢者が地域で安心して暮らせるために、本年7月から、既に実施してきた小地域ネットワーク活動の中の見守り・声かけ訪問活動を核とした「高齢者地域支えあい事業」を実施してまいります。
三点目は、「たかつき高齢者大学」を本年10月を目途に創設してまいります。
生涯学習の一環として、学びを通じて、高齢者が持つ豊かな経験や知識、技術に新しい息吹を与え、地域社会に貢献する人材を養成するとともに、高齢者の生きがいと健康づくりに資する場として創設してまいります。併せて、官学協働のまちづくりの視点から市内大学等から講師を派遣していただき連携を図るなど、本市の特色を盛り込んだ講座を導入してまいります。
四点目は、「シニア社会活動マッチング事業」についてであります。
高齢者が長年培ってきた経験・知識・技術と、それらの提供を望んでいる人たちとのマッチングを図ることにより、高齢者のボランティア活動や生きがいづくりを支援してまいります。
五点目は、「高齢者市バス無料乗車制度」についてであります。
人口比率上、本格的に増大する高齢社会を見据えて、受益と負担の考え方も含め、従来の制度の在り方について更に継続して検討し、できるだけ早い時期に具体案をお示ししてまいります。
このような取組を通じて、高齢者自らが生きがいと誇りを持って、共に支え合う、持続可能なまちづくりに努めてまいります。
V 「都市機能と調和する産業振興」への取組
現在の厳しい経済環境の中で、都市を維持・発展的に経営していくためには、地域自らが産業を振興して雇用と活力を創出し、魅力と活力あふれる地域社会を実現しなければなりません。
そこで、平成15年度に策定しました産業振興ビジョンにある「チャレンジ・プロジェクト」を推進するとともに、農地や森林が持つ環境やレクリエーション等の多面的な機能を活用した農林業の振興を図り、地域経済や産業の活性化とまちのにぎわいづくりに取り組んでまいります。
まず、一点目は、「都心のにぎわい創出プロジェクト」についてであります。
本年2月、本市の玄関口であるJR高槻駅北地区の再開発ビルがオープンし、にぎわいが期待されます。さらに、都心における一層のにぎわい創出に向け、商工会議所が設立に向けて取り組んでいるTMO(まちづくり機関)を支援し、商業者・市民・行政等が連携を図りながら、民間レベルでの中心市街地の活性化に努めてまいります。
二点目は、「観光集客まちづくりプロジェクト」についてであります。
本年4月のJR高槻駅構内の観光総合案内所と本年秋を目途に観光ボランティアガイドを創設する観光協会に対して支援を行ってまいります。
さらに、産業情報サイトに「バーチャル観光案内所」や「バーチャル観光フェア」を掲載し、本市のホームページと連携を図りながら全国に情報発信してまいります。
三点目は、「ものづくり高度化支援プロジェクト」についてであります。
ビジネスコーディネーターの派遣制度につきましては、これまでに、市内製造業を中心に200社以上の企業を個別訪問し、約20社に対して販路開拓等の支援を行ってまいりました。平成16年度も引き続き、企業ニーズに応じた業種間の橋渡しやビジネスマッチングを行い、製造業の活性化に努めてまいります。
また、産学連携につきましては、セミナーや交流会を開催し、大学等と企業ニーズとのマッチングを図ることにより地域産業の活性化を促してまいります。
四点目は、「起業家育成プロジェクト」についてであります。
起業家育成事業につきましては、2年間の実験事業で18名の方々が起業家として成長し活躍されております。今後も、チャレンジ精神と独創性のある地元に密着した起業家を生み出すための環境を整備し、起業家育成に努めてまいります。
五点目は、農林業の振興についてであります。
本市の農地や森林とこれに携わる人々の活動を含む「めぐみ資源」を有効に活用し、農林業の方向性を示す「農林業振興ビジョン」を本年秋を目途に策定し、農林業の持続的な更なる発展に向けて取り組んでまいります。
六点目は、雇用対策についてであります。
厳しい雇用情勢の中、ハローワーク・大阪府との連携による「合同就職面接会」を開催し、市民の就労支援に努めてまいります。
また、国の補助金を活用した緊急雇用の創出事業につきましては、これまでに、約840人の雇用を創出しており、平成16年度も引き続き、家屋図の電子化業務等に対してこの事業を活用してまいります。
これらの取組を通じて、産業の振興と雇用の創出を図り、魅力的で活力あるまちづくりに努めてまいります。
