序文  .







Side:Sister

私には双子の弟が居たらしい。その子は純粋で、無垢で、邪気のない笑顔が印象的だった。
でも私はそんな弟を知らない。記憶がない。本当に居たのだろうか。
母さんは眉を下げて困ったように笑う。
『あんなに仲が良かったのに』
もう何度も聞いた言葉。私はその度にそうだったかしら、と笑い、その度に記憶が薄れていく。

アルディス。

貴方は、居たの?





Side:Brother

僕には双子の姉さんが居た。いつも笑顔で、可愛くて、自慢の姉だった。
いつの間にか居なくなっていた。死んだわけじゃない。行方不明でもない。
母さんに聞いても首を横に振られる。
『アルディス、姉はいないわ』
もう何度も聞いた言葉。僕はその度におかしいな、って苦笑い、その度に記憶は鮮明になっていく。

アリス。

君に、会いたい。













08.05.22
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