朝起きたら弟のカノンの姿が見えず、サガはどうしたのかと首を捻った。 「・・・どこかへ出掛けたのだろうか・・・・・」 サガはとりあえず着替えを済ませると、12宮の階段を上り始めた。 賭け事はお好き? 「デス、巨蟹宮を通らせてもらうぞ」 双児宮の一つ上、デスマスクの守護する巨蟹宮に差し掛かり、サガは律儀に声をかけた。 だが、宮の主からの返答は無く、今日は留守かと思い直したサガは、止めていた足を動かそうとした。 (ん・・・?) フと感じた違和感にサガはまたピタリと足を留めた。 無人かと思われていた巨蟹宮に微弱だが、しかし明らかに見知った小宇宙を感じたサガは、しばし考え るような素振りをした後、ツカツカと迷う事無くデスマスクの私室へと向かった。 バタン! 「やっぱりか!!」 「ゲッ!」 扉を勢いよく開けたサガは、予想どうりすきる光景に頭痛がした。 「カノン、デス、ミロ、それに老師まで!お前達一体何をしていたんだ!!」 元々潔癖の帰来があるサガにとって、今目の前に広がった光景は惨事以外の何ものでもなかった。 大の大人が4人も雁首揃えて卓上を囲み、その傍らには酒だの煙草だのが散乱して異様な腐臭を漂わせ ている。 そして当事者の4人はというと、見つかってしまったとばかりにバツが悪そうに顔を顰める者もいれば 、暢気に朝の挨拶をしてくる者もいて更にサガの神経を逆撫でした。 「コレは一体何の遊びだ!まさか賭博ではなかろうな!?」 賭け事のような俗じみた所業を何より嫌うサガは、4人に向かってズズイと迫った。 それにいち早く反応したのは、双子の兄弟のカノンで、慌てて引きつった笑いを浮かべた。 「いや、落ち着けよサガ、何も俺達ギャンブルしてたわけじゃないって」 「そうそう、賭け額なんてこれっぽっちだし」 「ミロ、テメッ!何余計な事言ってんだ!!」 「バッカ、お前の場合『これっぽっちの掛け金』じゃなくて、昨日から負け続きで賭ける金少なくなっ ただけだろうが」 「お前も余計な事言うなーーー!!この蟹野郎!!」 「ほぅ・・・何やら昨日からお楽しみだったようだな・・・?それに金品や物質を賭けて勝負を行う遊 戯の事を、世間では賭博と言うのではないか?」 ますますサガは美麗な顔を冷たい怒りの色に染め上げ、4人にジリジリと迫っていく。 普段冷静なだけに怒るとサガは手のつけられなくなる事を知っているカノンたちは、焦りまくりのまま 後ろに下がって距離を取ろうとした。 が、その緊迫した空気を破るかのように、先程から黙りこくっていた童虎が暢気な声を上げた。 「まぁまぁ、そうカッカせずとも良かろうがサガよ」 「老師?何故庇い立てするのですか?!」 「こやつ等も最近毎日のように頑張っとるしの、たまには息抜きをするのも必要じゃと思って、こうし てワシも若いもんと一緒になって遊んどっただけじゃよ、そう強く怒ってやるな」 「しかし・・・・」 (((ナイス、ジジィ!!!))) 流石亀の甲より年の功、あのサガをもってして、あっという間に丸め込んでしまいそうな雰囲気に3人 は感動し、心の中で声援を送った。・・・自らの保身の為に。 「しかし老師、賭け事など、聖闘士の象徴である黄金聖闘士の私達がやるべき所業では無いと思います 」 「まぁ、そうは言っても仲間内の遊びなんじゃから可愛いものだと思うがのぅ・・・・それにコレも友 好手段の一つと思えば良かろうて」 「・・・というのは?」 「以前なら、このように黄金の者達が集まって話をする事すら久しく無かったというのに、今ではこう して同じ卓上を囲んで語らえる程にまでなった。このような時間は他の何ものにも変えがたい尊い宝事 だとは思わぬか?」 「そ、それは・・・・」 不思議な事に、童虎に言われるとそうかもしれないと思わせる力があるのか、サガはすっかり考え込む ように黙ってしまった。 「と!言うわけじゃ、ではワシはそろそろお暇させていただくとするかのぅ」 「えぇー!老師抜けたら面白くないじゃん!!続きどうするんだよ!」 「そう言うなミロ、ワシも何分忙しい身でのぅ、今からシオンに会ってこなくてはならんのじゃ」 あぁそうだ、と何やら思いついたようにポンと手を叩いた童虎は、クルリとサガの方に体を向けて笑っ た。 「そうじゃな、サガがワシの代わりに盤に入ればよかろう」 「なっ!」 「おっ、いいじゃん〜やってけよサガ」 「デス!・・・何を言っておられるのですか老師、私とて今日は執務が残っているのに・・」 「お前の事はワシからシオンに伝えておくわい。遠慮なく皆と語らうが良い」 「・・・・・でも」 「何だ、負けんのが怖いのか兄さん?」 