2001  Dr.ミキ夏休みの自由研究

アコースティックギターにピックアップを
 このホームページを見てくれている皆さんの中にも、バンドをやったり、ライブに出たりしてる人はけっこう多いのではないでしょーか。特にアコースティックギターを使っている皆さん、ピックアップのことで困ってないかなー?僕も困ってきました。大きな楽器屋さんで聞いてみてもよく分からない事が多いんだよね。ガラスケースの中に色々並んでいる各社のピックアップを見ながら、えいや!と買ってみてギターにつけてもいい音が出るものなのか、それに詳しい店員さんて、案外いないもんです。それでまあ僕なりの意見を書きます。良ければ参考にしてください。






ピエゾ〜サドル下に埋め込むタイプ


ピエゾ〜貼り付けタイプ(写真はギター内部
に貼り付け、エンドピンをジャックにしている)



ピエゾ〜外付けタイプ



フィッシュマン「ナチュラル1、2


バーカスベリー(外付けピエゾ)



ZOOMー504U
(Dr.ミキはこれの旧モデルを使用している。)






マグネット
(一般的なマグネットはだいたいこんな感じ)




フィッシュマンが出しているマグネット


   
サンライズ(評判はいいらしい)


L.R.バッグス「デュアル・ソース」




録音には昔ながらのマイクが最適
(たぶんね)
 

ピエゾかマグネットか?
 ピエゾはサドルの下に埋め込むタイプと、トップに貼り付けるタイプに別れます。前者は「ハイランダー」、「L.R.バッグス.RTシステム」、「フィッシュマン.ナチュラル1&2」などが有名で、後者は「バーカス.ベリー」(この会社はピエゾ貼り付けタイプ専門だけど、日本では最近ちょっとマイナーになりました。)「フィッシュマン.SBT−E」「シャドウ2500E」なんかがあります。特徴は高音よりのジャリッとした音で、前者は全て内蔵型のプリアンプで音色を補正しています。後者は外付けでやはりプリアンプを必要とします。音色でも、ノイズの点でも、前者の方が有利だと思います。貼り付けタイプは貼る位置によって大きく音が変わり、セッティングが大変ですし、外付けのプリアンプはノイズまで面倒見てくれないものがほとんどだからです。
 マグネットはサウンドホールにはめこむタイプで、「ディーン.マークレイ」、「ビル.ローレンス」が取り外せるタイプ、「サンライズ」が固定して使うタイプです。原理はエレキギター同様なので1弦2弦のプレーン弦は若干エレキっぽくなりますが、音は柔らかく、特にギターに穴を開けたくない!と云う人には「ディーン.マークレイ」「ビル.ローレンス」がいいでしょう。
 ピエゾは外見上ピックアップが見えずすっきりしている反面、サドルの下に埋め込むタイプは2箇所、貼り付けるタイプはエンドピンジャック用に一箇所は穴を開けなければなりません。(エンドピンの穴を広げる訳ですが。)また貼り付けるタイプでもトップの表に貼る物はジャック差込み口を貼り付けたり、ぶら下げたりと外から丸見えになります。
またマグネットも「ディーン.マークレイ」、「ビル.ローレンス」は使わないときは外しておけますが、下手をすると付けるときにサウンドホールのヘリを傷つけますし、ピックガードあたりにコードがぶら下がるのでちょっとジャマかも知れません。「サンライズ」は音も良いということでプロにも愛用者が多いのですが、ピックアップはサウンドホールにネジで固定(挟み込むのでサウンドホールのヘリに穴が開くことはありません。)ジャックはエンドピンジャックなので、やはりエンドピンの穴は広げる必要が在ります。
 つまりどれも一長一短なんですねー。音と値段とギターに対するリスクからその人なりの選択が必要なわけです。


☆2ほんで僕の場合。
 ピックアップを選ぶ時、ライブ用か録音用かということが又あるのですが、僕はライブ用と割り切っています。(録音には昔ながらのマイク録りがあるし、ややこしいので今回はノータッチ。)で、最終的に「フィッシュマン.ナチュラル1&2」を選びました。。「ナチュラル1」はトリプルオーなどのスモールボデイのフィンガーピッキング用、「ナチュラル2」はドレッドノートボデイのストローク用とのことですが、音にはあまり違いはないようにも思えます。ただ後者の方がハウリングに強いみたいでベースやドラムの入る環境では「ナチュラル2」の方が良いみたいです。
 何故「フィッシュマン.ナチュラル1&2」にしたかというと、元々マーチンのシンラインをつけていたので(単体でプリアンプは外付けにしてた。でもこれでは少しノイズが出るのです。)サドルのスロットに穴も開いてるし、エンドピンの穴も広げてあって、買ってきてすぐ付けられる状態だったからです。だから音に関しては付けてみなきゃ分からない、博打みたいなもんだったのですが、ノイズも皆無になったし、ライブでも評判良かったのでほっとしたと云うところです。
 とは云うもののそのままでは中音がかなり出て耳障りなので、ズームの504を通してプリアンプの「ry」(リズム_中音を抑える)をかけて補正しています。けれど腕のいいエンジニアのいるライブハウスだったら、そのままでもP.A.で直してもらえる範囲だと思います。
 ただあくまでもこれは僕の現状での選択です。ギターが新品で、お金に余裕があれば「ハイランダー」、「L.R.バッグス.RTシステム」を試していたかもしれません。
 でその「ハイランダー」、「L.R.バッグス.RTシステム」なのですが値段も「フィッシュマン.ナチュラル1&2」より少し高く、プロがよく使っています。しかし「ハイランダー」はピックアップをサドル下に仕込む際、サドルスロットの底面をU字形にえぐらなければなりません。ピックアップの断面形状が円形なので、サドルとの密着度を高めるためです。だからもし音が不満で元に戻す際手間がかかる事になります。また「L.R.バッグス.RTシステム」はピックアップが薄いフィルム状で折り曲げを嫌うためサドルスロットの底面から、トップ裏にかけて斜め方向の穴開けが必要です。両者共、取り付けは各々のピックアップに詳しい技術者に依頼しなければなりません。そのピックアップを付けるためにどんな加工が必要かよく考慮しておきたいものです。
 ちなみに各々の定価は「フィッシュマン.ナチュラル1&2」各2万1千円
                「ハイランダー」(AP−1)3万8千円
                「L.R.バッグス.RTシステム」2万8千5百円
です。
 もちろん取り付けを楽器店に依頼すると、別個に手数料がかかります。またこのタイプはどれも9ボルトの006p電池を一個内蔵します。「フィッシュマン.ナチュラル1&2」は6000時間持ちますので交換は一年に一回でいいのですが、取り付け場所は標準がネックブロックになります。マーチンとかギブソンでは内部のネックの付け根の裏、シリアルナンバーが刻印してあるところです。僕はこれにちょっと抵抗があって、向かって右サイド板の内部(右利きの人が構えて下になる方)にマジックテープを利用して張り付けています。「ハイランダー」も同様なのですが電池の持ち時間はもう少し短かったように思います。ただしパンフレットに外付けの電池ボックスが載っていた記憶もあります。「L.R.バッグス.RTシステム」は電池の持ちは500時間ですが、これで充分でしょう。プリアンプの基盤に電池のマウント部があり、基盤ごと内部にマジックテープで張り付けるようになっています。