W 「都市の活性化や交通環境の向上」への取組
都市は、人や企業が様々な活動を最も活発に行う場であり、人々が安全・安心に暮らせる場でなくてはなりません。
そのため、市街地の再生による都市機能の再構築と交通環境の改善による交通利便性の向上により、都市の活性化へとつなげてまいります。
また、公園を始め、都市施設の整備などによる都市防災への対応の強化を図ってまいります。
まず、一点目は、市街地の整備についてであります。
JR 高槻駅北の再開発事業につきましては、駅前広場などの整備につきましても本年9月完成を目途に引き続き支援してまいります。
また、阪急上牧駅北の土地区画整理事業や上牧駅のバリアフリー化につきましては、平成16年度内の工事完了に向け引き続き支援を行うとともに、同駅前における行政サービスコーナー等を併設した自転車駐車場につきましては、平成17年4月開設に向け整備を図ってまいります。
これらにより本市の中心市街地や東の玄関口にふさわしい良好な市街地の形成を図ってまいります。
なお、民間プロジェクト主導の都市再生緊急整備地域の取組につきましては、地域貢献や都市の魅力向上につながるよう協議を進めてまいります。
さらに、駅周辺の放置自転車対策として、従来からの街頭での指導員等による置場への誘導や啓発に加え、撤去し引取りのない放置自転車の一部を全国で初めてインターネットオークションに掲載し、広く市民に放置自転車の実態を訴え、啓発につなげてまいります。
二点目は、交通環境の改善についてであります。
高槻ジャンクション・インターチェンジを備えた第二名神自動車道が整備されることにより、人・物・情報の流れにおいて、本市の広域的機能をより一層強化できることから、早期に整備されるよう国等に対し、強く要望してまいります。
次に、スムーズな交通環境への取組についてであります。
中心市街地の交通渋滞を緩和するための内環状幹線道路の整備として、まず、国道171号の三車線化の実現を国に働きかけ、長期的な視点の下に研究を行ってまいります。
また、芥川上の口線につきましては、大阪府と早期着手に向け、整備手法等の協議を引き続き行ってまいります。
なお、駅前から国道171号等の幹線道路へのアクセス道路となる高槻北駅南芥川線及び阪急北側線等につきましては、早期整備に向け、引き続き取り組んでまいります。
さらに、都市間道路等の整備につきましては、十三高槻線の国道171号までの早期延伸などを大阪府に対し、強く要請してまいります。
三点目は、城跡公園についてであります。
中心市街地に位置する歴史と緑の豊富な都市シンボルとして、高槻城跡地区周辺の将来構想等の策定に向けて、市民の意見を幅広く求めながら調査、検討を進めてまいります。
四点目は、地域防災等についてであります。
地域防災計画実施計画の策定を始め、喫緊の課題である「東南海・南海地震防災対策推進計画」を、大阪府の同計画との整合性を図りながら策定してまいります。
消防関係につきましては、署所の適正配置の観点から平成17年10月開設に向け、(仮称)北消防署磐手分署建設工事に着手してまいります。
さらに、特別救急隊につきましては、平成14年10月から試行し、1年間の救急搬送における心肺停止患者のうち、既に2人の方が社会復帰されるという大きな成果を上げていることから、現在週1日体制となっている24時間運用を週3日の体制にステップアップを図り、質的充実により救命率の向上を目指してまいります。
これらの取組により、将来の「あふれる魅力 にぎわいある高槻」の創造に努めてまいります。
X 「環境にやさしい循環型社会」への取組
地球温暖化防止を始めとして、今、地球環境をよくしていこうとする動きが高まる中、豊かな自然、恵まれた歴史や文化を持つ“ふるさと高槻”を次の世代に引き継いでいくため、市民・事業者・行政が主体的に協働し、循環型社会に向けた取組を進めてまいります。
一点目は、「たかつき環境市民会議」についてであります。
市民・事業者・行政のパートナーシップ組織である「たかつき環境市民会議」が行う実践活動と推進体制に対して支援してまいります。
また、「たかつき環境市民会議」が、小・中学校での総合学習の支援活動などをもとに策定される市民の行動計画である「たかつきローカルアジェンダ21」と本市の「環境実施計画」と連携を図りつつ、環境に対する取組を市民・事業者とともに進めてまいります。
二点目は、地球温暖化防止に向けた取組であります。
