Love  Battle




(なんでやねん!!)
さっきから、なんど心の中で叫んだだろう。

いつも明るく笑いながら「姫条くんvv」と声をかけてくれる彼女に、ただならぬ想いを抱くようになって数ヶ月。
何とか友達以上の関係に進展させようと努力した日々。
そして、やっと、本当にやっとの思いで、3日ほど前に二人だけで遊びに行く約束(要するにデートだ!)を取り付けた。
今日までの数日間、気が付けばニヤけそうになる顔を引き締めるのに、どれだけ苦労したことか。

なのに、なのに・・・

(なんでこうなんねん!?)
 
・・今ので両手両足の本数分は叫んだだはずだ。


「姫条くんも、なんか飲む?」
が、かわいく問い掛けてきた。

「あ、ああ、そやな・・・。」

今日の彼女の服装は、胸元が大きめに開いた、ざっくり編みのセーターに、タイトなミニスカート。
耳には、シルバー系のシンプルなピアスが光っている。

(めっちゃ、好みや〜!)

思わず、締まりのない顔で見つめてしまう。








今から遡ること数時間前。

「な、なんで、こんな日に、寝坊なんか、するんやー!!」

姫条は、待ち合わせ場所への道を全力疾走していた。


待ち合わせ時間に遅れたときはいつも、『夕べドキドキして寝られへんかってん。』と言うのが
彼流の社交術なのだが。

「きょ、今日のは、ほんまに、緊張して、寝られへん、かった、からなんや〜!」

もし、待ちくたびれて帰ってしまっていたら・・・。
顔から血の気が引く。

その分を足に回して、とにかく走る。

待ち合わせの約束をしたバス停が見えてきた。

、ちゃんは・・・。」

走りながら目を凝らすと、セミショートの柔らかそうな髪の毛を揺らす後姿が、目に入った。

よ、よかった・・・。

ちゃん!」

「あ、姫条くん、よかったあ〜。」

が、振り返ってにっこり笑った。

「遅れてすまん! 夕べ、俺、マジで、寝られへん、かって・・・。」

着くなり、荒い息を吐きながら言い訳を始めた姫条だったが。

「遅いぜ姫条、何やってたんだよ。」

彼女の後ろからひょいと現れた人物に、目が点になった。

「鈴・・鹿?・・・なんで?」







楽しげな音楽が鳴り響き、あちらこちらから歓声や悲鳴の入り混じった声が、さざなみのごとく伝わってくる。

『な、なあ、今度の日曜、よかったら遊園地行かへん?』

快いOKをもらった、あの日から、何度この光景を夢見たことか。なのに・・・。

「姫条、おまえもコーラでいいよな?」

なぜか、姫条ととの間にいる、熱血バンソウコウ小僧。






数時間前、暇を持て余してブラブラしていた鈴鹿は、待ちぼうけを食っていたを偶然みつけ、
姫条が来るまで、相手をしてやっていたらしい。

(相手してくれてただけなら、そのまま帰らんかい!)

喉まで出かかったが、遅刻した手前、さすがに言えない。
いや、がいなかったら、何の迷いもなく「帰れ!」と言い放ったことだろう。

(ちゃうちゃう、ちゃんがおらんかったら、話になれへんやんか!)

・・・思考が錯乱状態だ。

あの後、姫条が動悸と息切れ(?)を静めようと、膝に手をつき前かがみになっている間に、

「だからさあ、和馬くんも一緒に行こうよ〜。」
「そうだな、ちょうど今日は暇だったんだ。付き合ってやるか。」

などと、信じられない会話が進み・・・現在に至る。




「それにしても、おまえ、遊園地に遊びに来るつもりだったんなら、もっと動きやすい格好にしろよな。
そんなスカートはいてたら、バンジージャンプするとき、パンツ見えるぜ?」

鈴鹿がコーラを飲みながら、の服装に文句をつけている。

 パ、パ、パ、パンツぅ〜〜!?
 このガキなんちゅうこと言うねん!!