☆3マグネットあれこれ
 「ディーン.マークレイ」が出た頃、僕もほいほいと買ってみました。ただ初期は製品にバラツキがあったみたいで、6弦だけやたら出力が低くおまけにシングルコイル特有のノイズがあってあきませんでした。よく一人で「お前はストラトか!」と、突っ込みを入れていました。でも神戸のライブハウス「コズミックカウボーイ」では、ピックアップの無い出演者に、店の方からライブの間貸し出されているのを聞くと、なかなかの良い音です。長い間に改良もされ、またミュージシャンでもあるマスターのP.A.の腕もいいのだと思います。ギターに一切手を入れたくない人にはやはりこのタイプでしょう。友部正人さんもずっと同タイプの「ビル.ローレンス」の愛用者です。カナダのシンガー、ブルース.コバーンも「ビル.ローレンス」。ただしわざとエレキっぽい音にしてました。
 あとジョン.プラインは 「ディーン.マークレイ」だった。彼はコードを外に出さず、内側に入れてエンドピンジャック仕様にしておりました。つけっぱなしな訳ですね。トリプルオーを一本完全ナマに戻したので、僕も又近々どっちか買わにゃあと思います。
 噂の「サンライズ」ですが高いだけに、評判も上々のようです。専用のプリアンプも出てました。サウンドホールにがっちり固定でも気にしなーい、と云う人にはぴったりなのではないでしょうか。値段は3万8千円。「ハイランダー」と同じ値段です。


☆4ハイブリッドタイプ
 中川イサト氏のようなプロのギタリストは、よくピエゾとマグネットの両方を付けて大がかりなプリアンプを通し、二つの音色をミックスして使っていますが、高価ですし調整もシビアなものになります。「M.ファクトリー」という会社がこう云ったプロ用のシステムを出していますが、キャノンジャックがついたりしてギターはサイボーグのようになります。(言い過ぎか...)こういうのをハイブリッドタイプと云うのですが、前述の中川イサト氏は、「ハイランダー」+「サンライズ」の組み合わせでシステムを作っているようです。またL.R.バッグスから「デュアルソース」という、ピエゾとコンデンサーマイクを組み合わせたものも出ています。
 どちらにせよこのタイプは音にたいする、はっきりとしたポリシーと知識が必要だと思います。ピエゾだけ、マグネットだけでは飽き足らない人向きです。またライン録音でも音作りの幅が広いのも利点です。けれど僕のように弾き語りのシンガーにはそこまでせんでも...という気がします。


☆5まとめ
 よく思うのは楽器店に各タイプのピックアップを付けたギターを、音の見本としておいてくれたら!と云うことです。そういう店が全く無いようではないですが、(神奈川の「ITC」にはあるようです。)経費もかかるし、楽器店としては、じゃエレアコ買ってよーという気になるのでしょう。僕もオーヴェイションを持ってて確かに便利なのですが、なんか精神的に物足りなくなってくるのです。野外コンサートや初めて行くライブハウスには、丈夫でラインの音の完成されたオーヴェイションがいいのですが、長年ひきなれた全部木のギターの音も捨て難いわけです。ただ完全な生音と、ピックアップの音は、発音の原理からして違います。だから好みのラインの音を探すのだ!と云うことになるのですが、これがホントになんぎだったんですよね。たまたま僕の場合、自分のギターに「フィッシュマン.ナチュラル1&2」がぴったりだった訳ですが。ともかくいつも捜し求めることです。そして自分の出来る範囲内で試してみること。ギターの音を良くするのはともかく弾くことですが、いち番力強く弾くのはステージの上でしょう。そのステージでラインがほとんどになっている今、ピックアップをどうにかしないと眺めるだけで弾かないと云う、ギターにとって本当に可愛そうな事になってしまいます。もっとも奥田民生くらいのスターになると、ソロの時には上等のコンデンサーマイクで音を拾ってもらえたりして、これはこっちのほうがベストですが、誰もがという訳には行かないですよね。それにマイクで拾うのはP.A.にとってすごく腕のいることなのです。

 書き足りないことはまだありますが今回はこの辺で。それでは皆さん良いライブを!



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