市役所は一事業所として、率先して省エネルギー対策を行うとともに、ごみ収集車などへの低公害車の導入、さらには、新たに建設する公共施設に太陽光発電などを積極的に取り入れてまいります。また、循環型エネルギーである木質ペレットの利用普及につきましても引き続き進めてまいります。これらにより二酸化炭素排出削減に努めてまいります。
一方、二酸化炭素の吸収源としても注目されている本市の豊かな森林の保全と活用から、国・府の協力を得て、森林ボランティアと協働し、「楊梅山、共生の森づくり」の実現に向け、積極的に取り組んでまいります。
なお、行政の環境に関する施策推進と事務事業の環境負荷の継続的改善を図るため、ISO14001の認証の更新を行ってまいります。
三点目は、ごみ減量・再資源化への取組であります。
「ごみ減量化推進計画」に基づき、集団回収の拡大及び多量排出事業者の対象について見直しを行うとともに、粗大ごみ申込み制の具体案の策定、さらには課題である収集用ごみ袋の透明化に向けた調査研究を行い、ごみ減量・再資源化に努めてまいります。
また、市民・事業者・行政が協働した取組である「環境美化推進デー」は、昨年秋には約34,000人の参加者があり、平成16年度も地域との連携・協働を深めつつ、地域の自主的・自立的な取組ができるよう、引き続き支援及び啓発を行い、市域の環境美化に市民・事業者が自ら関われるよう努めてまいります。
これらの取組により、環境にやさしい循環型社会「エコシティたかつき」を創造してまいります。
Y 歴史、文化、自然に親しめる環境づくり
本市には、数多くの歴史遺産があり、これらは「歴史豊かなまち」として全国に情報発信できる貴重な財産です。特に今城塚古墳は、歴史上高く評価されており、昨年8
月にはNHK スペシャルで「史上初 大王陵・巨大はにわ群発掘」というテーマで放映され、全国各地において大きな反響を呼びました。
また、このたびの排水溝の発見は、今城塚古墳が巨大な横穴式石室を採用した大王墓であることを証明するとともに、学術上極めて重要な事例として大いに注目されています。
これらの貴重な遺産を活かし、市民に郷土への愛着を持っていただくとともに、歴史文化を基礎とした新しい文化の創造を目指し、子どもたちが成長したとき、高槻を「誇れるまち」と感じてもらえるように努めてまいります。
また、緑が少ない大阪で、北摂の山並みと淀川の豊かな自然は、本市の大きな特色であります。JT
生命誌研究館館長の中村桂子さんとの対談を通じて、経済性や利便性を優先しすぎた現代社会において、改めて「自然の重要性」を認識し、「生命の大切さ」を考えなければならないと痛感いたしました。そして、より多くの市民にもこれらについて考えていただき、自然と共生しながら、子どもたちを生き生きと心豊かに育てる環境づくりを共に進めてまいりたいと考えております。
まず、一点目は、「今城塚古墳、闘鶏山古墳」についてであります。
市民が直接歴史に触れ、関心を持てるように、公有化を進めていた今城塚古墳を平成16年度から史跡公園として整備していくとともに、高さ170センチと日本最大である家形埴輪など、出土品の特別展を今春、「しろあと歴史館」で開催いたします。
また、三島古墳群の中で、完全未盗掘の前方後円墳として良好に遺存している闘鶏山古墳の保存整備を図るため、引き続き確認調査に取り組んでまいります。
二点目は、「文化財ボランティア」、いわゆる歴史ボランティアについてであります。
平成15年度、約50名の市民が歴史についての講座を受講され、本年秋からは文化財スタッフや観光ボランティアガイドとして従事していただき、市民参加による歴史のまちづくりの一翼を担っていただきます。
三点目は、「文化芸術の振興」についてであります。
市民の文化活動の振興を図るため、文化振興事業団が開催する市民参加による市民劇場などの自主事業や講座に対し支援してまいります。特に、「こどもミュージカル」など、子どもたちが創造性を伸ばし、感性豊かに育つような事業展開に努めてまいります。また、市庁舎内に子どもたちの絵画などを展示し、市民に身近で親しまれる美術館のような庁舎にしてまいります。
四点目は、JT 生命誌研究館と共に事業を展開してまいります。
開館10周年記念イベントで取り組まれた朗読ミュージカルを「高槻でよみがえる蟲愛むしめづる姫君」として文化振興事業団で本年5
月に開催いたします。また、JT
生命誌研究館を子どもたちの学習の場として利用させていただくなど、市民が「自然との共生」や「生命の大切さ」を考えることができる事業を共同で実施してまいります。
