ibrary Helper & Bad Boy






キーンコーンカーンコーン・・・
遠くの方で響いたチャイムの音を聞きながら、サガは今まで没頭していた読書の手を止めた。
「・・・もうそんな時間か・・・」
チラリと時計に目をやると既に5時半を指しており、一般の生徒は帰るよう促す放送も同時に流れてい た。
図書室の本棚が橙色に染め上がっているのを見て、サガは自分が随分の時間没頭していたんだなという 事を再確認し、少し慌てて椅子から立ち上がった。
本日の図書室の受付当番であったサガは、今日も中々忙しかったな、とボンヤリ考えながらも少し嬉し そうに口元を緩めた。
本を読むのが好きなサガは、入った高校でも当たり前のように図書委員に立候補し、今現在もその職種 を続けているが、当初の本音としては図書委員がこんなに忙しいものだとは知らなかったな、と心の中 で感嘆したものだった。
昨今若者の活字離れが嘆かれる中、この高校の生徒達はそんな話題など関係ないとまでによく本を借り にくる。
本の貸し出し受付は毎回列をつくる程の盛況ぶりで忙しいことこの上無いが、サガはこんなにも本好き の若者がいるのだと思うと、疲れよりも嬉しさが勝って、毎回上機嫌で受付業務をこなしていた。
しかし、実際の所真実は全く違う所にあったりする。
本当のところ、図書室に本を借りにくる者達の目的は本などではなく、学校で美人と評判のサガに、少 しでもお近づきになりたいと思う不貞の輩が大量増殖しているだけの話なのだが。
そんな事を知る由も無いサガは、本日返却された本の残りを本棚に戻そうと、両手に持てるだけの本を 抱えて歩き出した。
 ガラッ
後ろで扉の開く音がし、サガは意識せずにクルリと振り返った。
「すまない、今日はもう貸し出しは終わってしまったんだが・・・」
「あぁ知ってるぜ?」
「カノン・・・・?!」
サガはいきなり現れた双子の弟の姿を見やり、素っ頓狂な声を上げた。
「何だよ、鳩が豆鉄砲喰らったみたいな顔しやがってよ」
くつくつと笑いながら中に入ってきたカノンは、そのままドッカと先程までサガが座っていた椅子に腰 を降ろした。
そんな弟の姿を眺めながら、サガは呆れたような声色で喋りかけた。
「お前・・・今まで何処にいたんだ?また授業をサボったらしいではないか、担任も心配していたんだ ぞ」
「ハッ、心配される筋合いなんざ無ぇよ、学校なんざクソ喰らえだ。あんなつまらない授業をよくも毎 日聞いていられるなぁ、兄さん?」
逆に皮肉ったように返してくるカノンの顔は、何やら感情が見えず。サガは困ったように眉を寄せた。
こういう時の弟は、機嫌の居所を見極めるのが非常に難しい。
普段から扱いにくいこの弟は、優等生タイプの自分と対極の位置にあるような行動を多々取った。
なまじ基本が優秀なだけに、授業なんて殆どと言っていいほどサボってしまうし、怖いものなんて何も ないとでも言うよう教師達も恐れぬ行動を平気で取る。
しかし、そんな自由な行動を取るカノンは、サガとはまた違った意味で学校の生徒達の支持を集めてい た。
何時の時代にも、真面目タイプの人間より、野生的で危険な香りのする男に魅力を感じて惹かれる女子 達はわんさかといるもので。
フワリと漂ったカノンの匂いが何気なくサガの鼻腔に入り、サガは再度顔を歪ませた。
染み付いたタバコの匂いと、それに混じって漂う、香水の匂い。
「・・・カノン、体に悪いからタバコは止めろと言っただろう・・・・」
やや冷淡な調子で言い放つと、サガはフイと背中を向け、本棚の方へスタスタと歩いていった。
(何をやっているんだ私は・・・これではまるで・・・)
子供っぽい所業をやってしまってるという自覚はあるものの、サガは意識とは裏腹にカノンにつらつら と説教じみた小言を繰り返す。
「大体お前は行動が派手すぎるんだ、毎度兄弟だからといって先生に呼び出される私の身にもなって・ ・・」
そう言いながらせわしなく本を戻していたサガは、いつの間にか本棚に自分と折り重なるようになって いるシルエットに気づいた。
「な・・・・」
瞬間、サガは自分の両脇にダンと突かれた両腕の狭いスペースに囲まれた。
「ちょっ・・・カノン」
気配を殺していつの間にか後ろに忍び寄っていたカノンは、自分の腕の中に納まっている兄の姿を眺め ながらニヤリと笑った。
「なぁ兄さん、確かここだったよな?」
「・・・・?何がだ?」
「とぼけんなよ、サガ。ここであのクソアマにキスされたんだろ?」
「―――!お前何でそれを・・・・・!?」
サガは、数日前に起こった出来事を思い出し、思わず冷や汗をかいた。
先日、サガはこの図書室である女の子から告白をされた。
確か学園でも評判のマドンナで、サガも一応顔は知っていた。
だが、サガは「今は誰とも付き合う気は無い」とキッパリと失礼のないように断わった。
しかし、その女の子は中々の気性の持ち主だったらしく、分かったからせめて最後にキスしてくれと言 うやいなや、避ける間も無くサガの唇を奪っていったのである。
これにはサガも仰天したが、基本フェミニストのサガは、女の子のやった事に一々怒るわけにもいかず 、最近の女の子というのはいやはや行動力があるものなんだなぁと一笑に付したのだった。
それは、些細な出来事として既にサガの中で処理されていた。
だが、何故その出来事をカノンが知っているのか?
