「鬼さんこちら、」
唄うように言い空へ躍った体はそのまま、掻き消えた。まるで煙が風に吹かれ霧散するが如くふらりと、忽然と。振るう当てを失くした槍を八つ当たり同然に地へと深く強く突き立てる。足元には点々と血の痕、僅か後方には傷を負わされ呻き倒れ臥す多くの仲間達。もしかしたら死んだ者もいるかもしれない。ぎり、と噛んだ奥歯に力が入った。
何をしていた訳でもなかった。ただ先の戦での戦益及び被害の確認をすべく皆を集めて各々に話を聞いていたそれだけ。労い笑い合いさえする和やかな場に突如現れたそれは止める間もなく大型の手裏剣を次々と振るい、文字通り血の雨を降らせたのだ。腕から足から肩から胴から、深さ浅さも様々に斬りつけられた者達が倒れ或いは蹲るのを横目に、その乱入者はこともあろうに笑った、のだ。全身黒ずくめの中で赤茶けた橙のような髪の色だけ異様な程に鮮やかに、顔の下半分を覆面で隠して。確かに。そして言った。追えるものなら追ってみろとでもいう意味か。く、と口元を歪めて微かに笑う。
鬼と唄った。即ち自分を御指名だ。ならば応えてやらぬ訳にもいくまい。一度手放した槍の柄を再び掴む。
「――…忍の方へ、ってか?」