DOLLHOUSE

Panzer Werfer Y-615
ドールハウス

イ)HJ82/6 (作)HJ82/6(Kow)

 傭兵軍、自走多連装ロケットランチャ−。 2882年、地球駐屯のシュトラール軍外人部隊及び機動警察隊を襲い捕獲したPzkw.182中戦車をコピー生産した、比較的小型で軽装備のY-15戦車は、より大型で大威力の火砲を搭載するシュトラール軍の主力戦車群にアウトレンジされ、ほとんど活動することができなかった。
 この戦訓を踏まえ傭兵軍陸戦兵器開発部は、Y-15戦車の低い旋回砲塔を撤去し、トレッドも大幅に拡大し、各種の最新型電子装備をいっぱいに詰め込んだ、巨大な円筒型の砲塔を設置し、その両側に片側6基、計12基のロケットランチャー×2を装備した。更に車体前面のボールマウント式の機銃も、A.F.S.に装備されたものと同系の4cmPrg.42を二連装化した、4cmPrg.42/2に換装された。
 また被弾率の高い砲塔は全周110ミリもの厚さのタングステン装甲板で覆われた。機動性能はかなり低下してしまったが、攻撃能力、防御力とも、もとのY-15戦車とは比べものにならない程強化されたのである。
 ドールハウスは、もともとその18,2mm重ロケット砲による地域制圧射撃任務に就く予定であったが、レーザー誘導弾の使用によって、対空、対戦車戦闘も可能となった。
 特に対戦車戦闘能力においては、ナッツロッカーと正面から対決できる傭兵軍唯一の地上戦力として重宝され、各戦線でひっぱりダコ隣になり、各部隊に分散配備されたためその威力を充分に発揮できず、ナッツロッカーを撲滅するには至らなかった。
 ドールハウスの6連装ロケットランチャー×2の発射する18.2cmTOS対戦車ロケットの弾頭は弾殻が薄く、中には一種のプラスチック炸薬がいっぱいに詰め込まれている粘着榴弾、あるいはウォールバスター弾と呼ばれるものであった。この粘着榴弾は、敵装甲板に命中すると、薄い弾殻は粉々に割れ、中のプラスチック炸薬が敵装甲板にベッタリと粘りつき、遅発用弾底信管により発火され、そのすさまじい爆発によってその装甲板を破壊、あるいは装甲板の内側を剥離させ、その破片を車内に飛散させるのである。ドールハウスはこの粘着榴弾弾頭を持つTOS対戦車ロケットの一斉射撃により何輛かのナッツロッカーを撃破し気を吐いたが、ナッツロッカーの反撃にドールハウス自身無傷と言う訳にはいかなかった。2〜3回、あるいは致命的な箇所に命中すれば1回、ナッツロッカーのレーザーカノンの命中によってドールハウスは戦闘不能の状態に陥ってしまう。いかに厚いとはいえ、通常の装甲板ではナッツロッカーのレーザーカノンを完全に防ぐことはできなかったのである。しかしながら、対ナッツロッカー戦闘において多少とも有効な働きのできる庸兵側地上兵器はドールハウスのみであるため、専ら対ナッツロッカー戦に投入され、戦果と共にかなりの損害もこうむっていた。しかし、傭兵側のS.A.F.S.の就役、部隊配備後は、対ナッツロッカー専用兵器という意味合いは薄れ、本来の任務である、地域制圧支援射撃任務使用されることが多くなった。また、S.A.F.S.で実用化された特殊耐熱セラミック装甲板も砲塔部のみであったが取り付けられ、ナッツロッカーに対する戦闘力も向上した。この特殊耐熱セラミック装甲板は初期の生産型に迄さかのぼって取り付けられ、損傷やオーバーホールのため整備工場に戻ってきた当装甲板未装備のドールハウス全てに取り付けられた。但しこの装甲板は通常装甲の内側に取り付けられるため外観は全く変わらない。
 バリエーションとしては、例によって搭載弾薬数を減じて、通常装備を強化した野戦指揮戦車タイプ、砲塔を撤去し、ウインチ等を増設した戦車回収車タイプなどがあり、前者は生産行程において、通常ドールハウス20輛に1輛の割合で製作され、後者は主に、ビッグダメージを受けて戦場から回収された車輛の車体を利用して製作された。
 2884年8月31日に急遽前線へ投入されたドールハウスの生産は、一応2885年4月の段階で、総数9,376輛をもって打ち切られたが、これは最優先生産命令のでているS.A.F.S.がドールハウスの生産ラインをも占有してしまった結果であり、S.A.F.S.の生産数が一応のレベルに達した段階で、生産は再開されるものと思われる。2885年5月の時点で戦線において活動中のドールハウスの総数は五千輛近く、そのうち九百輛以上の車輛にはセラミック装甲が施されている。このセラミック装甲が装備されているものを後期型、未装備のものを前期型と一応分類しているが、前期型でもセラミック装甲が追加装着された時点で後期型に分類されるようである。

(HOBBY JAPAN 別冊より)

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Original Text by Hiroshi Ichimura & Kow Yokoyama.