あの時は、二人だけしかいなかったはずなのに・・・・・
「解せねぇって面すんなよサガ、アイツ本当にイイ面してやがるぜ?学園のマドンナが聞いて呆れる。 アイツお前がダメだったからって俺ん所来て付き合えって言ってきたんだぜ?」
「?!・・・え・・・」
「聞きもしないのにお前の事ベラベラ喋りまくってよぉ、『優等生はコレだからつまらない』だとよ 。俺なら手軽に遊べるとでも思ったんだろうなぁ?」
クククと低く嘲笑するカノンの顔を見て、サガは弟が怒りを持て余しているのだという事にようよう 気づいた。
「安く見られたもんだな俺も。まぁ確かに顔は良かったが、あんまりムカつくもんだから五月蝿い口 塞いでやったぜ?」
アイツ、二度と俺らに手ぇだしてこないだろうなぁ、しばらくは男漁りも出来ないと思うぜ?
そう言いながら薄く嗤うカノンを見て、サガはサァッと青ざめてゆくのを感じた。
「おまっ・・・・女性を何だと・・・!」
「五月蝿ぇよ、あんなクソメス庇ってんじゃねぇよ!お前馬鹿にされたんだぞ!?」
溜めていた怒りを爆発させたカノンは、ダンとサガの肩を掴み、本棚に押し付けた。
「痛っ・・!」
「言っておくけどなサガ、俺は怒ってるんだぜ?」
ギラギラと目を光らせながら言い放つカノンに、サガは不穏な空気を感じ取った。
カノンは片手でサガの顎を掴むと、無理やり自分の方へと向かせた。
「お前自分が回りにどう思われているのか分かってないだろう?簡単に襲われてんじゃねぇよ」
何を、という間もなく、次の瞬間サガは噛み付くかのようなキスの洗礼を受けていた。
「んんっ・・!」
思わずサガは手に持っていた本を取り落とし、バサバサと本が床に落ちていった。
慌ててカノンの体を押し戻そうとするが、カノンは強靭な力で持って更にサガの唇を貪るように推し 進める。
「・・ッ!カノ・・・やめっ」
切れ切れの呼吸の中、サガは必死に弟の暴挙を止めようと試みた。
が、カノンは兄の弱弱しい様により力を得たかのように大胆な行動に打って出た。
片手はサガを本棚へと押し付けたまま、カノンは残る腕をサガの腰元へと寄せ含みのある手つきでサガ の体に滑らせた。
ビクリと反応したサガの反応に気を良くしたカノンは、より下へと指を動かそうとし、サガはいよいよ 慌てた様子で声を上げた。
「やッ・・・・やめないか!カノン!」
無理やり顔を反らせてサガはカノンに静止をかけたが、一向にやめる気配の無いカノンは、未だ怒りを 含ませたままの表情で嗤った。
「なぁ、俺が知らないとでも思っているのかサガ?ここでの兄さんの行動をよ」
何時も何時も沢山の奴等に振りまくその表情が、周りにどれ程の影響を与えているのか、この兄は分か っていないのだろう。
サガとしては、委員としての仕事をこなす上で、「本が好きな人たち」という認識の元、自然親近感 を持って愛想が良くなっているだけなのだが、確かにその影響は大きかった。
普段から兄を独占したくて堪らないカノンにとって、見知らぬ有象無象達に微笑みかけるサガの行動が 面白くないわけはなく。
「俺がどんな気持ちかも知らないくせに・・・!」
拗ねた子供のようなヤケッパチさを持って、カノンは顔を歪めた。
まるで自分だけが一方通行をしているみたいで悔しい。
何時も何時も、独占欲を発揮するのも自分、嫉妬に狂うのも自分。
「俺だけが好きなんて不公平だろうが・・・!」
怒りと共に悔しさも滲ませるカノンの表情に、サガは思わず固まった。
サガの顔から表情が抜け落ち、しかしだんだんと溢れてきた感情のまま不機嫌そうに顔を顰めた。
「馬鹿かお前は!」
「なッ・・・何だと!?」
思わず眉を吊り上げたカノンだったが、次の瞬間今度はサガによって唇を塞がれて言葉を途切れさせら れた。
