廟街
ホテルの部屋の窓から天后廟が見える。この廟を挟んで南北に延びる廟街は夜ともなれば、露店が並ぶナイトマーケットとして有名だ。
夕方になると何処からともなく大きなワゴンを押した人たちが三々五々と集まってきて、廟のまわりの歩道に店を開き始める。歩道には早くから店が出せるようだ。この時間、廟の向こう側の車道を見てもまだ路上駐車の車が並んでいる。そこは立体駐車場の前だというのに、駐車料金がもったいないと言わんばかりに平気で路駐しているところあたり、大阪に相通ずるところがある。
夜もふけて、佐敦道側から廟街に入ると、路上にはびっしりと露店が並んでいた。服、革製品、時計.etc.なんでも安いが、なんにもいらない、という感じ。革の財布に日本語で「本物のイタリアの革」と書いてあったのには笑えた。
駐車場まで来ると露店がと切れ、地べたに布をひいて怪しげなものを売っていたりする。このあたりは照明がなく薄暗い。更に進んで昼間は路駐の車でいっぱいだったところに行ってみると、暗い歩道に、易者がお互いに領域を侵さない取り決めでもあるかのようにポツンポツンと間隔を空けて座っている。その一種異様な雰囲気の中を歩いていくと廟につきあたった。食べ物の屋台から、しつこそうな匂いが立ち上る中、どこからか京劇のような音楽が聞こえてくる。音の出所を探してみると、郵便局の脇で姿勢のいいスラリとしたお婆さんが甲高い声で歌っていた。胡弓と鳴り物の伴奏付きだが、胡弓を弾いているおじさんは何故か料理人のような前掛けをしていた。少しすると脇に控えていたおねえさんが歩み出て抑揚のついた台詞まわしで何か喋りだす。そして、スタイルのいいお婆さんと下半身の立派なお姉さんは掛け合いで歌いだした。芝居仕立てになっているようだ。その様子をボーッと眺めていると、女の人がチップを集めに来た。ポケットから小銭を出したが暗くてどれがいくらのコインなのか分からない。明らかに他のコインとは形が違う2H$を探し出して、差し出された皿に入れた。日本円にして30円足らずだが、香港ではスターフェリーに乗っても25セント残る。ちょっと惜しい気がした。
廟をつっきって北側の通りに出ると、だいぶ明るくなった。路上には食べ物の屋台と、訳のわからないパチモンの露店が無秩序に並んでいる。まさにブレードランナー的カオスの世界。
これぞ香港!これぞ油麻地!
香港の街角
