eoさんの旅ノート 台湾での、ちょっとした驚き
 

その1  托鉢の僧侶
僧侶

  この写真、

ほぼ真中に僧侶が立っています。

 彼(僧侶--多分男性)はじっと立ったまま、 動きません。いわゆる托鉢をしているんでしょうね。

 私がちょっと驚いたのは、彼が立っている場所 なのです。
 私は寺院の多い都市に住んでいるので、托鉢のために僧侶が街中に立っている姿はよく見ます。その、立っている場所は必ず人の流れがある、いわば、人混みの中です。
 そりゃそうでしょう。単純な物乞いではなく、修行のため、通行人との何らかの精神的なコミュニケーションとを求めて立っているのだと思います。 コミュニケーションは全く無い、というコミュニケーションもありますよね。孤独を味わいたければ人混みの中に入れ、というのを聞いたことがあります。コミュニケーションがありそうな場であるのもかかわらず全く無い、というのは本当に孤独です。その孤独に耐える、というのも修行です。
 僧侶が街中に立っているのはこんなためかどうかは私は知らないが、とにかく、僧侶が托鉢で立つ場所は、通常、人混みの中、と、日本では決まっている。
 しかし、この写真で、僧侶が立っている場所は、彼の(写真の)左側は中古車販売の場所のよう。彼の前にあるのは車道であり、右端には、オートバイと乗用車が信号待ちで停まっている。どちらも通行人が通る場所ではない。ここはどう考えても、人混みとはほど遠い場所で、托鉢に適した場所では全くない。が、僧侶はここで、じっと立ったまま動かない。
 まあ、ここはここで、多分、精神修養はばっちりできるでしょう。 しかし、さぞ、空気が悪いだろうなあ。

その2 宝覚寺(宝覚禅寺)

宝覚寺   台湾中部の台中市にある。

  日本統治時代の昭和3年(1928年)に建立された日本式の寺。
現在、台湾にある寺院ほほとんどが儒教・道教の寺院なので、日本式の寺は珍しい。

  境内には、日本統治時代に逝った日本人の墓地がある。

 「宝覚寺です」と観光客が連れてこられるのはここ。
コンクリート建ての大きな寺ですなあ、と思っていると、違うのです。コンクリートのその内側にある寺(「宝覚禅寺」の文字が見える)が宝覚寺なのです。宝覚寺に覆いかぶさるようにしてある、寺院に似せた大きなコンクリートの建造物は、宝覚寺の単なる覆いなのです。

 「何のためにこんな覆いを?」とガイドに訊きました。台湾、殊にここ中部は雨が多いので、木造である宝覚寺を湿気から守るため、だそうです。  湿気から守るためだけに、こんな馬鹿でかい、不恰好なコンクリートの建物を! まるで、このコンクリートの建物が宝覚寺であるかのようにみえます。
 コンクリートが湿気をどの程度防ぐ? 他に方法は無かったの!? 総ガラス張りの覆いとか考えられなかったの? 写真右端の建物はガラスがふんだんに使われているのに。

その3  台中駅の柱

宝覚寺    写真の真ん中にデンとある柱の、棚から上の部分。
   そして、写真右側の、壁に沿ってある柱の、やはり棚から上の部分。

   壁面など全体の感じから見て、少し変わった感じ、
   古ぼけたというか、古典的というか。

 これは日本統治時代の台中駅にあった柱をそのままここに据え着けているのです。
 駅全体は造り直したが、柱だけは保存してここで使っているのです。
 これだけみても、日本に対して敵意が無いのが分かります。日本人としては嬉しいことです。

 しかし、しかし、それはそれとして、ここに据えられた日本統治時代の古い柱は、この台中駅の全体の感じとなじんでいない、と私は思うのですが(まあ、感じ方は人それぞれ)。なんとなく、いびつ。古い柱と新しい白い壁が、なんとなく、なじんでいない。これでは、普通の駅の風景の中に、古い柱をただ置いただけ、という感じ。
 その柱が何を語るのか、そんなことどうでもいい、という感じ。(こんなこと考えるのは日本人だけか)
 古い柱を使うのであれば、駅全体の感じもそれに似つかわしいものにしてほしい、例えば、駅全体を古いカタチそのままに再現するとか、と考えるのは、旧支配者としての日本人の傲慢か、または、感傷か。

 ここまで書いて、読みかえしてみて、考えた。

 実は、目に付いたけれど写真に撮らなかった光景がある。
 ここ台中だけでなく他の都市でも見たのだが、人混みのある通りで、数人がずらりと並んでパネルを掲げて立っていた。パネルには「共産党」の文字が大きく書かれ、そこに貼られているのは…思わず目を背けたくなるような…共産党が人民を残虐に扱っている写真だ。明らかに、反共産主義を訴える、言い換えれば、反中国を訴えているのだと分かる。都市は違っても同じ写真を掲げているので、全国的な大きな組織なのだろう。 台湾人、観光客を含めて、通りかかる通行人はそれをチラリとは見るが、立ち止まって見る等大きな関心を示すわけではないが、複数の都市で彼等は訴えを行っている。

 そのような残虐な写真を、日本で見ることは殆ど無い。例えば日本では、このような種類(残虐な)の写真を街中で掲げることは先ず無い。何故ならそれは、訴えている内容よりも、不快感を与えることの方が大きいだろうから。逆効果にしかならないだろうから。血が流れている等、不快感を与えるかも知れない写真など、日本では、人混みの中で滅多に掲示したりしない。日本人は不快なものを嫌う。
 こんな不快なもの、品の悪いものは日本人の身の回りには無い。日本人は上品なのです。 どうして? なんてったって、日本は文明国だもの。

 しかし、これ、???

 日頃、政治情勢等にあまり関心をもたない私でも、台湾が国際的に置かれている立ち位置を考えると、明らかに日本と異なっていること位は理解できる。中国との関係については、日本でも、軍事・経済等懸案事項は膨大にあるといえる程だ。しかし、今、「台湾と中国との関係」は「日本と中国との関係」とは質が違う。「台湾と中国との関係」には、いま血が流れても驚かないような緊迫感がある。

 台中駅にある日本の古い柱が何を語るのか等、そんなこと、今の台湾人にとってどうでもいいことかも知れない。日本の古い柱が何かを語っているとしても、それは、台湾の歴史ではなくて日本の歴史の問題だ。
 「日本に対して敵意が無い…」、なんという傲慢な言い方か。「日本への好意が感じられて、日本人としてうれしい」と書くべきだ。

 台中駅の柱で、こんなことを考えた。
 少しは勉強になりました。

その4  図書館

宝覚寺
   やはり台中駅。見ての通り、書棚です。これが駅の中とは思えない。

   駅改札口に並んで売店があるが、その売店の向かいにこの書棚がある。
   だから、この書棚は駅利用者にはとても目に付く場所にある。

 売店の向かいにあるとはいえ、この書棚の本は売り物ではない。写真の上の方に「図書館」の文字が見えますね。そう、これも図書館なのです。

 私達はパックツアーに参加しているのであまり時間が無く、ゆっくり観察できなかったが、どこかに「台中市立図書館」の文字があったような気がする。 写真右側にマシンらしきものがあるが、これで貸出券等を出し入れするようである。使い方の詳細は分からないが、「自動図書館」の文字があるので、とにかく、利用者のセルフサービスで行われるようである。

 日本で、こんな図書館サービス、あります?  素晴らしい! ナイスサービス!!

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