だるま
勤務定時も過ぎ、コーポレーションのビル内も人が幾分減った夕刻。
「よぉ社長、残業とはご苦労だなぁ」
ノックもなしにドアを開け、軽い調子でずかずかと社長室に入ってきたのは銀髪の少年だった。
遊戯とよく一緒にいる輩。しかしその双眼は普段のものと異なり、鋭くつり上がっている。
全体の表情もいつもは穏やかに微笑んでいるのに、今は机に座っている海馬を馬鹿にしたような笑みで見下ろしている。
「またお前か」
海馬はパソコンのキーボードを叩いていた手を止め、眉をひそめながらバクラの方に目を向けた。
「何の用だ」
「なぁに、ちょっとした暇つぶしさ」
「悪いが、俺はお前のように暇ではない。出ていってもらおうか」
「おいおい、そう冷たくすんなよ」
バクラは机の正面にある黒いソファーに腰を下ろした。
海馬の追い返しも無視し、棚に飾られていた置物を手で弄んでいる。
「……ふん」
馬鹿らしくなった海馬はそのままバクラを捨て置くことにした。
何か真意があろうが本当にただの暇つぶしだろうが、自分は己の仕事をやるまで。関係ない。
しばらく社長室には、カタカタカタと、パソコンのキーボードを叩く単調な音しか聞こえなかった。
部屋の置物もあらかた弄ったバクラはすぐに手持ちぶさたになった。
手を首の後ろに、ソファーに深く腰を埋め、しまいには足をテーブルの上にどっかと持ち上げる。不作法きわまりない。
「あーなんだこれ、やっぱり暇じゃねぇか」
「なら帰れ」
しかしバクラは帰るそぶりも見せない。
「社長はさっきから何やってんの」
「遊んでいるように見えるか」
「いんや」
バクラが立ち上がり、社長の後ろへ回ってパソコン画面を見た。
「うわー、全然わかんねぇ。古代神官文字(ヒエラティックテキスト)?さすがだな」
「日本語だ。何をわけのわからないことを…オイ、それに触るな」
海馬は少々怒りながら、バクラが手に持ってパラパラめくっていた書類の束を奪い返した。
遠慮のないバクラの言動に調子を狂わされている自分がとても不愉快だ。
「いらんことをするな」
「テメェがかまってくれねぇからだろ」
バクラがまるで拗ねているような声を出す。
「何度も言わせるな、仕事中だ。退屈なら帰れと言っている」
「なんだよ、せっかくはるばる社長の顔見に来たって言うのによぉ」
「おおかた忍び込んだのだろう。そんななりで、警備に見つかればつまみ出される」
「そこは弁解してくれよ。ダチだとか何とか」
友達(ダチ)だと? あまりに突拍子もない単語に、海馬の口元がつり上がる。
「ごめんだな」
「この野郎ー」
コンコン
タイミングがいいのか悪いのか、社長室の扉が小さくノックされた。
「瀬人様、発案中のプロジェクトについて少しお時間よろしいですか?」
扉越しに中年の男らしき声が響く。
次の瞬間バクラがとった行動は、机の下、海馬の足下に身を隠すことだった。
「オイ」
「隠れるくらいはいいだろ?」
大きな机は足下も空きスペースが大きく、人間1人くらいなら容易に入り込める。しかも正面からは見えない。
海馬は少し思案したが、面倒事が起きるのも厄介で、不本意ながら片棒を担ぐことにした。
入れ、と扉の向こうの人物に呼びかければ、ガチャリとドアノブが回される。
株だの予算だの担当だの、男が延々つらつらとよくわからない会社の話をしている。男は、やや声が大きい。
海馬はそれに相づちを打ったり、訂正させたり、許可を与えたりしている。
バクラは狭くなった視界に目を泳がせた。一番目につくのは海馬の長い足だ。
わき上がる悪戯心。ニヤリと笑み、音を立てず体勢を変える。
スネにそっと手を添える。気付いているだろうに、社長の反応はない。
そのままするすると上にのぼらせ、内股にきたところで力を入れ、やや足を開かせる。
(クックック…)
