ロディの戦闘シーン  .









その日、森で野宿をすることになった俺らは薄暗い闇の中で火を囲っていた。

「じゃあ、僕は水を探してくるよ」
「お願いします」

自ら進言したフィリアートを森の奥へと見送る少年少女。
まあ、俺を除いた二人、アルディスとタクトのことだ。
タクトはさっきから途中でぶっ倒れた俺を世話してくれている。

「僕も木を拾ってくるから、ロードのこと、よろしくねタクト」
「ああ、いってらっしゃい」

そう言ってアルディスも森の奥へと姿を消す。
タクトの心地よい治癒魔法を受けながら、俺はいつの間にか寝てしまっていた。



「ロディ!」

そうしてアルディスの鋭い声で、俺の目は覚める。
と同時に、直感から引き抜いたナイフで眼前に迫っていた魔物の喉を裂いた。

「アニマルゾンビ…か」

裂きながら重力に任せて地面に叩き付けた魔物の死骸を見て、ようやく敵の正体を知る。

「起こしてごめん!大丈夫?」

気遣いながらも、アルディスは三体を相手にしていた。
その背後からも迫り寄っているアニマルゾンビは、腐った犬の魔物だ。

「ああ。加勢するよ」
「ありがとう。でも、無茶しちゃダメだよ」
「分かってる」

なるべく体力を消耗しないやり方で。
うっかり寝てしまったがそれほど時間は経ってないらしく、体力も万全とはいえない。
それでもアルディスだけに任せるには少し数が多かった。
口早に呪文を唱えて、魔法を発動させる。

『メラミ』

メラよりも少しだけ大きな火の玉が、アルディスの背後に近づいていた一匹を燃やす。
念のため急所にもダーツを一本投げて、ついでに俺へ標的を変えたらしいヤツを剣でスライスしてやった。
腐ったヤツの体液はきちんと拭いておかないと後々面倒だ。
それを危惧して、剣は直接鞘にしまわずに地面へ放り投げた。

直後、アルディスのベギラマがアニマルゾンビの群れを襲う。
俺はナイスタイミグだ、と笑い、腿に着けたブーメランを手に取ると燃え盛る炎の列へ向けて一閃させた。

「やっぱり、ロディって強いよね」
「まーな」
「あ、否定しないんだ」
「そこで謙遜するほど俺は大人しい人間じゃねえから」

ふう、と木の幹に体を預け、緩慢な動作で地面に放った剣を拾おうと手を伸ばすと、アルディスがそれを察して拾い渡してくれる。

「サンキュ」
「うん。…それにしてもフィルト、遅いなあ」
「気力なくて止めなかったけど、あいつ方向オンチなんだ。一人で行動させんのはあんまよろしくねーな」
「…そういうことはもうちょっと早く言って欲しかった」
「悪い。それで、タクトの姿も見えないみたいだけど?」

剣に付着した魔物の体液を布で拭き取りつつ、首を傾げる。
彼女が居たなら俺もあのまま安眠してられただろうに。

「フィルトを探しに行ったよ。上空にメラが見えたから、たぶんフィルトからのSOSじゃないかって」
「間違っちゃいねえな。それなら、すぐ戻ってくるだろ。先に何か食べるか?」
「もしかして、ロディが作ってくれるの?」
「簡単なものならな」

普段なら料理の類はタクトに任せているが、たまには俺が作るのもいいだろう。
こう見えて味には自信がある。
嬉しそうにしているアルディスの表情がいい証拠だ。

不意に歳相応に子供っぽくなる勇者の頭を撫でて、俺は調理器具を手に取った。












リクエストありがとうございました!
08.10.13

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