「な、何を!?」 突然背後から聞こえた挑発的な言葉の主のカノンに、思わずサガは不愉快そうに顔を歪めた。 こう見えて人一倍プライドの高い兄が、このような物言いをされて黙っているはずが無い事を知ってい るカノンは、思惑通りの反応を返されてニタと笑った。 「だってそう聞こえるぜ?兄さんは負けるのが大嫌いだもんなぁ〜」 「え、そうなの?サガ負けるの嫌なんだ」 「やる前から敵前逃亡なんてサガらしくないねぇ」 言いたい放題の3人にフルフルと肩を震わせたサガは、貴様等・・・と低く呻ったかと思うと、キリと 眉を跳ね上げて怒鳴った。 「よぅし、いいだろう!その挑戦受けてたとうではないか!」 (かかった!) こんな単純な誘導に乗せられるサガに、カノン達は思わず内心笑わずには居られなかった。 「じゃあよ、金賭けるのはサガ嫌いらしいし、負けた奴が1枚づつ着ている服脱いでいくってのはどう だ?」 「お、面白そうじゃん、俺乗った!」 「あぁいいだろう、私は構わない」 (ええぇ!ソレいいんだ、サガ・・・・) 比較的カノンやデスマスクより悪乗り指数の低いミロは、カノンの悪趣味極まりない申し出にアッサリ 乗ったサガを見て少しだけ焦った。 しかしながら、サガを心配したのは一瞬だけで、すぐにその思考を遠くの彼方へと追いやると、大好き なサガと(で)遊べるかもしれない期待にワクワクしながらミロは席に着いた。 「・・・で、コレは一体何のゲームだ?」 「「「ええええぇ!ソコから!!?」」」 「む、何だ、知らなくて悪いか?」 「いや・・・悪かぁないけど・・・」 (((勝ったなコレは・・・・))) 3人が3人とも、心の中でガッツポーズを取っている事も露知らず、サガは童虎の方に何やら話しかけ ていた。 そして、サガは視線だけ3人の方へ向け、人差し指を1本立てた。 「これだけ待ってくれ、ルールを覚えよう」 「1時間か?じゃあその間暇だし、俺らでもう1局でもやるか?」 「その必要は無い」 「「「は?」」」 カノンの言葉を遮るように言い放ったサガは、フと含みを持たせるかのように優麗に笑って一言放っ た。 「10分だ」 「ほぅ、これは麻雀というのか、中々奥深い・・・・」 「サガ・・・お前本当にあんだけの時間でルール覚えたのか?」 「問題ないよデス、最低限の事は老師に教えてもらった」 「まぁ・・・最低基礎覚えていれば勝負出来ない事も無いけど・・・」 「なんだミロ、私が相手では不服か?」 「んーん、そんなんじゃないんだけど・・・・」 「別にイイじゃねぇか、サガがいいっつてんだからよ、と言っても俺は手加減しないぜ?分かってんの かサガ?」 「当たり前だ、カノン、勝負事に加減など必要ない」 先程から始まった脱衣麻雀以外の何ものでもないゲームは着々と進み、そろそろ終盤を迎えようとして いた。 「和了!」 「よっしゃ一周回ったな、得点決算だ」 荘家のミロから始まり、順に4巡して一荘が終了した面々は黙々と自身の得点を数えた。 「・・・・と、やりィ!俺1番な!」 「あ、俺2番だ、良かった〜〜〜」 「で、俺が3番だから・・・・」 「私が最下位だな」 ケロリと言い放ったサガに少々面食らいつつ、カノン達はニヤと笑って囃し立てる。 「ホーラ、サガ、ルールは守らないといけねぇよな」 「最下位は1枚づつ着てるものを脱ぐ!」 「今更待ったナシだからな、兄さん?」 「あぁ分かっている。約束は守らなくてはいけないからな」 淡々とサガは肩に羽織っていたショールを脱ぐと、続けようか、と言った。 (コレは・・・マジでいけるかもしれないな・・・) カノンはこれから起こるであろう出来事に思いを馳せて、少々品の無い笑いをクツクツと鳴らした。 あのお堅い兄がこんな下卑た遊びに付き合ってくれるのも初めての事ながら、サガ自らの意志で服を脱 いでいく、という中々にオイシイ計画も初めての事で。 今でこそ平然としているが、これから際どい所になったら、あの自尊の高いサガの事、きっとフルフル と震えて恥辱に泣くに違いないと思うだけで愉悦の笑みが止まらない愚弟だった。 『・・・っ』 『ホラ、どうしたんだよサガ、早く脱げよ』 『・・・・も、もう無理だ、許してくれ』 『あぁ?それは無いだろう兄さん、受けて立つって言ったのはサガだろう?今更待ったはナシだぜ?』 『・・・しかし、もうこれ以上は・・・』 『ふん、本当に兄さんは手が掛かる、一人で服も脱げないのか?』 『あ、ちょっ・・・止め、止めないか、カノッ・・!』 (なぁぁ〜〜〜〜んてなぁ〜〜VVあぁ楽しみだなぁV) 等と、カノンが脳内妄想をブッこいている内にも卓上の勝負は進み、また終局になった。 