FIREFLY

X-K427
ファイアフライ

イ)HJ82/11 (作)HJ82/11(Kow)

 シュトラール軍、反重力装置実験試作機。
 シュトラール軍特殊兵器開発局航空機用発動機関開発課に籍を置く、ラインハルト・シュタインホフ博士が中〜晩年にかけて研究していた、人体に有害なパルスを出さない、つまり有人機にも使用し得る反重力装置が、開戦2年目の2884年10月にプロトタイプが完成し、ある程度、実用の見通しがついた。早速、博士は軍用機種選定委員会に、カタログデータのみを持ってプレゼンテーションしてみたが、元々、既存の、有害なパルスを出すタイプの、パルス放射を根本的に抑制するというよりも、むしろパルス発生には手をつけずに、それを遮断するというコンセプトで、パルスを放射する基部ブロック全体を、鉛などの遮断材で包み込んでしまう形態をとったため、元来出力が不足気味な従来型よりも、データ上さらに低出力なものとなっていた。このデータをみた選定委員は、その低出力に当初、難色を示したが、もともと反重力装置に興味を持っていた軍としては、この装置用の機体開発と並行して、従来機に取り付けてのテストを進めさせることにした。


ユRs008a反重力装置(部分)

 この要請に喜々とした博士は、自らの作品で唯一量産されたKH-503ホバーパトロール艇をテストベットとし、これを改修してプロトタイプの反重力装置、Rs008aを5基作り、このうち3基を取り付けるべく作業を進めた。しかし、どう計算しても、Rs008aを3基取り付けただけでは、満足し得る性能は望めないことは明らかで、当初前部2基、後部1基で計画されたレイアウトを変更し、後部にも2基のRs008aを取り付け、その推進及び揚力ベクトルを2基で一方向とし、前部2基のRs008aとの3点ホールドを形成し、その出力不足を補った。これらの設計の練り直しにより、このKH-503改修機はKH-503とは似ても似つかぬものとなり、また無理矢理中央胴体に発電器、バッテリー、コンデンサーなどを詰込んだため、各部に不具が出て、かなりデリケートなものとなった。また、ベクトルの構成上、機体重心のかなり外側に置かれたRs008aを支えるため機体構造を改修している時間的余裕も無く、なんとワイヤーでこれらを補強するという前代未聞の様相を呈した。2884年末の12月初めにこの改修が終わり、完成した機体は、発動機の性質上、スタビライザー類を持たない、またベッドとなったKH-503とはまるで似ていない別機となり、これにXK-427のコードナンバーが与えられた。テストの結果は上々で、その静寂性、安定性など、従来型の機種では考えられない特殊な用途の戦術を得られるという評価を受け、同機は第362強襲偵察部隊に配属され、同部隊によって2128mm無反動自動装填カノンを取り付けた。885年1月、兵器局が開発に成功した反重力エンジンを旧式のKH-503ホバーパトロール艇の四隅に装着し、戦場実験の為に第362強襲偵察部隊に配備され、同隊で128mm無反動・自動装填カノン砲が取り付けられ、前線へ実戦テストのため投入された。この機体には、FIREFLYのコードネームが与えられた。同年3月、作戦行動中に機関不調の為に不時着、傭兵軍に無傷で捕獲されてしまう。

(HOBBY JAPAN 82年11月号・HJ別冊より)

KH-503ホバーパトロール艇

 シュトラール軍特殊兵器開発局航空機用発動機関開発課に籍を置く、ラインハルト・シュタインホフ博士が設計し、唯一量産化されたホ−バーパトロール艇。

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Original Text by Hiroshi Ichimura & Kow Yokoyama.