清清しい朝日が、聖域を美しく照らしてる。 12宮の下層に位置する双児宮は、まだ静寂を保っていた。 Separation! 「んん・・・・」 この宮の守護者、双子座のサガは、珍しくまだグズグズとベットの中にいた。 時間にしてみてば決して遅いものではないが、普段優等生的な生活を心がけているサガにとっては、と ても珍しいことだった。 ここ最近、聖域では仕事が立て込んでいて、サガは休むま間もなく、睡眠時間を削ってまで雑務をこな していた。 昨日などは、日付がとうに過ぎた深夜に、重たい体を引き摺り帰って、ご飯を食べることもなく就寝に 入ったのだった。 今日は、本当に久しぶりの完全な安息日。 今日ぐらいは、グッスリと安眠を貪ってもバチは当たらないだろう。 ボンヤリとした思考の中、夢現でそう考えたサガは、再度深い眠りの深遠へと身を落とそうとした。 「・・・ん・・・っ・・」 瞼はしっかりと閉じられたまま、サガは無意識のうちに不快そうに眉を顰めた。 自身の肢体に、突然、軽いとは言い難い重みがズシリと被さった。 明らかに人だと分かる重みに、サガは夢の淵で薄っすらと感じた。 (・・・カ・・・ノン?) 自分にこんな事をするのは、等しく自分と細胞を分け合った双子の弟しかいない。 そう考え、しかしサガは拒絶の反応は示さないままだった。 こういう事は、変な言い方だが、よくあることだった。 13年前に決別し、お互い憎しみあいながら生き、そして和解することなく死んでしまったが、幼い頃 二人は本当に仲の良い双子だった。 何をするにも二人だったし、当たり前のように二人で身を寄せ合うかのように眠りについていた。 その時この双子の弟は、時に自分よりもずっと年下の幼子のように、自分に身を摺り寄せて甘えてくる ことが多々あった。 そんな弟を、兄は心底可愛がり、まるで母のような心情で抱きしめながら眠ったものだ。 それも13年間途絶えていたが、女神の恩赦によってこの世界に再び生を営むことを許され、運命に引 き裂かれた双子が再び一緒に暮らせるようになってから、自然復活したのだ。 サガがベットで寝ていると、何時の間にやらカノンがモゾモゾと忍び込み、ピトリとサガの体に身を 摺り寄せ甘えてくる。 13年前と全く変わらぬ弟の行動に最初は微笑ましく思い、しかし、13年前と大きく違う点が1つ だけあった。 「っ・・・・あ」 短く息を吐き、サガはフルリと震えた。 そう、カノンは寝ている無防備なサガに、スキンシップというには過剰な愛撫をやってのけるように なってしまっていた。 今も、耳元に熱い吐息を感じ、思わず反応してしまった。 まだ眠りの枷に囚われたままのサガは、まだ反応らしい反応が出来ない。 そうこう思う間もなく、サガに圧し掛かっているモノは、ゆっくりとサガに愛撫を繰り返す。 耳に舌を差し入れ、ねっとりと舐めあげ、片腕を寝着の中に隠れている足に這わせ、白く浮かび上がる 太股までたくし上げる。 「ふっ・・・・あぁッ・・・・」 先ほどより強い刺激を受け、サガの吐く声にも微かに熱が帯びられる。 明らかに快感を感じているサガの声に力を得た腕は、より再奥へと手を忍び寄らせ、卑猥な手つきで サガの肢体を弄る。 「・・・・あっ・・・んん、カノ・・・ン、ダメ・・・・」 緩やかに、しかし明確に自分の体が快楽を求め始めていることを感じ取ったサガは、ゆるゆると覚醒 の方向へと向かわせた。 これ以上やられてしまっては、寝ていられる状況ではなくなってしまう。 ゆっくりと眼を覚ましたサガは、悪戯をする弟の姿を探し、目線を虚空へと躍らせる。 瞬間、サガの思考回路が止まった。 自分に圧し掛かっている人物は、紛れもなく自分と相違ない顔だった。顔だけでなく、その体も爪先も 自分と一緒だろう。 そんな事など、双子なら当たり前の事。そう、双子の弟ならば、サガも固まったりはしない。 たった二つ。