空いた隙間に身を乗り出し、ごそごそと、器用にズボンの前をくつろげる。
ぴくりと、海馬の眉がひそまった。
顔をしかめる海馬を見て、部下の男がいぶかしむ。
「社長?どうかなさいましたか?」
「…いや」
なんでもない、続けろ。そう促され、部下はそれに従った。
海馬もそれ以降は涼しい顔で話を聞く。
数十分後、話が一段落した部下が頭を下げて部屋から退席した。
ぱたんと扉が閉まる音があって、バクラが机の下から這い出る。
「まさか出す時もノーリアクションとはねぇ…負けたぜ。ククッ」
れろ…と舌を出して、見せつけるように濡れた口元を舐める。
「悪趣味め」
「ありがとうよ、最高の褒め言葉だ。だけどずいぶんと溜まってたなぁ、濃かったし。社長、残業もほどほどにしたほうがいいんじゃねーの?」
「ふん、減らぬ口だな」
海馬の手がバクラの腕をとり、ぐいと引き寄せる。
「うおっ」
バランスを崩したバクラは海馬に顔を掴まれ、見下ろされる。
冷たい目で射抜かれ、ぞくりとしたものが背中を走った。
「だったら下の口はどうか…今から確かめてやろうか?」
それを聞いて、一瞬戸惑ったバクラの表情が徐々に笑みを作った。
「やーっとその気になったか」
バクラは腕を海馬のうなじに回して、指を交差させる。
無表情に近い海馬の顔を熱っぽく見上げ、赤い舌で自分の唇を舐めた。
「こいよ、瀬人」
何度目かなど最初から数えてはいない。
いつも、バクラから挑むように誘われ、なだれ込む形で交わる。
お互い恋愛感情など一切なく、セフレと呼ぶのも筋違いな間柄。
海馬がバクラを認識したのは、バトルシップ初戦、バクラが遊戯と対戦した時だ。それ以前も会っていただろうが、眼中になかった。
そもそも共通点すらない、ねじれの関係。
なのに時折、バクラは海馬を懐かしそうな目で見ることがある。それが少し海馬には引っかかった。
大きく奇妙な首飾り以外、服をすべて剥いだ全裸でバクラをソファーに横たえさす。自分はきっちりとスーツを着込んだまま。
自分の下に組みしいた体。露わになった肌の白さにはいつも驚かされる。
白い肌と銀髪、そして青い目。海馬にはとても好ましい配色であり、バクラの誘いに乗るのはそれが大半の要因になっていると思う。
しかしよく見れば、白い肌には所々に傷痕がある。胸の下の傷、左腕の傷、左手の甲…一体何をしてできたものか、海馬が知るよしもない。
2人の情事にあまり前戯はなかったが、海馬は気まぐれに胸にある5つの傷に舌を這わせた。
「ん…」
ぴくんと反応を返すバクラの体と表情を見て、海馬の無表情が崩れる。おかしそうだ。
「なんだ、傷痕に感じるのか」
「…そこは、皮が薄くなってんだよ…あっ!」
胸の愛撫に気をとられて、海馬の指が後ろの穴に伸びているのを見落とした。
急に感じる秘部への刺激に、バクラの体が大きく揺れる。
長い指がしなやかに動き、奥へ奥へと侵入していくが、濡らしてもいない異物に内壁はひどい拒絶反応をおこす。
狭い内部をぐりぐりと、えぐるように突き進む。ひきつれる痛みにバクラは歯を食いしばって耐えた。
「ひぃっ…ああ…あっ」
弱々しい声をあげるバクラに、海馬が鼻で笑う。
「さっきまでの威勢はどこへいった」
「ん、ちくしょ…」
「よく見るがいい。自分の痴態の醜悪さを」
自分の股間に海馬の視線を感じる。
己の男根は早くから硬く屹立して、先端から透明な蜜を小さくこぼしている。
色素が薄く形も小柄なのは、宿主の人格には似合うが今のバクラの態度にはまったく不釣り合いの一物で、
心と体が倒錯している様はアンバランスなのに、どこか見る者を惹きつける、極上の眺めだった。
「んっく…はぁ…あん…ぁ…」
バクラが悔しそうな顔を横に背け、目をぎゅっと固く閉じた。
頬は赤く染まり、濡れた口元は部屋の明かりに光って艶めかしく震えている。
