6/24






ここ数日間、黄金聖闘士としての修行のため聖域を離れていたサガは、ようやく帰ってきた12宮の 様子が何やら違う事にスグ気づいた。
しかし、何やら聖域が浮き足立っている事には気づいたものの、生真面目なサガはとりあえず帰ってき た足一直線で教皇室へと向かった。
そこで教皇に言われた言葉は正直意外なもので。修行を終えた労りの言葉をかけるものとばかり思って いたサガに向かって、教皇はだた簡潔に一言述べた。
「今すぐ巨蟹宮へ行け」
「は・・・?」
教皇の何やら楽しそうな含みを持たせた態度に少々不信感を抱きつつ、教皇は何を言いたいのだ?と首 を傾げながらサガは言われた通りにデスマスクの守護する巨蟹宮へと足を運ぶことにした。
さっきは最短ルートを素通りしたが、今度はデスマスクがいるであろう広間へと向かったサガは、ガチ ャリと扉を開けた瞬間、一体コレは何なんだと固まった。
この宮を守るはずの、戦士と呼ぶにはまだまだ幼いであろうデスマスクが一人でてんやわんやと料理を 作っていたのだ。
その傍にある大きいテーブルには、何人分であろうかと思われる美味しそうな料理が所狭しと並べられ 、室内にはゴテゴテと折り紙等で作った輪っかのレースの装飾などが施されてる。
パチクリと目を開いたままのサガにようやく気づいたデスマスクは、片手にフライパンを持ったまま、 ヨォと短く挨拶をした。
「デスこれは一体・・・今日は何かのパーティーなのか?」
「俺の誕生パーティーだとよ」
「あぁぁぁ!」
突如サガは普段似つかわしくない大声を張り上げ、デスマスクはうぉ!と背を仰け反らせた。
恐る恐ると言った雰囲気のサガは、もはや疑問というよりは確認のような意味合いを持たせながらデス マスクに尋ねた。
「・・・・・・デ、デス、今日は何日だ?」
「6月24日、ですますく君のお誕生日デース★」
ふざけた調子でおどけるデスマスクの声も今は遠まわしな嫌味にしか聞こえず、サガはワナワナと震え た。
「・・・・すまない、デス・・・忘れていた・・・」
「のようだな、その様子じゃ〜」
ケタケタ笑うデスマスクを尻目に、サガは珍しいまでに焦った様子でデスマスクに近寄った。
「す、すまない!何か忘れてはいる気はしたんだが、デスの誕生日だったんだ!あぁ何でこんな大事な 事忘れていたんだろう・・・」
自分にとって親以上の存在のサガが悲壮に顔を歪ませるのを見て、寧ろデスマスクの方が慌てた様子で フォローを入れた。
「お・・おい、サガ別にんなのいいって、アンタ今まで修行で遠征してたんだろ?忘れてても無理ねぇ って」
「いや、大切な教え子の誕生日を忘れるなんて先輩失格だ、本当にすまない・・・そうだ!何か私に出 来る事はないか?」
せもてもの償いとでもいうような様子のサガを見て、デスマスクは相変わらずのクソ真面目だなぁと思 いつつも、この状況では断わるよりも頼み事をする方がサガは喜ぶという事を、デスマスクは幼いなが らにも理解していた。
「んじゃあ・・・このアホみたいに膨大な量の料理作んの手伝ってくれよ」
「あぁ!お安い御用だ!・・・・って・・・そういえば、何でデスが料理を作っているのだ?」
今気づいたとでもいう風に瞳を瞬かせるサガに、デスマスクはふぅと小さい溜息を付いた。
「そーなんだよ、ったくフザケた話だぜ?昨日練習試合で集まってたら、ミロが「俺の誕生パーティー する!」とか言い出して、俺いらねぇって言ったのに、やるんだー!って駄々捏ねてさぁ。しかも何時 の間にか俺の宮でパーティーする事になってんし、その上全員分の料理を俺に作らせようって言ったん だぜ?!」