僅かに違う点がその者にはあった。 目の前にいる、サガに圧し掛かっていた人物は、サガと同じ見た目で、しかしその髪は漆黒の黒を携 え、瞳は血のように真っ赤であったのだ。 さらに次の瞬間。双児宮にサガの悲鳴が響き渡った。 「!!どうしたんだーーーサガァーーーー!!!」 その声を聞いて飛んできたのが、正に先ほどサガが、自分に悪戯をしていると勝手に濡れ衣をきせられ ていた双子の弟、カノンであった。 愛しき兄の悲鳴を聞きつけ、光速の速さですっ飛んできたのは、流石といわざるべきか。 バン、と勢いよく開けた扉の前で、カノンも同じく固まった。 サガをベットに押し倒す形で組み敷いていたのは、あの、長年サガの中に巣食って、サガを苦しめ蹂躙 し続けた、憎き、黒い人格のサガなのであった。 しかし、カノンは黒いサガの出現に驚く前に、それどころじゃない!と逆上した。 黒いサガの下にいる兄は、恐怖と驚愕に顔を歪め、その瞳にはうっすらと涙を浮かばせている。 恐らく、黒いサガの仕業と思われる、妙に乱されたサガの寝巻きは大胆に肌蹴られ、首元やら太股やら と大変際どい所まで露わになっていた。 仄かに桜色に色づく肌は、男がみたら大変情欲を誘われそうなもので、確実にサガが驚きの興奮だけで 染まったものではない、ということを暗に示している。 思わず、その色っぽ過ぎる兄の姿に一瞬眼が釘付けになるが、カノンはそれを自分以外の男が施した所 業と思うと、腸が煮えくり返りそうになった。 「ッ〜〜〜〜テンメェェェ!!!俺のサガに何しやがんだ!!!!」 美しい顔を、烈火のごとく染め上げカノンはツカツカとサガを取り戻しにかかった。 「フッ!笑止な、それを言うなら、正に身も心も一心同体の俺こそがサガの所有者に相応しかろうが」 「はァ?!っざけんな!お前はただのサガの人格に過ぎねェだろ!てか、お前浄化されたんじゃなか ったのかよ!!!」 マシンガンのように捲くし立てながら、カノンはサガの手を掴み取り、忌々しい男から、サガを引きず り出そうとする。 「それこそ笑止以外のなにものでもないわ、俺があんな女神の光ごときで消えるとでも思っていたのか 」 嘲り笑いながら、そうはさせるかと、黒いサガは、サガの細い足首を掴む。 「ひっ・・・」 状況についていけず、サガは二人の男に挟まれて恐怖に怯えた。 傍から見たら、全く同じ顔が3人もいるのだから、さぞかし奇妙奇天烈なことだろう。 「っつーか何でお前実体化してやがんだよ!お前ただの一人格だろうが!!!!」 「フッ、俺はお前達になど計り知れない崇高なる存在なのだ。俺は浄化されたフリをして、力を蓄えて いただけのこと。それすら分からぬとは何とも愚鈍なる存在よ、やはりサガを支配するのは、この俺が 相応しい!!」 「はああああァ!?何言ってんだ!俺は小っこい時からサガと一緒にいたんだ、サガの事なら何でも 知ってんだぜ?!お前の出る幕なんか、これっぱかしもねェよ!!」 「愚かな!俺はそれどころかサガの内部にいたのだぞ、お前なぞ遠く及ばぬ所までサガを知り尽くして いる。貴様の方こそ自惚れが過ぎるというものだろう!」 自分の両端で繰り広げられる攻防に、当の話題の本人のサガは、一体どうしたものかとオロオロして いた。 ここはやはり原因である私が食い止めなければ、そう思い口を開こうとし、次の瞬間、サガの時は再 度停止状態になった。 「じゃあ、てめェサガがXXXの〇○○が一番弱いってこと知ってんのか!?」 「愚問だな!それ所か、サガの●●●●がXXXXだという事も知っているぞ!」 「そんぐらい俺だって知ってらァ!テメエなんかサガが○○○してくれる姿なんか見た事ないだろう !」 「なんの!俺なぞXXXXをして、●●●●●になっているサガを知っているわ!ウワ−ハハハ!」 聞くに堪えない卑猥な言語を次々へと繰り出す両者の間で、サガは固まったまま見る見る羞恥の色に 染まった。 