それはほんの軽いものでスグに離れていったが、サガからキスをしてくるという未だかつて無かった行 動に、カノンは柄に似合わず固まってしまった。
「サガ・・・?」
サガは、慣れぬ事をしたとでもいう風に顔を赤らめ、怒りとその他の様々な感情のせいで薄らと目尻 に涙を浮かばせている。
「お、・・・・お前にそんな事を言われたくない!そんな風に感じれるなら、何故あんな行動ばかり 取るんだ・・・!」
「・・・サガ」
「お前の言っている事と、全く同じ事を私にも言えると思った事は無いのか?私とてお前が沢山の女性 と遊んでいるのを知らないとでも思っているのか?」
カノンがサガに対して怒ったのと同じく、サガとてカノンが女達と遊んでいるのに心を痛めていた。
自分に対してやってくる行動は、果たして本気なのかどうかサガは何時も不安だった。
カノンが本気で女の子達を愛してるとは思えなかったが、果たして自分にもそうなのかと思うと、怖 くて問いただす事も出来なかった。
そんな不安を抱えてきたサガにとって、カノンが自分ばかり好きなのは不公平だという先程の言葉は聞 き捨てならないものであった。
(冗談じゃない、それは私のセリフだろうが・・・!)
今日とて、微かに残るカノンの体に残った香水の残り香を近くに感じ、サガは本格的に泣き出しそうに なった。
「サガ」
「五月蝿い、寄るな!」
情けなく涙を流す様など見られたくない、とでも言うようにサガはグイグイとカノンの体を押し返した 。
「半端な感情ならもう私に触れるな・・・!私はお前の沢山のうちの一人になって笑っていられる程心 は広くないんだ・・・!」
顔を見られないように頭を下に下げながらサガはフルフルと頭を振る。
馬鹿みたいに感情を曝け出す自分が嫌で、恥ずかしく、サガは苦しそうにギュッと目を瞑った。
「ッ・・・・!」
瞬間、サガはカノンに無理やり抱きすくめられた。
「サガ・・・サガ、悪かった、サガがそんな風に思ってたなんて知らなかったんだ・・・」
「カノ、」
カノンは、先程とは打って変わって渾身の感情を込めてサガを抱きしめた。サガはまだ腕の中でもがい ているが、絶対に離すものかと更に力を込める。
確かにカノンは来るもの拒まず去る者追わずの、男としてというより人間としてどうよ、みたいな生活 を送ってきた。
だが、カノンにも理由みたいなものはあったのだ。
自分がサガに触れる度、サガはいつも不安と怯えの混じった顔をした。
それはどれ程優しく扱っても薄れる事は無く、つれない態度もしばしば取られた。
好きなのに触れれない。触れると怯えられる。
そんなフラストレーションが溜まったカノンは、近くにいる女達で不満を解消するようになったのだ。
それが全ての元凶だったことを理解したカノンは、今までにない程の後悔の念に晒された。
「ゴメン・・・・俺はサガが好きだ。サガしか好きじゃないんだ・・・」
真剣そのものの様子で呟くカノンを見やりながら、暫くしてサガはやがでおずおずとカノンの背中に腕 を回した。
「サガ」
「・・・・お前は馬鹿だ」
「・・・あぁ」
「しかし私はもっと馬鹿だ」
与えられる事ばかり求め、自分からは何もしなかった。求めるばかりで、求められるための努力を何も しなかった。
(カノンだけを責める義理は無いな・・・・)
サガは恥ずかしそうにカノンの肩に顔を埋めて、そのまま言葉を発した。
「カノン・・・私もお前が好きだ・・・・だから・・・その、お前が女性と遊ぶのも正直快く思ってい ない」
「サガ・・・・」
「だから・・・・私を好きと言ってくれるのなら・・・・もう他の女性との遊びは止めてほしい」
私だけでは駄目か?