主役が料理作るってどうよ?普通逆じゃね?とブツブツ文句を言うデスマスクを見やりながら、サガは 思わず耐え切れなくなり噴出してしまった。
その光景が今にも目に浮かぶようだった。
デスマスクの料理は美味い、それは既に黄金達の常識のように知っている事実だった。
見た目に反してデスマスクは意外と器用で何でもソツなくこなすタイプだったし、その顕著な例が料理 だった。
サガも料理は作るのは好きなのだが、デスマスクには敵わないと思っている。実際サガの料理のレパー トリーは結構デスマスクに伝授してもらったものも多々あったのだ。
皆がデスマスクの誕生パーティーを主催しようと言ったのは何とも微笑ましい光景だと思う。
しかし、皆案外チャッカリしているというか何と言うか、パーティーに託けてデスマスクの手料理を食 べようという魂胆が凄まじいまでに見え隠れしていて、もう笑いの止まらないサガなのであった。
「ハー・・・ハハ、そ、そうか・・・デスマスクが料理担当か・・・それは楽しそうなパーティーにな りそうだな」
「笑いすぎだっつの、何だってんだよ全くよー、俺は家政婦かっつの」
「そうヘソを曲げるなデス、私も手伝うから・・・で、一体何をすればいいかな?」
サガは何時までも笑い続けているのは流石に悪いと判断し、スグに何時ものお母さんのような柔和な笑 みを浮かべた。
「あー・・んじゃそっちに山積みになってるジャガイモ剥いてくれ。全部」
「コレ全部か・・・?」
サガが戸惑うのも無理はなく、キッチンの片隅にあったジャガイモは、これでもかと言う位もっさりと 盛られていた。
「だってよぉ、黄金の中に胃袋大魔神共何人いると思ってんだよ?これでも足りないか心配なくらいだ ぜ」
あぁ・・・と思い当たる節がありすぎるサガは、脳裏に見慣れた子供達を思い出し、フフと笑った。
「そうだな、せっかくのパーティーで料理が無くなったでは余りにお粗末だしな。それにしても・・ ・」
「何だよ?」
意味ありげなサガの笑いにデスマスクは怪訝な顔をした。
「いや・・・すっかりデスもお兄ちゃんになったなぁー・・・と。そうだな、デスももう今年で9歳に なるんだもんな」
大きくなって、とポフポフ頭を撫でるサガの行動に、デスマスクは少しふて腐れたようにチェと口を尖 らせた。
「とかなんとか言って、しっかりガキ扱いかよ。そーそー俺もう9歳になったんだぜ〜もう立派な大人 の仲間入りってもんだ★」
子供にしては成る程、少々以上に邪悪っぽい笑みを形作るデスマスクに、サガは寧ろまた微笑ましい気 持ちになった。
「そうだな、大人のデスマスク君。でもそういう事はアフロディーテの身長を追い越してから言うもの だ」
「なッ・・・サガ、俺ソレ気にしてんの分かっていってんだろ?!」
むくれたように眉を顰めるデスマスクに、ごめんごめんと謝りながらサガはようようジャガイモを手に 取った。
デスマスクより1つ年下の、しかも女顔と普段からかっているアフロディーテとデスマスクは実はかな り身長が似通っている。
月1のペースで2人で背比べをして、追い越した追い越された等と口喧嘩している事は知っていたが、 思ったよりこの年頃の男の子はそういう事を気にする性質のようだ。
まだまだ子供だなぁ、とまるで本当の母の様な心情のサガは、もはや既に今晩行われるであろうパーテ ィーへと意識を飛ばしていた。
「おいサガ、手ぇ怪我すんなよ。見てるコッチが怖いわ」
「あ、すまない。大丈夫だ」
ボーっとしながらジャガイモの皮を剥くサガを心配してかけてきたデスマスクの声に意識を呼び戻され たサガは、そういえば・・・と改めてキョトキョトと辺りを見渡した。