だが、は大して気に留めてないらしい。

「やだ、和馬くんったら、エッチー!」

なにがおかしいのか、ケラケラと笑っている。

「お、俺は、その服、すごいええと思うで、ちゃん! バンジージャンプなんか、せんでもええやん。
あ、そや、鈴鹿はジャンプしたいみたいやから、その間、俺らはジェットコースターにでも乗りに行けへん?」

姑息に、彼女の気を引きながら、
なんとか、このおじゃま虫から逃げようと画策する。

「俺もバンジージャンプなんか、したいと思えへんし・・・。」

ここで別行動をとり、後でまた待ち合わそう、とか言ってそのままトンズラしてしまおう。

・・・・だが。

「なんだよ、そんなのつまんねえじゃんか。それなら皆でそこのお化け屋敷入ろうぜ。」

あっさり却下されてしまった・・・。
それどころか。

、怖いからって、俺に抱きつくなよ〜。」

*∞≠※♯♀/〒§♂=〜〜〜〜!?

(そ、それは俺が一番楽しみにしとった・・・・!)

「大丈夫だよ〜だ。 姫条くん、そうする?」

は鈴鹿にあっかんべーをすると、、姫条の心に内には微塵も気づかず(いや、気づかれても困るのだが)、
とてつもなく、かわいく微笑んだ。

「そやけど、それは最後のお楽しみに取っとこうと・・・それに3人やのうて・・・」

2人きりで・・・。



ぶつぶつ言っている姫条を無視して、鈴鹿が元気よく立ち上がった。

「時間勿体無いから、早く行こうぜ。せっかくフリーパス買ったんだから、じゃんじゃん乗らなきゃな!」

「そうだね、姫条くん行こうよ。」

が姫条の腕を引っ張る。

「あの、ちゃん、そないに引っ張らんと・・・できたら、その・・・。」
こ、このまま腕組んでくれたらうれしいかな〜なんて・・・。

姫条の顔が、ほんのり赤らんだ。

だが。

「おまえ今日、なんかノリ悪くねえか? ほら行くぞ。」

反対側の腕を、鈴鹿がつかんだ。

(な、なんでこうなんねんーー!!)

・・・結局、あんなに期待していたお化け屋敷も、何事もなくあっさり終わってしまった。
ああ、心の中は滂沱の涙。








「今日は楽しかったね!」

気が付くともう、日が傾きかけている。

鈴鹿は、「ジュースを買いに行ってくる」とか言ってどこかへ行ってしまったので、
念願の2人きりなのだが、今日という日をあまりにも期待していたために、
現実とのギャップが大きすぎて、今はもう、半ば放心状態である。

「あ、ああ・・・まあ・・・。」

の言葉にも、投げやりにしか反応できない。

「でもこの次は、2人きりで来たいね・・・。」

がうつむき加減でポツリと言った。

「え?」

 なんやいうたか?

「今日も、せっかく姫条くんが誘ってくれたのに、2人きりって思うとドキドキしちゃって・・・。
和馬くんを見つけたとき、思わず『いっしょに行って』ってお願いしちゃった・・・。」

は、ごめんね、と恥ずかしそうにつぶやいた。

 そ、そやったんか・・・。意識してくれてたっちゅうことやな。

それなら許せる。
思わず顔がほころんだ。

「ほ、ほんなら、次の日曜、また一緒にどっか行けへんか? 今度こそ、正真正銘のデートや!」

それを聞いて、は照れくさそうに頷いた。

 よっしゃ〜!姫条まどか、復活や!!




「おー、いたいた! なんだよ、勝手に動くなよ。探しちまったじゃねえか。」

そう言いながら、鈴鹿が駆け寄ってきた。
ジュースを買いに行っただけの割には、なぜかいろいろと紙袋を持っている。

「鈴鹿、ちゃんから聞いたで。悪かったな、つき合わせて。」

姫条は、鈴鹿をちょいと引っ張っると小声で言った。
どちらかというと、邪魔されてたような気がせんでもないが、この際不問にしよう。

「後は大丈夫やから、もうええで。」

感謝を込めてそう言ったのだが。

「・・・・。 姫条、俺、そこまでお人好しじゃないぜ?」

そういうと、鈴鹿は不敵に笑った。

「え?」


「おい、。これやるから、持って帰って食えよ。」

鈴鹿は、手にしていた袋をがさがさと開けると、クッキー缶を取り出した。

「うわあ、いいの? これ、おいしいのよね!」

が嬉しそうに受け取っている。

「だろ? おまえ、好きなんじゃないかと思ってさ。・・・それから、これ。」

鈴鹿は、またごそごそやると、今度はストラップを取り出した。

「ほら、これもやるよ。この前、ケータイのストラップがなくなったって、騒いでただろ?
クッキーの横で売ってたから、ついでに買ってきてやったぜ。」

 な、なに?? そんなことがあったんか?