「よっし役満!サガ、また俺達の勝ちで決まりだな」 ヨコシマな考えで頭が一杯のカノンは、勝ち誇ったように笑った。 が、その笑みを受けてサガはニコリと微笑んだ。 それは普段の柔らかい慈母の笑みでは無く、強者が笑う戦士の笑みだった。 「悪いがカノン、私の勝ちで終わりだ」 「え?」 サガ細い指で牌を倒した瞬間、3人は一様に驚愕に言葉が出なかった。 「だ・・・大三元・・・役満!?」 突然強攻牌で積もられて勝ちをもっていかれたカノン達は、ただただアングリと口を開けて驚くしかな いとばかりに牌を見やった。 「さ、サガ・・・」 「では、今回脱ぐのはデスという事になるな」 「うぇ、マ・・・マジか」 予想外の出来事に慌てつつ、カノン達はいいや、と思い直した。 (((コレはマグレってやつだ、ビギナーズラックだっ!!))) 再度勝負が再開された。 「ほら、どうしたカノン、早く脱がないと勝負が続けられないではないか」 「ちょっ・・・ちょっと待て〜〜〜!!」 カノンの慌てた声を涼やかに無視して、サガは無慈悲な笑みを浮かべた。 現在、サガ以外の面子はほぼスッパに近い姿になっており、結局アレからサガは勝ちに勝ち続け、サガ が脱いだ枚数といえば最初のショールのみで、全くのノーダメージと言ってよかった。 「何でんなに強いんだよ!サガ、お前本当は初めてじゃねぇだろう!」 「そうだそうだ、こんなの反則だって!」 「何を言うか、失敬だぞデス、ミロ、私は正真正銘麻雀は今日が初めてだ」 「だったら何で!」 「そうだな・・・・あえて言うならリズムの問題だ」 「「「リズムゥ?」」」 「そうだ、結局麻雀もポーカーも同じ事、不確定要素の確立と計算の問題だ。ならば個々の癖やリズム を把握してその調子を崩せば済むだけの話だろう」 ただ、そのリズムを掴むのに1周を要してしまい1度だけ負けてしまったが・・・ 何という事は無い、と言うサガに対し、カノン達はまるで宇宙語を聞かされたかのようにハァァァ!? と盛大な声を出した。 「い、いやいやいや!何かソレっぽい事言ってるけど意味分かんねぇ!」 「さっきルール覚えたばかりでそんな事出来るわけないだろっ!?」 「・・・・・・・・・・・・そういや・・・」 慌てふためくデスマスクとミロを尻目に、カノンは嫌な事を思い出しかけていた。 そうだ、この兄は恐ろしいほどの暗記力と応用力を持った男だったのだ。 童虎に最低限のルールを教えてもらっただけで、玄人の自分達を負かしてしまう程の才能を、何故今の 今まで忘れてしまっていたのか。 いや、忘れていたわけでは無いが、サガを甘く見すぎていたという事なのだろう。 ヤバイ、このままでは身包み剥がされるのはサガでは無く・・・ 「カノン、どうした約束は守らなくてはいけないのだろう?それともお前一人では脱げないのか?」 「ちょっ・・・たたたタンマ!マジで頼む!ちょっと待ってくれ!!」 これ以上脱いだらイヤンな事になってしまうカノンは慌てて頭をブンブン振った。 これではまるで、先程自分が妄想した立場と全くの逆転である。 そんな思いの弟の思惑を他所に、サガは全く慈悲の感じれないままの笑みで言った。 「お前の言う通りだカノン、私は負けるのは大嫌いで、勝つ事はとても大好きなのだよ」 「「「・・・・・・・・・・!!!!」」」 カノン達は、麻雀の失策以上に最大のポカをやらかしてしまった事にようやく気づいた。 サガを本気で怒らすとマジでヤバイ。 が、時既に遅し。 それから、3人は絶対に12宮内で賭博をすることは無くなった。 END 元ネタ、私の日記から抜粋。 「麻雀さが」という看板を見つけて妄想を膨らませていたら、広海っちから「書けばいいじゃん」とば かりに、またまた爆弾投下されました(笑) 課題やってもらったので、コレはそのお礼に広海っちに謙譲させていただきます!(いらん) しかし、デスとミロ正味いらねぇな;シュラとかも出すの考えたけど、シュラ真面目だから脱衣麻雀や らないかなァとか思って止めました(苦笑) でも鬼畜シュラならいけるかな・・・最後の方にやってきてアッサリ勝ちをもぎ取り、恥かしがって嫌 がるサガの服を脱がせてゆくシュラ。 ・・・エロ入りかねんのでやっぱダメだ(笑) 麻雀の知識は皆無に等しいのでツッコミはしないでくれると嬉しいです;; だってポーカーじゃ綺麗過ぎて脱衣っぽくなしぃ・・・(死) てかこのサガ攻くさくて嫌だ・・・・いえ!私は死んでもサガカノなんて書きませんから安心してくだ さい!(何の) これはカノサガですから!カノサガ!!(シツコイ) |