(財)伝統工芸品産業振興協会・資料より

信楽焼の装飾技法   信楽焼とは
           

絵付けによる装飾   化粧土・釉掛けによる装飾   素地装飾    成形技法 

 絵付けによる装飾
下絵付け 直接素地に絵付を施した後、釉楽を掛けて焼成する手法で、逆に素地に釉薬を掛けて焼いてから絵付を施す手法を上絵付といいます。
釉薬の着色剤となる金属化合物は低温焼成では美しい発色を得ることができますが、高温焼成では発色が濁ります。そのため本焼を行う下絵何に用いる原料は、その数が上絵用のものに比べて非常に少なく、天然の原料としては呉須と鬼板がその代表としてよく知られています。

呉須/染付 コバルト化合物を多く含んだ鉱物で、黒っぽい青緑色をしています。粉末にして水に溶かし素地に文様を描き焼成すると藍色に発色します。呉須を用いた下絵付けを行う装飾枝術(染付)を指す場合もあります。

鬼板 酸化鉄を多く含んだ鉱物で、その形状が鬼瓦に似ていることからその名が付けられたといわれます。粉末にして水に溶かし素地に文様を描き焼成すると黒褐色、赤褐色などに発色します。

イッチン 柿渋を引いた紙や油紙で錐状の袋を作ります。これに真鍮の嘴口をつけ、泥漿を袋の中に満たし紙袋を指で圧して泥漿を嘴口から押し出すと、高盛りの線様様を描きます。
素焼した素地表面に直接描く場合と、施釉した釉上に着色釉で高盛りの線を描く場合に、装飾効果を発揮します。

片身掛け 部分的に器物を釉泥漿に浸し、施釉することで器物の半分や三方、または四方、あるいは大きい器物を窓のように窓枠的に施釉する方法です。
また半身だけを着色釉でかき分けるものもあり、すべて片身掛けといいます。

吹き掛け 一般に霧吹きで、釉を均一に掛ける、ばかす、または厚く吹く枝法を用います。
釉薬泥漿を霧吹きで器物表面に細霧状に吹き掛け、その濃度を自由に調節し、施釉する方法です。霧吹きだけでなく、刷毛で吹き掛けたり、また庄縮機を用いて空気を利用することにより、大小様々な粒状を施釉することもできます。

刷毛掛け
刷毛目
白色化粧土、または着色化粧土を毛刷毛・稲刷毛・ササラ等の筆先につけた後、仕上げをした素地に手で勢い良く描いていきます。(素地にすじ状の化粧士が付着します。)
装飾効果を発揮するには、一瞬のうちに勢い良く描く必要があり、手の動作がそのまま動きとなって現れるため、微妙な手の感覚が要求されます。

流し掛け 器物をろくろの上に置き、ろくろを手で回転させるか、または左手で器物を持ち、左手を回転させながら柄杓で上端部より掛ける方法です。

ろう抜 コンロの上に缶を置き、熱で溶解したろう液を筆または刷毛に含ませて、既に施釉を終えた素地の表面に模様を描きます。その上に施釉すると、ろうを描きした部分は、施釉をはじくことになります。
その後焼成により、ろう部分は揮発するため、素地色あるいは下掛釉の色が出て装飾となります。
 化粧土・釉掛けによる装飾           トップに戻る
化粧掛け 化粧土の調整については素地の膨張収縮に適合し、焼成時にほどよく融着し剥離あるいは亀裂しないよう留意する必要があります。
器物の表面が粗く滑らかでない場合、焼き上がりの外観を調整するために、化粧土には白色化粧土と着色化粧土があります。

重ね掛け 釉を二重三重に掛ける、塗る、または吹き掛けるなどして目的の釉調を出す手法てす。

浸し掛け 化粧土や粕薬の入った桶に器物を入れ、全体を潰す手法です。素地に均一に付着するように行います。器物によっては鎌のようになった棒で、器物を底より支え、桶に浸し持ち上げる方法があります。
 素地装飾                            トップに戻る
櫛描き(櫛目) 仕上げた素地の表面こ木櫛・竹櫛・鋸で軽く一気に描きます。
素地はあまり硬すぎると美しい線が出にくくなります。化粧掛けした後に櫛描すると、素地の対比が出て装飾効果が大きくなります。
荒い目、細かい目などいろいろ工夫しながら単独または組み合わせを用います。

