Sなソラッド  .

「カナタ、没収しておいたぞ」
「へ?あ…ああああああ!」

とある昼下がり、カナタとゼロの部屋を訪れたソラッドはその手に袋を持っていた。
不自然なほどにふくれあがったそれは、カナタのコレクションだ。

「僕のうさぎの尻尾!!」
「ちょ…っ、また集めてたの!?」

どうやら部屋に居たらしいゼロも、ソラッドの持つ大きな袋を見て目を丸くする。
その顔は若干青褪めていた。

「ソラッド、お願いだから返してっ」

身長の関係で奪い取ることは不可能ではないが、ソラッドに挑むという選択肢はカナタにはない。
それを知っているソラッドも、意地悪く笑うだけだ。

「見つけてしまった物は仕方ないだろう。こんなもの、置いておいても嵩張るだけだしな」
「こ、今度は見つからないように隠すからー!」
「そういう問題じゃないだろ!?」

今にも泣き出しそうなカナタに、激しく抵抗を示すのはゼロだ。
以前起こったちょっとした騒ぎ以来、このうさぎの尻尾にトラウマを持っているらしい。

「カナタ、いい加減にしないと僕だって怒るよ?」
「ゼロ君はいつも怒ってるじゃないか…!」
「…へえ、いい度胸だね」
「まあまあ、二人とも」

険悪な雰囲気になりそうだと感じ取ったソラッドが二人の間に割り入る。
この場合効果的なのは尻尾の入った袋をゼロに近づけることだ。

「ひっ」

案の定、トラウマを思い出したらしいゼロが壁際まで下がっていく。
普段の彼からは想像できない珍しい反応に、にやりと笑ったソラッドは悪乗りして更に近づいた。
カナタもカナタで、さっきまでの険悪さはどこへやら期待に満ちた表情で傍観の姿勢に入る。

「ふふふ」
「そ、それ以上近づいたら、いくらソラッドでも許さないよ…!」
「ほう?」

そう言いつつ、また一歩進む。
すでにゼロの背中は壁についていて、逃げ場がない。
あと三歩、と言ったところで、ようやくソラッドは足を止めた。

「カナタ。どうせならまた枕にしようか?」
「いいね!ゼロ君専用?」
「ああ」

二人して微笑み合うその姿は傍から見れば和やかな光景なのだが、今のゼロにとっては鬼と悪魔にしか見えない。

「き、君ら、僕で遊んで楽しい…?」

若干頬を引き攣らせてそう聞けば、二人とも満面の笑みを見せた。
ソラッドのここまで楽しそうな表情も珍しい。

「すまないな。途中でどうも活き活きしてしまって」
「僕も!なんだか楽しいよね!」

世間一般ではそれをSというアルファベットに当てはめる。
それが彼らの本質であって、けれどゼロに真逆の意味は当てはまらない。

「…そう。だったら僕も楽しませてよね」

吹っ切れたゼロは袋を視界から省きつつ、壁に立てかけておいた盾を手にした。
ソラッドは袋しか持っておらず、カナタも同様に丸腰同然。
武器を手にしたゼロに勝てるはずもなく。

「…カナタ!脱出だ!」
「あいあいさ!」
「待ちなよ!僕で遊んだ罪は重いよッ」

その後、暴走した三人を止めたのは、玄関の戸を開けたと同時に運悪くもシールドスマイトを身に受けたハークスで。
身を挺して計らずも自宅の破壊を食い止めたハークスに、三人は慌ててケフト施薬院へ走ったのだとか。



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08.10.17




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