「うわっ、かわいい〜〜! このちっちゃなピンクのハート、キラキラしててきれいだね〜!」

が、ぱあっと顔を輝かせた。

「ハ、ハートぉ・・・!?」

 こ、こいつ、熱血スポーツ少年のくせして、なに似合わんことしとんねん!!

「ありがとう、和馬くん!」

がにっこり笑う。

 な、なにが『和馬くんvv 』や!! (注:は語尾に‘vv' など付けてはいない。)
 お、お、俺かて『まどかくんvv 』て呼ばせて・・・あれ?

 そういや、なんで鈴鹿は名前で、俺は苗字なんや??

焦る姫条を横目に見て、鈴鹿がにやりと笑った。

 ♀/〒§♂=〜〜*∞≠※♯〜〜!!

ほんのり幸せ気分をかみしめたのも束の間、思わぬライバルの出現に、姫条は慌てた。

 そ、そんなアホな・・・!?

さっき、は『今度は姫条くんと二人で』と言ったはずなのに。

 俺と鈴鹿、どっちが好感度高いんや??

ふと、尽とかいう、生意気な小学生の顔がちらついた。

 あいつやったら、知ってんねやろか?
 今度の休みにあいつんとこ聞きに・・・って、なにアホなこと考えてんねん!!



「さあーて、最後にもういっこぐらい、なんか乗ってくか?」

鈴鹿がスポーツ少年特有の(?)さわやかさを前面に押し出したような笑顔で、に話し掛けている。

ま、負けてたまるか!

「そ、そやな! ちゃん、何乗りたい?」

「うーん、じゃあね、メリーゴーランド!」

言いながら、が足取り軽くかけて行く。

「メ、メリー・・ゴ・・」

最後の締めがそれか・・・?

足取りが一層重くなる。
ふと横を見ると、さすがに鈴鹿も引きつっていた。

 よ、よっしゃ! 

ここはちょっと、いやかなり、恥ずかしいが、好感度を上げる絶好のチャーンス!!
そして、先手必勝!!

ちゃーん! ほんなら俺と一緒に、かぼちゃの馬車乗ろー!!」

「か、かぼちゃ・・・」

「鈴鹿、おまえイヤやったら、そこで見とってええで!」

完全に出遅れた鈴鹿に、追い討ちをかける。
容赦はしない。友情より恋が優先だ!

が立ち止まって、嬉しそうに待っている。

 よっしゃ、この調子で、『vv 』『まどかくんvv 』ちゅう、仲になったるで〜!






だが・・・。

vv 』はともかく、『まどかくんvv 』と呼んでもらえることはないのだった。

なぜなら。

出会ったころ、一度だけ『まどかくん』と呼ばれたのに、まだ彼女をさほど意識していなかった姫条は、
女みたいで気色いからイヤなんや・・と拒否していたのだから。

だが、今の彼には知る由もなく、名前を呼んでもらうための無駄な努力が延々と続く。




そして、姫条がそのことに気づいたのは、念願叶って、とラブラブになった後だった。



〜fin〜



な、なんか・・、「ときメモGS」じゃなくて、男の子サイドの「ときメモ」になったしまったような気が・・・(汗)
いや、プレイしたことはないんですけど。
京井様へイラストの返礼として、リク創作させていただいたものですが、ちゃんとリクにお応えできているのか
超〜〜不安です・・・/// すみません、こんなんで許してやって下さいまし〜(><)
ちなみにインデックスでの紹介文は、京井様からリク頂いたときのメールから抜粋させていただきました。
(2003.11.23)




















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