[初めての飛行機]
1993年6月、生まれて始めての海外旅行。
行き先は中国返還前の香港。
旅行の説明会では「治安が悪い、水が悪い」などと脅されたけど、出発直前までワクワク感でいっぱいだった。
そういや飛行機乗るのも初めて。少し窮屈だったけど、この先待ち受けてる未知なる世界のこと考えるとそんなの全然気にならない。
やがて飛行機がゆっくりと動き出す。
そして滑走路に進入したかと思うと、凄い轟音とともに一気に加速、急角度で空へと向かう。
その間わずか十数秒ほど。その迫力といったらジェットコースターどころじゃなかった。 |
[香港啓徳空港]
香港・啓徳空港着。飛行機から降り、生まれて初めて異国の地に踏み入れる第一歩。
あの感動は今でも心に残っています。
ガイド付きのチャーターバスに向かって歩いていると、人懐っこそうなオバチャンが何やら話し掛けてくる。
新手の行商かと思い適当にあしらってバスに乗り込むと、オバチャンまで乗り込んでくる。
そしてマイクを持ったかと思うと「皆さん、こんにちは。私がガイドの羅(ラー)です。」…、ガイドやったんかい!
ガイド付き、って日本のバスガイド想像してたから、てっきり怪しい人かと思ってました。
しかし、この「ラーさん」なる人物、香港では泣く子も黙る超大物だったのです。
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[初めてのショッピング]
まずは、市内観光。途中、金製品(宝飾品というのが正しのか)の店に立ち寄り初ショッピング。
値段交渉のとき羅さんが通訳してくれるのだが、そこで羅さん、本性?を表す。
私が彼女へのプレゼントにと、金のイヤリングの値段交渉を羅さんにお願いしたときのこと。
最初、穏やかに店員とやりとりしていたのが、しばらくして突然、すごい剣幕でまくし立てる。
店員が半泣きになる。
店長らしき人が飛んできて交渉を続けるが、羅さん、「もう、いらん!」みたいな感じで出口へ向かう。取り残された私も慌てて羅さんの後についていく。
背後で店長の叫ぶ声。
羅さん、不機嫌そうなまま店長と2,3しゃべったかと思うと急に笑顔になり、私の方を振り向き、「交渉成立、あなたの値段のままね」。
う〜ん、これが羅さんの技らしい…。
帰るそぶりも怒った口調も、どうやら演技らしい。
恐るべし!そして、私の交渉が終わると、あちらこちらで羅さんを呼ぶ声がする。
友人たちもかなり安く買ったらしい。ある店員は「あの人、呼ばないでぇ〜」と泣いて友人にすがってたらしい。
この羅さん、宝石鑑定士の免許を持ってる上に、顔も広くかなりのキャリアがあるらしい。
そして、恐れられてるのは宝石店だけではなかった。
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[高級レストラン]
その日の夕食は香港でも有名なレストラン。
もちろん羅さんも同行。フカヒレ、北京ダック、次々と高級な料理が運ばれてくる。
羅さんの説明を聞きながら香港の味に舌鼓。
日本の中華料理(変な言い方?)よりあっさりしている。
ワイワイ言いながら食事してると突然、羅さんが店の支配人を呼びつけ凄い剣幕で何やら言っている。
後で聞くと「料理の出す順番が違う!私に恥をかかせるのか!」と叱ってたらしい…。
支配人は羅さんに何度も頭を下げ、特別料理をサービスするということで決着ついたらしい。
私ら、料理の順番違っても分からんのに…。支配人に同情しながらも、色んな業界に幅を利かす羅さんの凄さに感心した。 |
[物売り]
アジアの風物詩ともいえる「物売り」。
片言の日本語を喋りながら近づき、まがい物を売りつける。
なかには危ないものもあるが、ほとんど笑って許せる程度のもの。
危険なものはガイドさんが事前に教えてくれる。
それよりも片言のやり取りは面白く、会話を楽しむのも一興である。
「オ客サン、Tシャツ5枚千円」少し考えてると「6枚千円…、ウ〜ン、7枚…、7枚千円デイイヨ」「OK!」買ってしまった。
その横で100円ライターを売っていたおじさん、「10本千円デイイヨ」…て、そのままやんけ! |
[豪華ディナークルーズ]
今夜は豪華な船での食事。当然初めての体験。
甲板の階段を下りると、そこは別世界。
まずはボックス席へ。
窓からは100万ドルの夜景。
それらが海面に反射して200万ドルの夜景?
それを眺めながらの食事。最高!
食後は船内のディスコで踊ったり、
甲板へ出て夜風にあたり夜景に酔いしれたり…。
う〜ん、贅沢な気分!今夜はいい夢見れそう! |
[名残り惜しい…帰国]
今日は帰国の日。
羅さん、最後の挨拶で
「まことに、お名残り惜しゅう御座いますが…」
今どきの日本人も使わないような言葉だけど、
今の気持ちにピッタリの言葉だと思う。
みやげ物と数々の思い出を手に帰国便に搭乗する。
そして、香港の高層ビルの谷間をぬけて上空へ…。
お名残り惜しゅう御座います…本当にその通りだ。
やがて、飛行機は大阪の夜景の中、高度を急激に下げる。
伊丹空港(当時)に無事着陸。 |