※俺設定の学パラ(どみのだおし)の竜蛾です。みんな童実野高校にいます。




放課後。教室から生徒がぞろぞろ出ていく中、どたばたと教室に入ってきた者がひとり。
「羽蛾、はがっ 駅前のたこ焼き屋が今日安いねん!食べにいこーや」
竜崎が折り込みチラシを片手に、帰り支度をしていた羽蛾に詰め寄る。
しかし、笑顔の竜崎とは対照的に、羽蛾は無愛想のしかめっ面だった。
「またたこ焼き…今月で何回目だよ。お前の主食はそれだけか」
「だっておいしーんやもん、たこ焼き。ワイの好物や! な?行こうやー」
「……行かねえよ。今日は用事があるんだ」
「えー!?何や用事って」
「英語の宿題でわかんないとこあるから、先生に聞きにいく」
「へ?」
羽蛾の手には、英語のテキストとノートと筆箱がしっかと持たれている。
(宿題でわからんかったら放置するやろ、普通…)だいたいそんな感じの竜崎は、羽蛾の真面目っぷりに絶句した。
けれど、たこ焼き屋の割引は今日だけ。どうしても行きたい。
「どんぐらいかかるん?」
「さあ…30分くらいか」
「じゃあ、それ終わるまで待つさかい、そっから一緒に行こうや」
「……」
「な?なっ?」
「……仕方ないな」
「やった♪」
素直に嬉しがる竜崎に、羽蛾は微妙な表情でため息をつく。


図書室の扉をガララとスライドさせ、数歩歩くと見える閲覧室の机に、銀髪隻眼、英語担当の外国人教師が本を読んで座っていた。
「ペガサス先生」
羽蛾が呼びかけると、ペガサスはこちらに気付いてニッコリと微笑む。
「ハーイ、羽蛾ボーイ。今日も何か質問(クエスチョン)デスか?」
「はい、あの、今週までの宿題の、長文のところなんですけど…」
羽蛾がわたわたと机の上にテキストをひろげる。ペガサスは読んでいた本をパタンと閉じた。
「羽蛾ボーイは成績優秀なのに、キンベンでとても感心デース♪」
「いえ、別に、そんなことは…///」
羽蛾は照れているのか顔を赤くして、「ここです」とわからないところを指で示す。
「ここが、辞書で調べても当てはまるものがなくって、上手く訳せないんです」
「ああ、それはデスね……」
ペガサスが羽蛾の質問に丁寧に解説を入れる。しかし、ネイティブ英語とカタコト日本語がごちゃ混ぜになったその説明はやや難解だった。
部外者の竜崎は数歩離れて2人を見ていたのだが、
「ヘイ、竜崎ボーイも一緒にスタディしましょう」
そうペガサスに言われて、竜崎もイスに座ることになった。もちろん勉強(スタディ)する気はない。頭の中はたこ焼きばかりだ。

「ここのfeelsは2文型、be動詞のisと同じ意味になりマスし、先頭のwhatは前の文を受けていマース。このwhatは疑問詞ではありまセン。what's that?」
「えっと……関係詞、ですか?」
「そうデスね、正しくは関係代名詞。つまり、what自体に意味はなく、デスカラ、訳す必要はないのデース」
「あ、そうか」
羽蛾がすとんと納得した表情になる。疑問は解けたらしい。反対に、竜崎はますます英語が苦手になる気分だった。羽蛾は竜崎より学年が下なのだから、その範囲はしっかり習っているはずなのに、まったくちんぷんかんぷんだ。
言い訳をするわけではないが、ペガサスの英語の授業はわかりにくいことで有名である。(ペガサス本人が、教えるというより生徒で遊んでいるような節がある。)
羽蛾はいつもこうやって、ペガサスに英語の予習復習をみてもらっているのだろうか。さっき、ペガサスは羽蛾に今日「も」何か質問があるのかと言っていた。きっとそうなのだろう。
「……」
なんだか、自分でもよくわからないけれど、おもしろくない気分だった。
問題が解けない時の苛立ちと似ている、でももっと感情的な何かが、竜崎の胸から腹にかけてをムカムカさせる。

「長文を読む時に一番必要なのは全体図を把握することデース。見たところ、羽蛾ボーイは単語や文法も覚えていマスし、読解力もありマース。きっと次のテストは満点(パーフェクト)でしょう」
「本当ですか?がんばります」
ペガサスに褒められた羽蛾が声を弾ませる。がぜんやる気を出したようだ。
敬語を使う羽蛾はそうでもないが、(他の先生にも普通にそうだし、先輩にもよく使う。これは嫌味であることが多いけれど。)ここまで相手にうやうやしくする羽蛾なんて珍しい。というか別人みたいだ。
ほんと態度ちゃうなーと、竜崎がぼーっと羽蛾を見ていた時、ペガサスがひときわ楽しそうな表情で笑った。まるで、悪戯を思いついた子供のような、悪気のない含み笑い。
「そうだ、羽蛾ボーイのようなイイコにはご褒美をあげましょう」
そう言うと、ペガサスが羽蛾の腕を取り、くいっと自分に引き寄せると、頬にちゅっと軽く音を立てて口をつけた。
「!」 突然のことに、顔を真っ赤にして羽蛾が固まる。
「……!?」 竜崎は真っ青になって固まった。

