目の色を変えるフィリアート . |
休日の日は、大抵僕が一番最後に宿を出る。 どうしてかってもちろん昼過ぎまで惰眠を貪っているから。 滞在しているのが大きな街だとたまにロディが図書館から借りてきた本を部屋で読んでいたりするけど。 ここはそう大きな街でもないし、かといって狭いわけでもない。 田舎の方によくある入り組んだ地形で、はっきり言って方向音痴の僕泣かせだ。 今だってすでにもうどこをどう歩いているのか分からない。 いざとなればキメラの翼で直接宿屋に飛ぶ気満々だ。 「あ、フィルトだ」 「ア…アルくーん!」 「わ、ちょ、さすがに人前ではやめてほしいな…」 見知った人に会えた嬉しさに抱きつこうとしたら、ひらりとかわされて僕は顔面から壁と仲良くなった。 すごく痛い。 「大丈夫?」 そう言って魔法で癒してくれるものの、避けたことを悪いとは思ってないらしい。 そりゃあ、いきなり抱きつこうとした僕が悪いのかもしれないけどさー。 「また迷子だったの?」 「そう、そうなんだよ!あ、でも出歩くなとは言わないでね!?」 「言わないよ。僕は困らないから」 「それはそれでひどい…っ!」 にこりと笑顔で言われてしまえば、僕ももう崩れるしかない。 どうしてこう、アル君ってば天使みたいな笑顔でとんでもない攻撃力を持った言葉の棘を飛ばしてくれちゃうかな。 地面に手をついて片手で顔を覆っていると、不意にアル君が呟いた。 「あ、ロディ」 「えっ、どこ!?」 「ごめん、嘘」 ばっ、と顔を上げて辺りをきょろきょろ見渡しても、あの目立つ緑色は見つけられない。 その直後にからかわれたことを知り、僕はまた涙目になった。 「…ア、アル君の意地悪ー!!」 「あははっ」 これは完全に面白がられてる…! 僕が最年長としてこれはどうなのかと真剣に考え始めた、その時だった。 「それにしても助かったなあ。あそこであの人が来てくれんかったら今頃どうしとったか…」 「だなあ…。それにしてもあの人、緑色の頭なんて珍しいでな」 農民らしき二人のおじさんがそんなことを言いながら僕らの隣を通り過ぎてく。 緑色の頭。その単語にものすごく引っかかりを感じる。 気づけば、僕はその人たちを引き止めてた。 「それってどこ!?」 「な、なんだあ、アンタあの人の知り合いかね?」 「いいから、教えて!」 「村を出て北東にある森の…あ!ちょっと!」 最後まで聞かずに、僕は北東の森を目指して走りだす。 もしそれががロディなら、今頃体力が尽きて倒れてるかもしれない。 そもそも、どうして森になんか…。 「…っフィルト、どこ行くの。北東はあっちだよ」 「え、あ…」 僕を追いかけて全力疾走してきてくれたんだろうアル君が息を切らして方角を指差してくれた。 不安だからってついて来てくれることになって、僕は安心する。 あのまま呼び止められていなかったら、また見当違いな場所に行っちゃってたかも。 森の中、すっかり日も暮れもう空が赤い。 とりあえず森の中へと続く一本道沿いに歩いていた僕らは、開けた場所に小屋を見つけて立ち止まった。 どうやら森を抜けたらしい。 丘の上に立つその小屋の近く、柵で囲まれた中に数頭の牛が居た。 その傍の岩に腰掛けてじっと牛を見つめている緑色の頭をした青年。 「ロディ!」 「…ん?おお、どうした?こんなとこまで」 思いのほか元気そうで、安心して力が抜けてしまった。 「ロディがまた無茶したんじゃないかって思って僕…」 「無茶って…ただ牛の見張り頼まれただけだぜ?」 モー、とタイミングよく鳴く牛が少し恨めしい。 「みたいだね…。それにしたって、何も言わずに行っちゃうのはひどくない?」 「え?俺ちゃんと言って出て来ただろ?アルディスに」 「………は?」 ロディの視線の先を追うと、知らん顔をして横を向くアル君が居た。 つまり、アル君はロディが何をしてるか知ってたってこと? 「ど、どうして言ってくれないのさ!」 「言う前に行っちゃったでしょ、フィルト。飛び出しちゃうくらいなら、言って止めるより暴走させたままでいいかと思って」 「まあ、扱い方としては正解だな。こいつ周り見えなくなるから」 「二人とも僕をなんだと思ってるの!」 あんまりな言い様に僕が叫べば、二人は互いに顔を見合わせた。 「「遊び人?」」 この二人、絶対遊び人の認識間違ってる!! リクエストありがとうございました! |
08.10.16 |
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