五点目は、「市民の手による新しい文化の創造」を支援してまいります。
「高槻ジャズストリート」は、全国からも多くの人が集まる市民手づくりの大きなイベントとなっており、市民の財産として更に発展されるよう、引き続き支援してまいります。
また、本市は「サッカーのまち」としても知られており、これまで20名近いJ
リーガーを輩出してきました。昨年には、市民の手で「ガンバ大阪高槻後援会」が結成され、市民のサッカー熱が更に高まっております。
市民の中に、高槻を「ジャズとサッカーのまちに」という気運が高まりつつあり、市民による新しい高槻の顔づくりを盛り上げるよう支援してまいります。
これらの取組を通じて、全国に誇れる歴史・文化・自然を活かしたまちづくりに努めてまいります。
以上、重点施策を説明してまいりましたが、平成16年度の主要な施策につきましては、総合計画の体系に沿って、別紙にまとめておりますので、ご参照いただきますよう、お願いいたします。
3 平成16年度の行財政運営について
私が市長として二期目の、セカンドステージを迎える今、この変革時代を先取りする、適切な行財政運営を行ってまいります。また、市政に関わる専門的、総合的な事項について、各界をリードする識者に私が相談し、適切なアドバイスをいただける「市政アドバイザー制度」を再構築してまいります。このような先に向けた取組を通し、市民主体の市政を根付かせ、「変革高槻」を展開してまいります。
変革を先取りする組織・人材育成
昨年、市民の多様な行政ニーズに柔軟に応え、意思決定を早くすることで行政課題に機動的に取り組むため、組織改革を行いました。この改革による、フラット型組織の特長を活かし、素早く市民ニーズを把握し、先を見据えた持続可能な政策・施策形成の拡充に向け、各部の政策立案機能の強化を進めてまいります。
また、政府が進めている構造改革の一環である、地域再生や構造改革特区についても、積極的に実現できるよう提案いたします。
政策立案機能の強化とそれを担う人材育成の取組としまして、
1 政策立案機能の強化の前提となる、行政評価につきましては、事業の「選択と集中」のツールとして庁内に定着させ、市民に対し説明責任を果たせる、理解しやすい内容に変革します。併せて、今までの事務事業評価の公表に加え、施策基本事業評価を本年9月を目途に公表してまいります。
2 人事制度につきましては、これまでの年功を優先させていた制度を、職員個人の能力や業績をより重視する方向にシフトし、職員一人ひとりを活かす人事施策を行ってまいります。具体には、若年層職員の新しい発想やチャレンジ精神を引き出す制度として、係長級から課長級へ昇格させるなど、いわゆる「飛び級」人事につきまして検討を行います。また、仕事の実績が正しく評価され、そのことが処遇に結びつき、職員の更なる意欲を引き出す、新たな人事評価制度を導入してまいります。
人材育成につきましては、職員のチャレンジ意欲を登録し、各種プロジェクトに意欲ある職員を送り込む「チャレンジ・エントリー制度」を新たに設けます。政策形成の場と実務研修の場を合体させることで、柔軟かつ迅速に様々な課題に対応できる人材の育成を実現してまいります。また、各般の職種、職域やNPO
なども含めその成果が得られるように、職員派遣研修も行ってまいります。
以上の体制を基に、各部が自律的にその能力を発揮することを通して、次に掲げる取組を平成16年度の行財政運営の基本といたします。
高槻発の情報を市民、全国へ発信平成15
年度に引き続き、「オープン」と「スピード」を基本に、待ち望まれる多様な情報の発信に、積極的に取り組んでまいります。本年4月からはメールマガジンの発信を行ってまいります。さらに、自治体初の、ホームページ上でのウェブラジオの運営を行い、「広報たかつき」に加え、これらのホームページを中心とした取組を行うことにより、住民満足度の維持・向上に努めてまいります。
また、市民、団体、事業者の、様々なメディアを通した創意ある情報発信に対し、意欲を喚起する奨励賞などを設け、表彰する制度の検討も行ってまいります。
こうした多様な情報を、市はもとより市民も競いつつ、こぞって発信することにより、「高槻ブランド」を育ててまいります。
さらなる電子自治体を目指して
政府は、「e−JAPAN重点計画」において、IT