彼の体が苦痛に快感を感じることはとっくに知っている。ひどくすればするほど、羞恥をさらせばさらすほど昂ぶる性的異常者だ。
海馬には理解できないが、気遣いが不要なのは面倒がないし、傷つける方は一種の征服欲を得られる。
理性が剥がれ、欲望だけが目の前にさらされる様は最高に淫らで、美しかった。
「ゆくぞバクラ」
「あ、ぁ、はやく…!」
興奮しきったバクラの声色が海馬を煽る。
グイッ 取り出した自らのものをバクラの秘所にあてがい、一気に突き刺す。
「イッ!? っ…ああ!!」
先ほどバクラに口淫され、いくぶん慣らしているにしても、指よりはるかに質量が大きい。異物感も圧迫感も比べものにならない。
バクラの体に電撃まがいの激痛が走る。
「うああっ!」
ドクリドクリと心臓が激しく脈打つ。体が壊れるかと思うほどの衝撃。全身が総毛立つ。
けれども感じるのは恐怖ではなく、狂わんばかりの快楽。
バクラは口からだらしなく涎を垂らし、薄赤い唇をますます濡らした。表情は笑っている。
「ああっ…すっげぇ、イイぜぇ…」
バクラは目を瞑って、より深く快感をすくいとろうとする。
弛緩した表情もあからさまに悦ぶ体もたまらなく淫猥で、男も女もない根本からの色香をかもしている。
海馬はバクラを上から下までゆっくり見やりつつ、腰を進めて挿入を続けた。
「んっ…くるし…はっ…あ、あっ…そこがっ、やぁ…」
「わめくな。男の喘ぎなど聞いても興を削がれる」
「っのわりにゃ、すっげ、でけぇし、あちぃ…よ…、ぅぅっ…」
「…ふん」
ぐぐぐと根元まで陰茎の挿入を果たすと、バクラの体が小刻みに痙攣して震える。
「ひああっ!」
ドクンドクンと、股間の深部から別の人間の鼓動を感じる。体を翻弄する荒波にのまれる。
バクラの思考は真っ白に凝固していき、残ったのは動物的な欲望だけ。
もっと、もっと、何もわからなくなるほどの境地へ飛びたい。
「ん、んぅぅ…せとぉ…っ」
バクラが力の入らない腕を支えに身を乗り出して、海馬の顔に顔を寄せる。
せがむような声で啼くので、海馬は無言で舌を入れる口付けを与える。
「ぅうう…」
バクラが飢えた肉食獣のように激しくすがりついてきた。
ぬめった舌同士が擦れ合い、その刺激に口内はとろりと濡れる。
海馬の唾液をバクラはそのまま嚥下した。
がむしゃらに、砂漠でさまよう迷い人が小さな水溜まりを見つけたように、飢えた舌を貪欲に伸ばして必死に求めるその姿に、海馬はなぜかひどく見覚えがある気がした。
だがそんな記憶、自分は持ち合わていない。
「…ふぁ…っ…」
唇が離れ、2人は至近距離で見つめ合った。
互いの体から発する熱に頭を焼かれる気分だ。
バクラの表情は虚ろで、性的欲求に正気を失っている。
なのにどうして、そんな切なげな、思いつめた目をして自分を見つめるのか。海馬にはわからなかった。
「貴様は、何なんだ。一体、誰だ」
気付けば海馬はそんなことを口走っていた。
遊戯と同様、獏良も二重人格であり、今のバクラは身につけている首飾りによって生まれた闇の人格だと聞いた。
非科学的なオカルト云々を信じるつもりは毛頭ない。ないが、つじつまの合わないことばかりでイライラする。
本当に古代遺物に憑いた亡霊なら、生前に何があったか言ってみろ。
そこに追懐の碧眼の正体があるなら、くだらん戯れ言を聞いてやる。
海馬は半ばバクラを睨みつけていた。
バクラは荒い息を整えないまま、半開きの口をぴくりと動かす。
「俺様は…誰でもねぇ…」
バクラがふっと小さく笑う。それは自嘲の笑みに近かった。
「人間ですら、ねぇのかも、な…」
眠りに落ちてから導かれる世界は、いつだって悪夢。
闇に肉体をむさぼりつくされ、体の骨格が変わっていくのを生々しく体感する。
