狂宴


呑めや 謡えや この世の極楽
輪廻 錫杖 狂気の沙汰に 今在る血肉は 吾に非ず
彼の身や 彼の身や…




「いくぞぉ?バクラ…」
「…っあ!!」
ろくにほぐされていない肛に侵入する凶暴な肉棒に、犯される体が大きく引きつる。
思わずとバクラの口から漏れる声は苦痛と快感を滲ませ、相手の支配欲を十分に満たす。
マリクはおかしくてたまらなく、顔には残酷な笑みをはり付けたままだ。
騎乗位に、後ろ手に腕を拘束されたバクラがマリクを見下ろし、マリクがバクラを見上げている。
「いい眺めだなぁ…んふふぁ」
「この…野郎…!」
「ほぅらよ…まだだ…たっぷり味わいなぁ」
バクラの腰を強く掴み直して、腰を揺らして下から突き上げてやる。
グリッ ギチッ
「ぎっ、…ぐぁっ…!?」
鉄兜で凶器化された男性器に内壁はえぐれ、裂けた傷口から朱い血をにじませる。
「どうだ?気持ちいいだろぉ?」
「ぐっ!! う…!!」
体の末端に力が入り、異常なほどの痙攣が止まらない。生命の危険を本能が察し、心臓の音が一気に大きく、速くなる。
バクラの表情は苦悶に満ち、体中の神経を蝕むのは激痛の嵐。それなのに、
「クックック…」
マリクが笑う。目線の先には露わなバクラの反り返った性器がある。
マリクがバクラのそこに手を伸ばし、熱く、濡れた感触を爪を立てて握りこむ。
「――ッ!!」
欲望が脈打ち、先端から白濁色の蜜があふれ出る。息を止めて、硬直しながらの射精。
密着した体の部分からバクラの体温の上昇を感じとる。
「飛んだか」
「は、あ…ぁ…」
マリクはバクラを見やるが、バクラの目は虚ろでやや上を見、焦点が定まらない。
半開きの口は小刻みに開閉して、震える舌をちろちろとのぞかせている。
体に与えられるのは拷問のような痛みばかり。そこから性的快感を得る彼の嗜好は異常だった。
けれども、その姿は正常の者が決して出せない妖艶な美を惜しげなくさらけだす。
「ああぁ、だから貴様はたまらない」
バクラの白い内股から、赤い体液が筋になって垂れ落ちている。だらだらと、止めどなく。
足に指を這わせ、垂れる血をすくい上げて、ぺろりと舌を出して血の付いた指を舐める。
片方の腕でバクラの横髪に手を入れ、身を乗り出して顔を近づける。
互いの熱い呼気が汗ばんだ肌にかかって、ゆるゆると霧散する。
「俺と同じだ」
孤独、絶望、憎悪…あらゆる負の感情が混ざりあって発生した闇の人格と。
古代の遺物に憑く、言うなれば物の怪が、同じ匂いがするという。
「…ん、だと…」
かろうじて正気を取り戻したバクラは、マリクを睨みつけ、頬にある腕から逃れようと顔を背ける。
させないよう、マリクはもう片方の手も使い、両側からバクラの首から上を固定する。
舐め残しの血液がバクラの頬に塗りつけられ、徐々に唇へ移動する。
マリクの唾液も相まって、ぬるり。鉄臭さが鼻を突く。
鮮やかな、艶やかな、紅のごとく。
生きている限り流れ続けるこれは、しかし、己のものではない。
同じというのは、そういうことか。
「行き場を失った、生きているかも疑わしい存在だろう?なぁ?」
マリクの、濁った油のような、ギラギラと狂気に満ちた紫の眼。
「……」
見つめ返すバクラの双眼も、毒々しいまでに深い青。
引きずり込まれれば、二度と戻ってこられはしない。
交差する視線。時が止まったかのような錯覚。
動き出したのはバクラの方で、
ガリッ 口に差し込まれた血なまぐさい指を、無言で思いきり噛んだ。
痛みに顔をしかめたマリクは、だがバクラの挑発的な返答を吟味してやはり笑う。
「どうやらまだ足りないらしいなぁ」
優しいともとれるゆったりとした口調でそう問いかけると、答えを聞く間もなく、生々しい淫行は再開された。

(数千年の)孤独も、(生ある間に嫌ほど与えられた)絶望も、憎悪も、
すべてを塗りつぶす激しい快楽にまみれた、闇夜が続く限りの
狂宴。










END/070721

突発の闇マリバクSS。のろのろ書いてたら朝になってた… 眠いけど、胸の憤りを形にできてすっきり
闇マリバクには愛がなくてもいい。性行為はデュエルと同じ位置付け。欲を言えば、お互い表人格を愛してたらいい。
もし闇人格が普通に人間として生きてて2人が普通に出会ってたらめっちゃ気の合う悪友コンビになったんじゃないかなぁ