競馬と乗馬の違いについて100文字以内で述べよ
「乗馬をしてみたい」 「…はぁ?」 唐突に突拍子のない事を呟いたサガに、カノンは盛大な疑問符を投げ掛けた。 「…何でイキナリ乗馬なんだよ?」 「さっきテレビでやっていた」 ピシッとサガが指差した先には、最近双児宮に導入したばかりの薄型テレビがドドンとその存在を主張 しており、カノンは小さい溜め息をつき、「またかよ…」と呆れた声を出した。 近年聖域にも近代文明の波が押し寄せてきていて、聖域で13年間引きこもり生活を送っていたサガにと って、初めて見る世界の姿はあまりにも衝撃だったらしく、映像を見る度「アレは何だ」「コレがやり たい」と言ってきたサガなのだったが、どうやら今回は乗馬に興味を示したらしい。 「ってもよぉ、んなスグに出来るもんじゃ無いぜぇ?まず馬がいるしな」 「馬なら近隣の村にいるではないか」 「馬っ鹿、ありゃあ放牧馬だっつの!乗馬の馬は訓練されたサラブレットじゃないといけないんだよ! 」 どうにも今だに世間ズレしている兄の言動に辟易しつつ、カノンはそういう所がまたサガの可愛い所だ と思い笑った。 「そうか…では乗馬は無理なのか…あの衣装着たかったんだが…」 「衣装?」 残念そうなサガを見ながら、カノンは乗馬服を着たサガの姿を想像し、思わすニヤリと笑った。 …それはさぞかし似合う事だろうなぁ… 「いや…女神に頼めばなんとかなるんじゃねーの?」 ちょっとサガの乗馬服姿が見たくなったカノンは、何気なく女神をダシに使おうと試みた。 「本当か!では私は5番の服がいいのだが…!」 「……5番?」 不思議な単語を聞いたかのようにカノンは眉を顰めた。何やら嫌な予感がする。 サガはそうだ、と頷くと徐にリモコンのポタンをポチッと押した。 「………」 案の定の展開にカノンは思わず絶句した。 『おっと〜!ここでゼンノロブロイ刺してきた!早いっ早い!そのまま逃げ切ってぇ!ゴォ〜〜ルイン ッ!!』 (こりゃ乗馬じゃなきて競馬だぁぁ――!!) 盛大なツッコミを心の中でやってのけたカノンなどそっちのけで、サガはキラキラと子供のような目を しながら画面を指差した。 「コレ、この服着てみたいんだ!」 指した先には競馬騎手が大勢映っており、その誰もがこれ以上無いというぐらいド派手な衣装を身に纏 っていた。元々観客に識別させる目的で作られた服なので蛍光色やラメ入りなんて当たり前の、何とも 容赦の無いドギツサにカノンはクラリと眩暈を覚える。 (サガ…幾らなんでも趣味悪っ……!!) どうやら13年間の閉ざされた生活は、サガのセンスの発達を著しく妨害したらしく。 「この5番の服を着て馬に乗ってみたいんだ、何やら皆盛大に盛り上がって楽しそうなのだ!」 「させるか〜〜〜っ!!」 カノンは速攻切替えし、あんな趣味の悪い服をサガに着せて成るものか、絶対に邪魔してやる!と堅く 心に決意したのであった。 こうして、サガの小さな野望はカノンによってことごとく阻止され、サガの夢見た乗馬(競馬)は幻に 終わったとさ…。 END 競馬好きな天音の日記より。 |