先進国を国家戦略と位置付けております。本市におきましては、個人情報保護やセキュリティーに十分に配慮し、適切な対策を構じつつ、平成16年度から実施する「e−たかつき計画」により、行政サービスの幅を広げ、簡素で効率的な市役所の確立を目指します。
主な内容としまして、電子入札を本年秋から一部の入札で行うとともに、本年7月を目途に固定資産税路線価図をホームページで公開してまいります。また、住基カードを含めたICカードに、新たな機能を付加し、多目的に利用するための調査・研究を行います。また、市民のIT技術の向上を図るため、高齢者を対象とした講習を、本年6月を目途に始めてまいります。
これらのことを通して、広く市民がIT 社会の豊かさ、便利さを享受できるまちづくりを進めてまいります。
行財政改革の質的変換
行財政改革につきましては、およそ10年後の高槻市の姿を見据え、進めてまいります。
今後10年間に進展する、高齢化のスピードは、府内でも突出し、市税収入の減少傾向が続いてまいります。職員についても、全体の半数、約1400名が定年退職を迎えることになります。
こうした危機的な状況を打破するために、まず、事務事業の総見直し等、効率化を進めていかなければなりません。民間経営のノウハウを活用する「指定管理者制度」については、本年秋には基本方針を立て、平成17年度から実施してまいります。職員についても、総合的な対応の中で、定数の抑制等を基調として、合理的な在り方を検討してまいります。
また、大幅な税収の減少が確実視される財政状況の中、コスト意識を堅持するとともに、受益と負担の関係を念頭におきつつ、使用料、手数料の見直しをしてまいります。
こうした取組により、市民サービスの維持・向上ができる持続可能な行財政システムを確立し、「やるべきことをやる市役所」を目指してまいります。
合併問題島
本町との合併問題につきましては、島本町は「住民の率直な意向を真摯に受け止め、更なる町政の発展を目指す」という判断を、自らの責任のもと、されたものと理解しております。
現在設置しております、助役をトップとした「高槻市・島本町合併等研究会」につきましては平成15年度をもって解消し、職員で構成している「高槻市・島本町広域行政勉強会」において、引き続き、広域行政等について研究を進め、今後に資するようにしてまいります。
以上、ご説明申し上げました行財政運営の方針に則りまして、議員各位を始め、市民各界各層のご意見、ご要望なども勘案しつつ、編成いたしました平成16年度の予算案の総額は、
一般会計で 1,041億3,169万8千円
特別会計で 1,038億8,197万6千円
合わせまして、2,080億1,367万4千円
としております。
なお、一般会計には、平成7年度、平成8年度発行の減税補填債の借換債が含まれており、その借換債を除きますと、一般会計では、954億5,239万8千円となり、一般会計の対前年度6月補正後予算比で、4.2%減の予算編成といたしております。
むすび
以上、平成16年度の重点施策と行財政運営について、ご説明申し上げてまいりました。
市制施行60周年となる昨年4月に本市は、中核市に移行しました。
中核市高槻としてまもなく1年を迎えます。中核市としての真価が問われるのはまさにこれからであります。地方分権のフロントランナーとして、「魅力といきがい」のある個性的なまちづくりに向け、更に邁進していかなければなりません。
どんな困難なことに対しても、燃えるような情熱を持って、事にあたれば、必ず道は開けると信じております。
本市の名誉市民「高碕達之助」氏は、まさにこれを実践された方であります。ダム建設のため、湖底に沈む予定になっていた桜の大木の移植に全身全霊をかけた、荘川桜の物語は、偉大なプロジェクトとして今も語り継がれています。
「故郷をなくす村人のため、なんとしてもこの桜を残したい」という熱い情熱と強い信念、そして感動に涙するやさしさが、多くの人々の心を動かし、誰もが不可能と考えていた老桜の移植を成功に導いたにほかなりません。
わが国を取り巻く海図なき大航海時代の今日、私もこのような本市の先人に学び、堅忍不抜の志で、大転換期の市政の舵を取ってまいる決意であります。
そして、後世において第2期奥本市政が、本市の変革の始まりであったとの評価がいただけるよう、全職員の先頭に立ち、決断と実行をもって、市政運営に取り組んでまいります。
議員各位並びに市民の皆様方の、より一層のご理解とご支援を心からお願い申し上げます。
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