ただでさえ潔癖なサガにとって、この淫猥な話題のターゲットが自分であることと、自分でも認めた くない、淫らな部分の自分の内面を赤裸々に叫ばれることは、正直身も震えるほどの辱め以外の何も のでもない。 しかし、だんだんとサガの顔からは静かに羞恥は消え、後からは沸々と清流なる怒りが沸いてでてき た。 サガは怒れば怒るほど無表情になってゆく。 今のサガからは、一切の顔の感情が消えた状態だった。それは、サガの正の怒りが頂点に達したとい う証明に他ならない。 「貴様等・・・・・」 低く呻るサガの声は、めったに聞いたことの無い声色で。 思い切りサガは、カノンと黒いサガを振り払うと、慈悲のまるで無い荘厳な声で叫び、構えを取った。 「このならず者共が!異次元の狭間に落ちるがいい!!アナザーディメンション!!!!」 「「ギャーーーーーー!!!!」」 奇妙なダブルサウンドを奏でながら、カノンと黒いサガは、見事サガの必殺技をその身にくらい、次 元の狭間に飛ばされていってしまった。 ゼイゼイと肩で息をしたサガは、静けさを取り戻した双児宮で数度深呼吸をし、ゆっくりとではある が、静かに落ち着きを取り戻していった。 「・・・・・・風呂にでも入ろう」 もはやこの出来事については何も考えたくない。 サガは鬱陶しそうに二人を異次元に飛ばした方に眼をやると、怒れる瞳のまま声を上げた。 「当分はそこで反省していろ!」 今度こそサガは、完全に起きるため、趣味の一つでもある湯浴みをするために風呂場に向かった。 「あれ?サガ、最近カノン見かけない気がするんだが・・・何かあった?」 教皇室で仕事をしていたアイオロスは、近くにいるサガに声をかける。 次期教皇として引継ぎ業務を行わねばならぬアイオロスは、毎日が怒涛のように過ぎていくので、一日 を過ごすのが精一杯という状況で。 しかし、最近何か変だと感じていたのは、他ならぬサガの事についてだった。 あんなに毎日ベッタリくっ付いていた、サガと同じ顔をし、内面サガと全く正反対の弟の姿が、ここ 最近全くと言っていい程見かけていないのだ。 教皇補佐として、黙々と仕事を続けていたサガは、声をかけてきたアイオロスのほうを見やり、一瞬 だけ何か考える表情になったが、次の瞬間には即座にその顔を消し去り、それはもう見事なまでに美 麗な微笑みを浮かべて言った。 「何でもないよ、アイオロス」 アイオロスは、その美しすぎる微笑に呆け、そうか、ならいいんだ、別に、と口をモゴモゴさせながら つられて笑った。 サガの笑みの前では、他の事なんてどうでもいいや、そう思ったアイオロスであった。 しかし、後ろの方でその様を見ていた年中組のシュラとデスマスク、アフロディーテは、サガの完璧 な微笑みの横に、明らかに「怒」マークが張りついていたのを見てとった。 が、見ただけで、3人は特にそれについてサガに聞くわけでもなく、アイオロスに忠告するわけでもな かった。 きっと触れてはいけない話題なのだろう。 長い付き合いのなかで、これはサガの爆弾の導火線的部類の話などいうことを敏感に察知し、暗黙の了 解で押し黙った。 多分カノンが何かヘマをやらかしたんだろうな、そう思い、でも大した同情が沸く訳でもない3人だっ た。 昔から自分達はサガ派だしなぁ・・・・・ ぼんやりそう思い、業務に支障の無い所ぐらいには帰ってこいよ、と感情の篭もらない思いを馳せた 3人だった。 それからカノンたちが何時ごろ帰ってきたのかは、誰にも分からない・・・・ END 内容に偽りあり!!(汗)黒白で書き始めたはずが、カノンVS黒→サガの、ロス→サガ。最後になぜか 年中組まで出張ってきて・・・;しかも、年中組おいしい所引っさらっていった感が・・・・(大汗) いや〜好きなんだよな〜〜年中v(黙れ) いやもう、ほんとゴメン、特に広海っち。ゴメンな、折角ネタくれたのに生かせなくて・・・・(遠 い眼) |