更新2024/3/5


 

松 燈 だ よ り

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NO.30  2024年   2月号

六方を拝する(5)
 東、南、西、北と続いて、次は下方を拝します。第5回目は下方の使用人です。

 主人(雇い主)の使用人に対する心構えです。(中村元氏の『真理のことば』より)

   次のしかたで下方に相当する使用人に奉仕しなさい。

  ⑴ 能力に応じて仕事をあてがう
  ⑵ 食料と給料を与える
  ⑶ 病時に看病する
  ⑷ すばらしい珍味の食物を分かち与える
  ⑸ 適当な時に休息させる

 使用人に対しても奉仕の心を持ちなさいと言っています。雇ってあげているというのではなく、

人として対等な立場で接することです。

 ⑴は人の長所をよくみることです。その人の能力を見極めて仕事をしてもらうのです。

使用人にとってはやり甲斐が生まれます。

 ⑵については当時は食事付きの住み込みがほとんどだったでしょう。カーストという階級制度がありましたから、

場合によっては粗末な食事で給金もないところもあったかも知れません。

 ⑶⑸は現在では労働者を守る法律として労働基準法や労働安全衛生法があります。

しかし、現在でも雇用主の利益のためそれを無視したようなブラック企業があります。

当時にしてはブッダは画期的なことを言っています。

 ⑷は会社持ちで忘年会やリクレーションをすることではないでしょうか。

 このような気持ちを使用人に向ければ、彼等もそれに応えてくれるでしょう。

大きな組織になると難しいかも知れませんが、社員は家族であるという社風が大切です。

それが偽りのない信頼される会社だと思います。


NO.302  2024年   2月号

六方を拝する(4)

 アーカイブのお話で中断しましたが、方角を礼拝する心構えをお話ししていました。

東方は父母、南方は師、西方は妻、配偶者でした。

 第四回目は北方の友人や同僚です。(中村 元『真理のことば』より)

   次のしかたで北方に相当する友人や同僚に奉仕しなさい。
  ⑴ 施与(せよ)する
  ⑵ 親しみのあるやさしい言葉をかける
  ⑶ 人のためにつくす
  ⑷ 協同する
  ⑸ 欺かない


  ⑴の施与は布施のことです。自分の持っているもので友人や同僚にとって有益なものを与えることです

自分だけのものにしないで皆に分かち与えることです。

 いつかまた自分に返ってくる。他を利することはめぐり巡って自分を利することにつながるのです。

  ⑵は「愛語」と呼ばれています。人に愛情のこもった言葉、心のこもった言葉をかければ、

その人は明るくなり、元気になり、やる気が起こります。

  しかし、嫌がらせの言葉では気分が悪くなり、落ち込み、自信を失ってしまいます。いわゆるハラスメントです。

  ⑶は「利行(りぎょう)」といいます。人のために尽くすことです。⑴の施与は「与える」ですが、

利行は与えるだけでなく積極的に「行動する」ことになります。

  ⑷は「ともに心と力をあわせ、助け合って仕事をすること(広辞苑より)」です。

協同体とか協同組合などという言葉もあります。仏教ではこれを「同事(どうじ)」といい、

⑴の「布施」、⑵の「愛語」、⑶の「利行」をあわせて「四摂事(ししょうじ)」といって重んじています。

  ⑸の「欺かないこと」とは真心をもって誠実に人と接するということです。

  そして、⑴から⑸のような接し方をすれば、仲間から次のようなときに力になってくれます。

   *無気力になったとき 
   *生活が苦しくなったとき 
   *怖い思いをいだいているとき
   *逆境に陥っているとき


 など、いつでも救いの手を差し伸べてくれます。

   このようにして、北方は護られ、安全であり、心配がない。




NO.301  2024年   1月号

先月号につづき2000年1月号を紹介します。

1999年から2000年に移るこの年は、コンピュータに登録されている年代が下2桁である場合、

いろんな障害が発生するのではないかと言われ2000年問題と言われていました。

アーカイブ2

 心配された2000年問題も、大きな混乱もなく無事に収束したようです。

 そして、 1900年代は過去のものになってしまいました。その1900年代の前半には大きな世界大戦が

二度あり、 戦中戦後の日本にとっては非常に悲惨な苦しい時代でした。

 今の物質的に恵まれた世の中からは理解できないかもしれません。

 その後、日本人の勤勉さにより荒廃した国土は奇跡的な復興をとげました。科学技術の爆発的な進展も

あいまって、物質的に豊かな、GNP (国民総生産) が世界一の国にもなりました。

 アポロによる人間の月面着陸のニュースなどからも、「2001年宇宙の旅」 も夢ではありませんでした。

世の中が将来に向かってどんどん進んでいき、 人間の知恵は自然を超越できるかのごとく、みんなが挑戦的な

前向きな時代でした。

 そのころ私達は何かを忘れていたのではないでしょうか。 夜空から天の川が消え、 都会では星は数えるほど

になりました。 田圃は消え、池にメダカやあめんぼうの姿もなくなりました。1900年代も終わりに近づいて、

やっと自然の異変に気がついてきたのです。

 また、民族や宗教の衝突で各地で今もなお絶望的な悲惨な闘いが続いています。

2000年代は、当初から悲観的な難しい時代の予感があります。でも、未来への夢や希望を捨ててはいけません。

宗教や民族の違いはあってもそれぞれに特有なすばらしいもの持っています。 互いの交流のなかで影響を受け

ながらも、それぞれ独自のものを育ててきました。 独自性を過度に強調しすぎると危険ですが、それを互いに尊重し

助け合って、調和共存していくことが大切なのではないでしょうか。

 さらにそれは人間と自然との関係においてもそうです。 最近「共生」という言葉をよく耳にしますが、 2000年代は

まさに 「共生」がキーワードとなるでしょう。 般若心経の中のよく知られた 「色即是空、空即是色」 は、 そのことを

いってるのではないかと勝手に解釈しています。

 人間は元来煩悩や苦悩をもっています、 それは永久に無くならないでしょう。 しかし、それがあるからこそ宗教や

芸術が生まれ、すばらしいものをつくりあげてきました。

 地球の上で人間は決して破壊的な、悲観的な存在ではないと思います。