「で・・・当の言いだしっぺ達は一体どこにいるんだ?」
そう、この明らかにデスマスクがデコレーションしたのではないであろう、子供らしいといえば子供ら しい、綺麗さよりもパワーで片付けたような派手な装飾は恐らくミロやアイオリア辺りがやったのだろ う事は想像がついた。
しかし、その子供達の気配はこの巨蟹宮のどこにも気配すらなく、サガは不思議そうにんん?と首を捻 った。
「村までいって皆で買出しだとよ。色々買ってくるから期待してろって言って飛び出していったぜ、正 直めっちゃ不安だけど」
「そうか・・・・いや待てよ・・・もう食材はここにあるのに何故わざわざ皆で買出しに行く必要があ るのだ・・・・・」
瞬間、サガはハッと理由を思い当たり愕然とした。
(もしや皆・・・デスのプレゼント買いにいったんじゃあ・・・・・・)
恐らくはそうであろう事実に思い当たり、サガはしまった、とまた眉を顰めた。
デスマスクの誕生日を忘れた上に、さらに自分だけプレゼント無しときたもんだから、サガはどうした ものかと思案に暮れた。
もう料理を手伝うと言ってしまったし、この量を剥き終える頃にはもう買いに行く暇もないだろう。
困った困ったとウンウン呻ったサガだったが、もはやここまで来てしまったからにはしょうがない。
ご本人の意思をダイレクトに聞いて、出来る限りの事をしてやろうと思いついたサガなのであった。
「デス!」
「おぉ、何だー」
「何か私に望みは無いか?!」
「ハイ?」
「いや、私はプレゼントを用意できないのでな、こうなったら直接デスに何かしてやった方がいいと私 は思うんだ」
「んなのイイって別に、その気持ちだけでいいって」
「いや、それでは私の気がすまないのだ。お願いだデス、何か無いか?」
「ん―――そうだなぁ・・・あ、」
何か思いついたかのようなデスマスクの顔は、何やら企んでいるような雰囲気を醸し出していたが、サ ガは全くと言っていい程ソレに気づかなかった。
「何か思いついたか?」
「じゃあよーサガ、俺にキスしてくんね?」
「は?」
「だからキスだよキス、ミロ達にするみたいなホッペちゅうとか無しだぜ?あんなお子様騙しのじゃな くて唇同士のやつをよぉ」
ニヤリと意地悪く笑ったデスマスクの顔は、ポカンとしているサガの顔をみて更に笑みが増したように 見えた。
(プククク・・・・困ってる困ってる)
デスマスクは、何も本気で言った訳ではなかった。確かに大好きなサガからのキスなんてしてくれたら 嬉しいに決まってはいるが、サガには土台無理だろうと高を括っていたデスマスクなのであった。
普段ミロ達に慕っているサガを独占されて不満な気持ちも確かにあるし、子供達にやっている親愛の証 の可愛らしいチュウも羨ましくなんか無いと言えば嘘になる。
でもそれは仕方の無い事だと思う。
自分よりさらに幼い、まだ6歳という年端もいかぬ甘えたい盛りの子供を優先してやるのは当然と言え ば当然の事なのだ。
しかしデスマスクは、それだけで納得できる程いい子ちゃんではなかったので少々意地悪をしてやろう と思ったのだ。
「ホラ、ミロ達には出来て俺には出来ないとは言わないよな?」
あの普段清廉で恥ずかしがり屋のサガがキスなんて出来るわけないと思っているデスマスクは、サガの 困った顔を見て、それで今回は許してやろうと一人心の中で呟いた。
しかし、事の展開はそう想像通りにはいかなくて。
「何だそんなものでいいのか?私のキスが欲しい何てお前は変わっているな」
あっさりと、それはもう簡潔なまでにサガに言い放たれて固まったのはデスマスクの方だった。
