俺の名はウソップ。
春風に誘われ、自分の中の冒険心と共に、危険な航海へと旅だった男だ。
人は自分の思いや希望を俺に託し、「我々の夢ウソップ」っと呼ぶ。
今日も、この俺を愛してやまない君たちの為に、俺のプライベートな一部をお見せしよう。
×月○日 晴れのち曇り
「ねぇ、そろそろオヤツにしない?」
それは、ナミのそんな一言から始まった。
「サンジ君、私、この前食べたあのフルーツの入ったワインゼリーが食べたいわ」
テーブルの上で、厚い専門書に目を通していたナミが、サンジを振り返る。
「分かりました、ナミさん。貴方の為に腕によりをかけた、特性のゼリーを用意しましょう」
「おぅ、サンジ、俺の分5コな」
危なっかしい手つきで、何かをチクチク縫っていたルフィが、視線すら外さずにそう告げると、サンジがその襟首を摘み上げた。
「だったら、お前も手伝え」
「・・・駄目だ! 俺は今日中にコレを作り上げないと、ゾロに:::!」
そんな言葉を叫びながら、ズルズルとキッチンに引きずられて行くルフィと、残された布きれ。
・・・・・・?
あいつは、さっきから何を一生懸命作ってたんだ?
摘み上げたその作品(!?)を見て、俺の謎はさらに深まった。
中央に丸い穴が開いた布が、ランダムに繋ぎあわせてあるコレは・・・?
しかも、縫い目がガタガタで、その形すら留めていない気がする。
前に居るナミに視線で問いかけると、首を横に振った答えが返ってきた。
「私も知らないわ。何でもゾロにあげるプレゼントらしいわよ」
・・・この得体の知れない物体がプレゼント!?
・・・イヤ。そんなことを言ってはいけない。
次は必ず、この俺に送られるだろうプレゼントを、暖かい言葉で受け取り、そのとき初めて、コレについての用途を訪ねれば良い。
それが、男らしさと言うモノだ。
さて・・・。
「じゃあ、俺、ゾロを呼びに行って来る」
そして、この気遣いもまた、人の心を引きつけて離さない、俺の魅力の一つだろう。
まあ、人の上に立つ者として、当然の事だと言えば、そう言えるだろうが。
ドアを開けるとすぐ、甲板の手すりに凭れて眠っているゾロが目に入った。
・・・暇さえあれば、寝てないか? こいつ。
「オイ、ゾロ起きろ。オヤツだってさ。お前も食べるだろ?」
「・・・んっ・・」
ぼんやりと目を開けたゾロが、大きく伸びをして、不意に顔を歪ませた。
「どうした?」
「なんでも、ねぇ・・・」
そして、不自然な程ゆっくりと立ち上がる。
「腰・・、痛めてるのか?」
「・・・イヤ、その・・・、たっ、ただの寝違いだ」
そうか?
・・・っと言いかけた俺の視線が、ゾロの首筋辺りでピタリと止まった。
この、鬱血の後は・・・!?
「ゾロ、お前、首にある、その赤い跡・・・」
「へっ?」
首筋に、手をあてたゾロの頬が、瞬間的にカッと赤く染まる。
・・・・・・?
何なんだ? この反応は!?
「・・・虫。・・・虫に刺されたんだよ。昨日外で寝てたから。ああ、痒い、痒い」
そう言って、微妙にずれた場所をポリポリと掻くゾロ。
虫? この時期に夜海を飛ぶ虫なんて、居たか?
「それより、ウソップ」
そんな俺の疑問をよそに、ゾロがいきなり声のトーンを落として詰め寄って来た。
「このこと、誰にも言うなよ」
「このこと?」
「虫・・刺されのことだよ」
「なんで?」
「人には、色々事情ってモノが、あ・・・・」
・・・あ?
「ゾロ、起きたのか! 昨日はー・・・!」
不意に止まったゾロの視線を追う暇もなく、いきなり後ろからルフィの声がかかる。
その瞬間、何を思ったのか、ゾロがルフィの口を両手で押さえ、甲板の上に押し倒した。
「ルフィ! テメェ!!」
ジタバタと、もがくルフィを押さえつけたまま、ゾロが低く唸る。
「ゾロ・・・?」
「・・・あっ、ああ。悪い、ウソップ。先に行っててくれねぇか?すぐ行く」
んーんー、と声なき声を発しているルフィを必死で押さえつけたまま、ゾロは複雑な表情でそう告げた。
そして、妙にウキウキしたルフィと、グッタリとしたゾロが現れたのは、それから1時間余りが過ぎてからの事だった。
・・・あの後、いったい何があったんだ?
何となくと言うか、どうしてもと言うか、それを聞けない雰囲気が2人を包んでいる。
・・・気にはなるのだが・・・。
俺の中の警戒信号が、それを聞いてはいけないと、言っている?
・・・・・・?
何となく、蟠った心を残しつつ、すぎて行った。
ある日のオヤツタイムだった。
おわり
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