「ぺ、ペガサス先生…!?」
解放された羽蛾が、頬に手をあて、ペガサスを見る。
「羽蛾ボーイのほっぺはぷにぷにデースvvv」
「かっ、からかわないでくださいっ!!」
「Oh,ソーリー」
大声で抗議する羽蛾に、ペガサスは両手を上げて謝りつつ、顔は笑ったままだ。全然悪びれていない。
羽蛾もそんなに怒っているわけではなさそうだった。
けれども、一番無関係のはずの竜崎が、一番怒っていた。
さっきからくすぶっていたむかつきメーターが一気に振り切ったイメージ。
外国では挨拶だとかそんなことはどうでもいい。羽蛾がキスされた。
(ワイかてそんなんやったことない!)
やばい、怒ってる通り越して、なんか泣きそうになってきた。
ガタンと大きな音を立てて、竜崎がイスから立ち上がる。
「ワッツ?竜崎ボーイ?」
「……ワイ、もう帰らなあかへん。さいなら」
2人の顔を見ずに、竜崎がそう言って、図書室を出る。
羽蛾が何か言ってきたような気がしたが、竜崎の耳には入らなかった。




「竜崎!」
下駄箱で靴を履き替え終わった時、図書室から走ってきたのか、息を荒くした羽蛾が竜崎を呼び止めた。
まさか羽蛾が追ってくると思わなかった竜崎は、つい立ち止まってそこから動けなくなる。
呼吸が整ってきた羽蛾が、キッとした目で竜崎を見た。
「なんだよさっきの。いきなり帰って、ペガサス先生に失礼だろ」
「そんなん知らんわ」
「何怒ってんだ」
「怒ってへん」
怒ってないと言いつつ、その声音はまるで怒ってるようになってしまった。
「何なんだよ、お前。わけわかんねー」
とうとう羽蛾の方が怒ってきた。
「……」(だって、泣きそうやなんてバレるん、いやや)

「ワイはもう帰るんや。羽蛾はペガサスんとこ戻ればええやん」
竜崎はふいっと顔を背け、踵を返して外に出ようとする。
「竜崎!」 羽蛾が呼び止めるが、今度は立ち止まらない。すると、
「……せに」
ぼそりと、羽蛾が何かを言った。そして、

バコッ!

背後から何かが飛んできて、竜崎の後頭部に直撃する。
「!? いったあ!」
べしっと地面に落ちたのは上履きだ。多分、羽蛾の。
「なにすんねんぼけ!」
竜崎が頭を押さえながら後ろを振り向く。衝撃で少し涙が出てしまったが、半分は痛みのせいだ。
(ワイはなんも悪ない!)
そう言おうとして、しかし、竜崎は羽蛾を見て二の次が出なくなった。
羽蛾は変な顔をしていた。怒っているのか泣きそうなのか。今にもマジギレしそうでも、泣き出しそうでもある。

「……たこ焼き、食べにいくって言ったくせに。帰るってなんだよ、竜崎のバカ!アホ!コメツキバッタ!」

恐竜オタク!三白眼!関西人!と、もはやののしっているのか微妙なことすら引き合いに出して、羽蛾は竜崎を非難した。
「ちょ…羽蛾っ、ごめん、悪かったって」
口では絶対に勝てないし、羽蛾の辛そうな表情を見ていたら、竜崎の中のもやもやした嫌なものは、いつの間にかどっかに行ってしまった。ひたすら平謝りするしかなくなる。

「ワイ、知らんかったんや。羽蛾が、そんなに、」
「……」
「そんなにたこ焼き食べに行くん、楽しみにしてたなんて、全然わからんかった」
「……!? んなわけあるか!」
「? じゃあ、なんでそない怒っとるん?」
「し…知るかバカーーー!」
だっと羽蛾が竜崎から逃げる。
「あっ、ちょ、たこ焼き!行こうやってー!」
竜崎が後から追いかける、結局いつものパターンに戻る。
微妙に食い違っている2人が意思疎通できる日は、はたしてくるのだろうか。


――図書室にて。
「フフッ、『ファニー・ラビット』はいつ読んでも笑ってしまいマース☆」←蔵書にアメコミを加えた図書委員顧問。
意外にも、鍵はこの人が握っているのかもしれない。



















ふと、ペガサスがこちらに気付いたように目を向けて、WOW!と満面の笑顔になる。

「ハーイ、Dear 犬吉ガール

 Congratulations on your obtaining a driving licence!!」





END.

あえてコングラッチュレーション!笑
自分サイトネタのものですが、犬吉さんへ車の免許おめでとうございます記念にラッピングしてみました。
犬吉さんの素晴らしいペ蛾の前に、なんというへぼい竜蛾+ペガ…orz すいませんすいません><
あとこれおくりつけようと犬吉さんサイトへ行ったら日記に私への誕生日プレゼントがおいてあってめんたまとびでました。あああありゅうがあああああ!!

最古千歳 080614