トチリ/飛鉋 仕上げた器物をろくろの上に置き、ろくろを回転させながら素地の表面をバネのよく利くカンナで一定の間隔に刻み、模様をつけるものです。
素地に直接、または白化粧を行った後、生乾きのときに行います。

掻き落し 仕上げた素地の表面に、酸化鉄を混合した化粧泥漿を刷気で器物全体に塗るか、または、泥漿中に浸した後、器物の表面の模様、あるいはその間地をカンナで掻き落します。
掻き落したところには素地が露出するので、素地と化粧土の色の対比により、装飾効果を発揮します。

印花 素地の軟らかいうちに印判を素地表面に押してゆくものです。
凸印判、凹印判を用いると器物表面はそれぞれ反対の凹模様、凸模様ができます。また、その上に化粧を行えば、凹分に化粧土が充填し、象嵌となり模様の効果が大きくなります。

線彫り 仕上げた器物の表面を、木へら・竹へら・棒で模様に彫っていくものです。
素地に直接または白化粧を行った後の生乾きの状態のときに行います。

布目 石膏型に布・蚊帳・網を置き、その上に粘土の薄い板を置いて、よく押さえると器物表面に各材料の布目、網目等が出来ます。また器物内面に布・蚊帳・網を置き、手で押さえると布目等がでてきて布目の調子が軟らかく美しく表現できます。

松皮 素地の軟らかいうちに器物をろくろの上に置き、ろくろを回転させながら先の曲がった削りを素地表面に軽くあてます。
削り取られた粘土の薄片は器物の表面に付着します。
ろくろの速度、削りのあてる強さ、器物の軟らかさが、出来上がりに関係することとなります。

虫喰い手 粘土に硅長石の極微粒を混入し、器物を成形した段階において、器物内部より指で外部に対し大きく器物全体が変形しない程度のカを加えます。
粘土は粘性が小さいため器物内部は平滑ですが外部は虫が喰ったように亀裂を生じます。

火色 緋色ともいい、釉薬のかかっていない器面の無釉部分に現れる淡紅色の模様です。主として素地に含まれる鉄分が焼成中に酸化することで発色します。
士質はもちろん焼成時の湿度や塩分、灰分や窯の中の炎の流れ、窯焚き方法など様々な条件によって現れる発色も多様に変化します。
この様な諸条件コントロールするには豊富な経験と知識、接術が必要とされます。

自然釉 穴窯あるいは登り窯など薪を原料とする窯で、焼成中に薪木の灰が、素地の長石に付者することで化学反応を起こし生じたガラス質の淡緑・黄褐赤褐・青緑色のよどみのことで、別名ビードロと呼ばれます。
 成形技法                            トップに戻る
押型 土練機て数回練った粘土をちぎって塊にし、木製の角台板の上に強く打ちあてて重ねていき、角柱あるいは円筒状の塊を作ります。
周囲を針金やへらで切り落とした上、その両側面に木製の定規を当てて針金で切り、粘土の板を作ります。その板を型を使って組み上げて成形します。

小物ロクロ 粘土を練台の上で力強く練ります。十分揉んだ粘土をろくろの上に据え、ろくろを回転させながら、水で濡らした両手で粘土を掴み、延ばしたり縮めたりの作業を繰り返しながら、最後に製品1個に必要な量の粘土を上部に掴み寄せます。その後、親指と他の指の間に粘土をつまんで、ろくろの回転を利用して成形します。  

大物ロクロ ろくろの上に台板を置き、粘土の塊を掌で押し、叩きながら器物の底部を所定の大きさに作り上げ、その上に紐状の粘土を練り積みしていきます。必要な高さになったところで、ろくろを回転させ、水を浸した木綿布を外側にあて、内側を指先で押さえながら、素地の肉厚を整えていきます。

手捻り よく練った粘土で器物の底部を作り、その底部の外周に沿って紐状にした粘土を回し、押さえながら細長く延ばしていきます。その後、円筒にねじつけて、所望の高さまで次から次へ紐を作って積み上げていきます。この時、紐の厚さが器物の肉厚となります。

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