論語
魏 何晏  集解
宋 邢昺  疏
底本 『十三経注疏 論語注疏』(阮元 中華書局)
衞靈公第十五
本文
えちぜん注
子曰:志士仁人,無求生以害仁,有殺身以成仁。〔集解一〕
〔集解一〕孔曰:無求生以害仁,死而後成仁,則志士仁人不愛其身也。
〔疏〕子曰:志士仁人,無求生以害仁,有殺身以成仁。○正義曰:此章言,志善之士、仁愛之人,無求生而害仁,若身死而後成仁,則志士仁人不愛其身,有殺其身以成其仁者也。若伯夷叔齊及比干是也。
先生は次のように言った。「志の高い者や仁徳厚き人は、生きることを望んで仁徳を壊すことはなく、自身の身を殺して仁徳を完成する。」
〔一〕孔安国曰く、生きることを望んで仁徳を壊すことはなく、死んだ後に仁徳を完成させるのは、志の高い者や仁徳厚き人が自身の身を惜しまないということである。
〔疏〕子曰:志士仁人,無求生以害仁,有殺身以成仁。○正義曰く、この章で言っているのは次のようなことである。善を志す者・仁愛の人は、生きることを望んで仁徳を壊すことはなく、自身が死んだ後に仁徳を完成させるので、志の高い者や仁徳厚き人は、自らの身を惜しまず、自身を殺して仁徳を完成することがあるのである。伯夷叔斉(1)や比干(2)のような者がこれにあたる。
(1)伯夷・叔斉は殷末周初の人。殷の紂王を討伐しようとする周の武王を諫めたが聞き入れられず、首陽山にこもり餓死した。『史記』列伝第一に伝がある。
(2比干は殷の王子。暴政をおこなう紂王を強く諫めたため、胸を裂かれて死んだ。『史記』殷本紀第三にこの話がある。
<更新履歴>
2006.04.04:第一版。割り注は現代標点に改めた。