火あぶりをされているかのような鈍痛と激痛の点滅に、たまらず絶叫をあげるが、周りに生きものはいない。完全なる闇だ。
まるで、獏良了の体に乗り移って味わう懐かしい人間の生活にうつつを抜かす自分を、厳しく責めたてるように。
そしていつしか、目の前の闇は鏡だと気付く。黒い世界は己自身。自分を裁けるのは自分だけだ。
過去の妄執につきうごかされる、闇に蠢く醜い魔物。それが己の最終形態。
何を思っても、後戻りはもうできない。
戻る場所などないのだから、後悔なんてするはずもない。
幻想を語る間、バクラの目は海馬からそれてあらぬ方向を見ていたが、ふと海馬に視線が戻される。
眉をひそめて不機嫌そうな海馬を見て、バクラは苦笑した。
「俺様が怖いか?人ですらねぇんだぜ、もう、俺は…生ける屍だ」
「オカルト妄想もその辺にしておけ」
そろそろ本気で萎える。海馬がぴしゃりと言い放ってバクラの言葉を遮った。
「貴様が何者かなど、俺の知ったことではない」
「…なんだよ、テメェが聞いたくせに」
自分本位の海馬の暴言は聞き飽きたつもりだったが、どうやらまだ底知れないようだ。
「これだから嫌だぜ、御曹司とか…位の高い人間はよ、 !? んうっ…!」
急に再開された下半身の律動に、バクラが思わず甘い声を漏らす。
「あっ、この、…んんんっ!」
バクラの非難を、海馬はまったく意に介さない。
細い腰に手をあて自分勝手に動かしながら、感じ入るバクラの表情を堪能する。
結合部分が燃えるように熱く、その熱が全身の発汗を促す。着ているYシャツがじわりと汗ばんだ。
「っ…」
海馬は片手で荒っぽくネクタイのひもをゆるめた。
腰の動きが早急になる。ぐちぐちと、いやらしい水音が部屋に響いている。
「わかるのは、今俺の下で喘いでいるのは、獏良ではない……貴様だ、バクラッ」
「ひっ!ぅ…」
海馬のものが最奥へ突き入れられ、敏感な部位を激しく押し擦られた。
反動でバクラが頭をそらせる。目も口も開いたまま、強い快感にすべてを支配される。
滲んだ視界に映る人物。それはまぎれもなく海馬瀬人で。自分が投影していた遠い過去の人物とは、やはり別人で。
だが、この男の性器に貫かれて、感じているのは、身悶えているのは、たとえ体が器でも――。
「ぁぁ ぁあっ…!!」
バクラの中で何かが弾ける。いきどおった性の解放。
陰茎の射精は激しく、白濁の体液は勢いよく自分の顔にまで飛んだ。
果てしない快楽に体が溶けていく錯覚までした。
射精の反動で結合部が締まり、ぐっと海馬のものを己の中に食い込ませる。そして強調された肉棒の感触に、感じる。
「あ、う…はぁ…はぁ…ぁ…」
「…ずいぶんと溜まっていたのだな。残業でもしていたか?」
海馬が皮肉を言う。バクラの顔についた精液を指ですくい、自らの口に持っていく。
舌を出して指を舐めとる動作を見せつけられる。射精直後の無防備な体には強すぎる刺激。
無意識に腰を揺らせば、いまだ挿入されたままの海馬自身がバクラの内壁にぐちりと擦れる。
「ん、あっ…瀬人っ…ほしい…!」
バクラが身も世もなく、目に涙を浮かべて懇願する。
「もっと、俺の奥っ…そんで、中に出してくれよぉ…!」
「はん、好色な奴だ」
「あっ、うん、いいからぁっ、はやく…!!もう、何でもかまわねぇからぁ…!イけ…!!」
「ククク…貴様の望み通りにしてやる。味わえ、バクラ」
言うなり、海馬が激しく腰を打ち付けてきた。
淫らな空気が蔓延する部屋には、肉のぶつかり合う音と、粘っこい水音と、バクラの悲鳴まがいの嬌声しか聞こえない。
「イッ――、あっ! はぁ、ああっ…海馬ぁ…!」
「…くっ…っ!」
海馬の動きが突然に止まり、苦しげな表情で体に力を入れる。
下半身からの熱がいっそう高くなり、じわりとバクラの体の中にしみこむ粘液。海馬の種子。
「…ん…あぁぁ…」
バクラは身をよじって、男の汁を中に出される生々しい刺激を受けた。