「は?」
「じゃ、ついでだから今やってしまおうか」
「ちょ、サガ、まじか・・・?!」
と、慌てる間も無く、次の瞬間にはデスマスクの唇にサガは唇を重ね合わせていた。

(うわー・・・間近で見るとマジ睫毛長ぇ―――・・・)
一瞬パニックになりそうになったデスマスクだが、至近距離でみたサガの顔に、そんな思考は軽く吹っ 飛んでしまっていた。
美人だとは思ってはいたが、近くで見るとその白い陶器のような肌や、細く長い睫毛に縁取られた形良 い閉じられた瞳などには正直柄にも無くドキリとした。
少しの間をおいて離れていったサガの顔を見つつ、デスマスクはふいに起こった出来事を反芻していた 。
(てか唇柔らけぇー・・・ミロ達いつもこんなんしてもらってたのかよ・・・・)
普段子ども扱いされるのが嫌でやってこなかった自分が少々恨めしい。
サガの突然の行動に驚くよりも先に、そんな考えが頭を過ぎったデスマスクは、正直自分自身にビック リしていた。
「本当にこんなものでいいのか?デスマスク・・・」
ケロリと聞いてくるサガに、結構サガって慣れてらっしゃる?と思ったデスマスクは、思わず苦笑いの ような笑みが浮かんだ。
(いやはや・・・天然って怖えぇ―――・・)
しかし、人間何でも言ってみるものと言うか、棚から牡丹餅と言うか、何にせよデスマスクはサガの ちゅうがいたく気に入ったのであった。
「おう、いいぜ〜★あぁ、でももう1つだけ頼みたい事あんだけど」
「?何だ?」
「またたまにキスしてくれよ、それが俺の誕生日プレゼント」
「別に構わないよ、デスマスクがそれでいいのなら」
(よっしゃ!)
またもやアッサリと承諾してくれたサガを見て、デスマスクは心の中でガッツポーズを作った。
今日一日で新たなサガの一面を知ったデスマスクは、何だか得をした気分になり、不敵な笑いを浮かべ た。
普段飄々と年上ぶって人を食った様な態度ばかりとるから、中々ミロみたいに直球でサガに甘えるなん て事はしないが、こーいうのも中々悪くない。
寧ろこの方がかなり自分にとってオイシイ状況であると判断したデスマスクは、初めて己の誕生日とい うものを心の底から感謝した。
「んじゃあ料理再開すっかー」
「あぁ、そうだな、よし私も頑張るとするか・・・!」
隣でまた黙々と作業を始めたサガを見ながらデスマスクは、今夜は楽しいパーティーになりそうだなぁ と笑った。






****   HAPPY BIRTHDAY DEATH MASK ! ****




突発デス誕生日小説。
一応コレデスサガです。例え死んでもサガデスなんかじゃありません!!デスサガです!デスサガだっ てばァァァ!!(止まれ)
ってか今回の企画で広海っちと共にデスを祝おう!という話しが上がったまではいいものの。
祝いの内容はデス単品か、それともサガ受サイトらしくデスサガで行くべきか迷ったんですよね。正直 。
元々私達の中でデスはそんなにサガとラブラブしてないので。
もちろん嫌いじゃないんですけど、デスはあくまでサガを見守っていて、悪という意味を理解していて あえて悪に徹している飄々とした人物のイメージがあるんで。(訳分からん)
で、一応チャレンジしてみましたよ、デスサガ。
まァ・・・私のデスサガなんてこんなもんよ・・・もうデスサガは他の素敵サイトさんで見るほうが絶 対いいです。マジで(笑)
とにかくデスマスクもとい・・・・うぎゃぴい、お誕生日おめでとう〜〜〜〜〜!!(虐めか)
最初子供ん時はアンタと同じ蟹めっちゃくちゃ嫌だったけど、今じゃ愛しくて堪らないわ〜〜*(酷い ・・・)




back