ウソップ日記・4




 俺の名はウソップ。
 春風に誘われ、自分の中の冒険心と共に、危険な航海へと旅だった男だ。
 人は自分の思いや希望を俺に託し、「我々の夢ウソップ」っと呼ぶ。
 今日も、この俺を愛してやまない君たちの為に、俺のプライベートな一部をお見せしよう。



      ×月○日 晴れのち曇り


「ねぇ、そろそろオヤツにしない?」
 それは、ナミのそんな一言から始まった。
「サンジ君、私、この前食べたあのフルーツの入ったワインゼリーが食べたいわ」
 テーブルの上で、厚い専門書に目を通していたナミが、サンジを振り返る。
「分かりました、ナミさん。貴方の為に腕によりをかけた、特性のゼリーを用意しましょう」
「おぅ、サンジ、俺の分5コな」
 危なっかしい手つきで、何かをチクチク縫っていたルフィが、視線すら外さずにそう告げると、サンジがその襟首を摘み上げた。
「だったら、お前も手伝え」
「・・・駄目だ! 俺は今日中にコレを作り上げないと、ゾロに:::!」
 そんな言葉を叫びながら、ズルズルとキッチンに引きずられて行くルフィと、残された布きれ。
 ・・・・・・?
 あいつは、さっきから何を一生懸命作ってたんだ?
 摘み上げたその作品(!?)を見て、俺の謎はさらに深まった。
 中央に丸い穴が開いた布が、ランダムに繋ぎあわせてあるコレは・・・?
 しかも、縫い目がガタガタで、その形すら留めていない気がする。
 前に居るナミに視線で問いかけると、首を横に振った答えが返ってきた。
「私も知らないわ。何でもゾロにあげるプレゼントらしいわよ」
 ・・・この得体の知れない物体がプレゼント!?
 ・・・イヤ。そんなことを言ってはいけない。
 次は必ず、この俺に送られるだろうプレゼントを、暖かい言葉で受け取り、そのとき初めて、コレについての用途を訪ねれば良い。
 それが、男らしさと言うモノだ。
 さて・・・。
「じゃあ、俺、ゾロを呼びに行って来る」
 そして、この気遣いもまた、人の心を引きつけて離さない、俺の魅力の一つだろう。
 まあ、人の上に立つ者として、当然の事だと言えば、そう言えるだろうが。
 ドアを開けるとすぐ、甲板の手すりに凭れて眠っているゾロが目に入った。
 ・・・暇さえあれば、寝てないか? こいつ。
「オイ、ゾロ起きろ。オヤツだってさ。お前も食べるだろ?」
「・・・んっ・・」
 ぼんやりと目を開けたゾロが、大きく伸びをして、不意に顔を歪ませた。
「どうした?」
「なんでも、ねぇ・・・」
 そして、不自然な程ゆっくりと立ち上がる。
「腰・・、痛めてるのか?」
「・・・イヤ、その・・・、たっ、ただの寝違いだ」
 そうか?
 ・・・っと言いかけた俺の視線が、ゾロの首筋辺りでピタリと止まった。
 この、鬱血の後は・・・!?
「ゾロ、お前、首にある、その赤い跡・・・」
「へっ?」
 首筋に、手をあてたゾロの頬が、瞬間的にカッと赤く染まる。
 ・・・・・・?
 何なんだ? この反応は!?
「・・・虫。・・・虫に刺されたんだよ。昨日外で寝てたから。ああ、痒い、痒い」
 そう言って、微妙にずれた場所をポリポリと掻くゾロ。
 虫? この時期に夜海を飛ぶ虫なんて、居たか?
「それより、ウソップ」
 そんな俺の疑問をよそに、ゾロがいきなり声のトーンを落として詰め寄って来た。
「このこと、誰にも言うなよ」
「このこと?」
「虫・・刺されのことだよ」
「なんで?」
「人には、色々事情ってモノが、あ・・・・」
 ・・・あ?
「ゾロ、起きたのか! 昨日はー・・・!」
 不意に止まったゾロの視線を追う暇もなく、いきなり後ろからルフィの声がかかる。
 その瞬間、何を思ったのか、ゾロがルフィの口を両手で押さえ、甲板の上に押し倒した。
「ルフィ! テメェ!!」
 ジタバタと、もがくルフィを押さえつけたまま、ゾロが低く唸る。
「ゾロ・・・?」
「・・・あっ、ああ。悪い、ウソップ。先に行っててくれねぇか?すぐ行く」
 んーんー、と声なき声を発しているルフィを必死で押さえつけたまま、ゾロは複雑な表情でそう告げた。



 そして、妙にウキウキしたルフィと、グッタリとしたゾロが現れたのは、それから1時間余りが過ぎてからの事だった。
 ・・・あの後、いったい何があったんだ?
 何となくと言うか、どうしてもと言うか、それを聞けない雰囲気が2人を包んでいる。
 ・・・気にはなるのだが・・・。
 俺の中の警戒信号が、それを聞いてはいけないと、言っている?
 ・・・・・・?
 何となく、蟠った心を残しつつ、すぎて行った。
 ある日のオヤツタイムだった。


                                              おわり


打ち止め。