ぎゅっと閉じられた目からは目尻にたまっていた涙が頬に流れる。生理現象とはいえ、バクラの泣き顔なんてそう見られるものではない。
なりふり構わず自分の下で乱れるバクラに、海馬は身を焦がすような衝動を感じた。
思わずバクラを抱く腕に力がこもる。気がついて、すぐに解いたが。
「……」
恋でもない、愛でもない、この感情をなんと呼ぶのかわからない。
ただ欲情しているだけだ。そうだろう。その答えで自分を納得させる。
劣情の収まった己のものをバクラの中から引きずり出せば、肉棒が抜け出る刺激にいまだ敏感な白い体がびくりとはねる。
「うっ…」
しかしすべて引き出せばバクラの体から一気に力が抜けて、ソファーに沈むようにぐったりと消沈する。
まぶたが重い。バクラの脳に睡魔が襲う。このまま意識を手放せば、きっと最高に心地よい…
「気を失うな。人格が交代したらどうする」
頭上から無情な海馬の声が聞こえる。
「いい加減、獏良了の方にする言い訳もネタが尽きてきた」
ゆっくりと目を開ければ、海馬といったら服の乱れもほとんどなく、すました顔で自分を見下ろしている。
全裸で脱力している自分がまるで馬鹿みたいじゃないか。おもしろくない。
だけど今はとにかく眠りたかった。
「寝かせろよ…もう、だりぃ」
「後始末をしろ」
「社長がやって…」
「ほざけ、誰がやるか」
「じゃあ、もう、そのままで、いい…」
「おい」
目を閉じたバクラに海馬の手がかかる。
「俺、いっときくらい 何も考えないで ねたい…」
海馬が少し固まっている間に、バクラは本当に寝てしまったらしい。
すうと穏やかな寝息が聞こえてきた。単調で、規則的な。
海馬は床に落ちているバクラの服を取ると、表面が隠れるくらいにバクラの上にかけてやった。
上着に押された金色の首飾りがチャリンと音を立てて揺れる。
「……何に捕らわれている」
眠るバクラに海馬が尋ねる。答えなど期待していない。
さきほど聞いたバクラの『悪夢』。
くだらない妄想の幻だと鼻で笑うこともできた。
だけどそうしなかったのは、夢の内容を語るバクラの表情があまりに悲哀に見えたからだ。
毎夜苦しんでまで、この世で果たすべき野望があるという。
それが生への執着になっているのなら、苦しみと共に蘇った存在なら、死ぬまで痛みに身を焼かれなくてはならない。
彼のマゾヒズムは一種の自己防衛なのかもしれなかった。
暗雲たちこめる焼け野が原で、血だるまになって高笑いしてる彼の姿が脳裏に浮かぶ。
世界のすべてを敵にして、闇の底なし沼に足を浸からせ、「この日を待ちわびたのだ」と歓喜する。
それはなぜか、切ないほどに悲しいビジョンとして目に宿り、
こだまする高笑いは、どんな泣き声よりも悲痛な叫びに聞こえた。
END/070722

アニメのエジプト行く前の海馬vsバクラを見て妄想したけど、時期的にはその前じゃないと成立しない そんな話でした。
マイナーですが管理人のオススメCPです。かいばく。高笑いコンビ。本命じゃなくてもアリだと思っていただけたら幸いです。
かくいう私もバク獏とかバクマリバクと同一直線上に扱ってます。なんでもあり。遊戯王はみんなで乱交すればいいよ(よくないよ)
基本、肉体関係はあるけど愛はない。海馬がバクラを抱く理由なんて「色合いがブルーアイズに似てるから」それだけでいい。
古代でも盗賊王バクラと神官セトは関わりがあったらと妄想してます。何度か2人で会ってて、性交渉も一度だけ…とか…
蛇足:獏良(表人格)は本田と付き合ってる設定。ままごと恋愛で手を繋ぐくらいしかやってないけど。しかも獏良はバクラに夜な夜な×××されてたり自主規制
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