罪と罰に塗れた人生を自らの手で終わらせた最後。

闇より穿き出された仮初の生を砂塵のごとくに崩されていった刹那。

嘆きの壁にて魂魄すら消滅した瞬間。

私は確かに笑っていた。

やっと死ねる。

やっと終われる。

生に対する執着などとうに無かった。
ただただあるのは生きている事への罪悪感。

死に対する焦がれるような切望。

彼の元に行ける、とは思っていなかった。
彼の人は神に愛された風の子供。
民に愛され仲間に信頼を置かれた英雄。
彼の逝く先が私と同じであろうはずも無く。
我が魂は無明の闇に墜ち逝くだけであろうと思った。

二度と彼には会えない。
会えようはずもなかった。

だが、嘆きの壁に私達の魂が吸寄せられた。
まだ私の成すべき事は終わっていない。

双子座の聖衣は私をまだ主だと認めてくれていたようだった。

そして、双子座の聖衣を纏った瞬間、もう旅立ってしまった片割れの遺言を受け取り、今度こそ最後 だと悟った。

近くに皆の小宇宙を感じる。

不思議と満ち足りた気分だった。

あれ程焦がれ恐れた射手座の青年の小宇宙も感じた。
言いたい事が沢山あったような気がしたが、何も言うべき事は無かった。

初めて黄金の聖闘士達が12人集まり、最初で最後の技を仕掛ける。

今度こそ女神の為、世界の為、皆の為に命を張れる。

私たちの意思は若き希望達に託して逝く事が出来る。

何と 何と 幸せな幕引だろうか。

これで今度こそ心置きなく逝ける。

私の咎は永劫許されないが、少しは最後に役立てたのかもしれない。

私の魂が消滅する清浄、私が浮かべた笑みは安堵に満ちていた。

あぁ、私は これほどまでに

世界を愛し、

絶望していたんだ。






END





サガ独白(気持ちロスサガ)




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