最後の言葉は、可聴できるスレスレの小さい声で、ボソリと呟いた。
カノンは、その言葉を聴いた瞬間、余りの衝撃に言葉を失った。
あのサガがこんな言葉を言ってくれるとは思ってもみなかったし、これ程までに自分を求めていてきれ たとは正直思ってもみない事だった。
激しすぎる狂喜のあまり、カノンは必死に叫びだしそうな声を抑え、感情のままサガをギュウギュウ抱 きしめた。
「ちょ・・・カノ、苦しい・・」
「・・・んなもん当たり前だろうが!あぁもう!何でそんな事今言うかなぁ!!」
辛抱溜まらんとばかりにカノンは再度サガに口付けをした。今度はサガも抵抗はしなかった。
「ん・・・っ・・・はぁ」
貪り殺しそうな程の激しい接吻をされ、サガは息も絶え絶えになっていき、思わずドンドンとカノンの 胸を叩いた。
「カ、ノン・・・は・・息、出来ない・・・んん!」
サガの懇願も意に介せず、カノンは思うままサガの口腔を味わい続ける。
やっとカノンが満足して唇を離すと、どちらのものか区別のつかない銀糸がツと引いていき、二人の口 元を汚した。
肩で息をするサガを見やり、カノンは嬉しそうに笑いながらサガの耳元で囁いた。
「サガ、これから覚悟しろよ」
「・・・・??」
「今まで分散していたモン、全部兄さんに注ぎ込むんだからよ」
「・・・っな・・!」
露骨な主張に思わず顔を赤らめるサガを心底愛おしそうに見つめながら、カノンはスルリとサガの腰元 に腕を回した。
「カノン・・・?!」
「あんだけ熱烈な告白されて普通でいられる程出来た人間じゃあないんでね」
ニタリと笑う様は、同じ素材のはずのサガには到底出来ない程の雄の情欲に満ちていて。
「・・・っ!人が来る・・・!」
「だぁーいじょうぶ、ホラこれ」
チャラリと音をさせてズボンから出したのは、この図書室の鍵だった。
「え・・・!?な、んで・・・」
「俺手癖悪いんだよなぁ、昔から」
お前のフリして巡回のオッサンからちょろまかしたんだ、めっちゃ簡単だったぜぇ?とケタケタ笑う弟 の顔を見て、サガは一瞬クラリと眩暈らしきものを感じた。
やはりこの弟には敵わない。素直にサガはそう思った。
「さっき鍵閉めたから当分大丈夫だって」
「そんな問題では・・・・っんん!」
最後の言葉まで紡ぐ事を許さず、カノンは手っ取り早くサガの口を五月蝿いとばかりに塞いだ。
学校閉鎖の時間まであと数時間・・・・・・





END





何コレ?
・・・・・・うん、まず最初に謝っておこう。
ごめんなさい――――!!うわ〜〜!!ってかこれ1400番踏んでくださったお方のキリリクなのに !!(汗)
折角キリリクしてくださったのにごめんなさい;;
(学生パロでカノサガ)、私のイラストなぞに目を留めていただき、その上小説でも読みたいと言って くださってマジ嬉しかったのに、期待を裏切るような代物作ってしまい申し訳なさ爆発(死)
最初はイラストのようにエロにすべきかしら?とか思ったんですが、広海っちに「リクでエロ?」とい うツッコミの元、「そらそうだ」と思い断念・・・・したかに見せかけてやっぱり変に入りました(笑 )
土台、学生カノサガ考えた時点で私の中ではエロエロだったんで・・・(爆)
こんなんでスミマセンが、1400ヒットという事で少しでも楽しんでいただけたら幸いです。(汗)
これからもキリリクがっつりください!!がっつり書きます!描きます!(うーわ、いらねぇ〜〜〜)




△back