※茨木の年齢設定と親父の等身おもいきり間違えましたすいません。
鬼になりたてのショタらきと大男くらいのサイズの酒呑で交尾してます。
をばりょう
今日は村を三つ潰した。 家は鬼火で燃やされ、田畑は毒に枯れ、人だったものは肉塊になって血溜まりに積み上げられた。 彼ら〈鬼〉は人間より欲望に忠実で、その分残酷だ。気が済めば鬼たちは皆好き勝手にお祭り騒ぎになる。 髑髏で酒を飲む鬼、生かしておいた女を犯す鬼、価値もわからぬくせに金目の物を集める鬼。一言に鬼とくくっても千差万別だった。姿形も大小様々、総大将の酒呑童子は人間を一呑みできるほどの大男だし、老人のようにしわくちゃの子鬼もそこら中でキーキーしている。 ぴちゃりぴちゃりと血溜まりに手を沈めて遊んでいる影がいた。 見ると人間の子供のような形でいるが、頭からは小さな角があるし、開いた口から覗く牙は驚くほどに鋭く尖っている。 「……ちだ」 子鬼は血まみれになった両手を持ち上げて嬉しそうに笑った。 「血が、いっぱいだ。いろんな人間の血がまざりあって、ああ、うめぇ。うめぇなぁ〜」 血のついた手を舐め、掬っては一口。飽きたらず、死体を鋏で斬ってぶわと湧き出たところを舌を出して受け止めた。全身に生臭い血の飛沫を浴びる。垂れる滴が肌を撫でていく。 「あ――……」 舌に感じる味は極上で、充満する臭いはたまらなく気持ちを高揚させる。 子鬼も昔は人として生活していた。人間が嫌いなわけではない。むしろ好きだ。 好きだから、その血はおいしい。その肉は斬りきざみやすい。だいすきだ。もっと血がほしい。血がでる肉がもっとほしい。 子鬼はすっかり血のこびりついた指をちゅうと吸った。溶けた血の鉄臭さが舌に広がる。 「うま…」 ひとりぽつりと呟いた声は、他の鬼たちの喧騒に掻き消された。 少し向こうでは、酔っぱらった鬼たちが燃える家の周りで輪になって踊っている。時折聞こえる中からの断末魔にげらげらと笑い声が重なる。 +++ 「おやじ おやじ」 蚊の鳴くような小さなか細い声が、すがりついている相手を必死に求める。 時折、まるで幼子の夜泣きのように、茨木は夜な夜な父親代わりの酒呑の寝床にぐずりながら入ってくることがある。 最初のうちはそれを適当にあやしていれば大人しく寝入ってくれた。 しかし何時だったか京から攫ってきた女とまぐわっているのを見られて、自分にもそれをしろと強請るようになった。 息子への情愛と女体への色欲はまったく異なるというのに、子供にはそれがわからない。全部を欲しがる。 「おやじ なめるだけ。ちっとなめるだけだから…な?」 捨てられた子犬のように下から見上げられて、くいくいと着物の裾を伸ばされる。 酒呑は人間からすれば乱暴な大鬼だが、鬼の仲間には寛容だった。ましてや息子として側に置いている茨木には呆れるほど甘かった。 舐めるだけなら好きにさせるかと、(もっともそれだけで済むことはないのだけれど。)小さな口を太い指でこじ開けて、尖った犬歯をすりとなぞる。 「ふぁ…」 「噛まんように気ぃつけぇよ」 「あう」 酒呑の承諾に、茨木は困った顔を一転させてにゅっと嬉しそうに笑った。 「んう…ふっ…」 小さな手で雄元をこすり、口をあんぐり開けて先端をくわえ込む。 外れそうな顎の軋みを無視して、先から出てくる先走りを啜ってはさらに手の動きを荒くした。 幼い手が赤黒い肉棒の表面を往復する。浮き上がった血管につかえてくんと動きが鈍るが、血管の歪な凸凹をきゅんと握ってはその感触すらも楽しんでいた。 なまじ手つきが器用なせいで酒呑もその気になってしまう。 頭の撫でてやり、後ろにくくった髪をすかせば茨木の表情はひどく気持ちよさそうにゆるむ。 そこを掴んでぐいと逸物を喉の奥に押し込めば、不意のことでさすがに驚いたか犬歯に引きつれたがその程度の痛みで萎えるものではなかった。 「んぐうっ!」 「ちいさいのう。雁首も入らんで。これ、舌ぁ動かせ」 ぺしぺしと頬を叩けば言われたとおりにする姿が健気で可愛かった。ぬめぬめと濡れた舌が亀頭の先をねぶり、尖らせた先端を尿道口に抜き差しする。すえた匂いや青臭い味を直に感じ、ずちゅずちゅと粘る音が脳髄に響いては茨木の体が熱く火照る。 「ふっ… はっ んんっ…」 「ああ、ええのう。ここらで一発出しとくか」 言うが早いか襟首を掴んで弛緩した顔をあげさせ、開いた口や朱く染まった頬にびゅると生臭い精汁を打ち付けた。 「あっ、おやじのしるぅ」 飲むつもりが顔にかけられ、茨木は残念そうにそれでも口をひろげて舌を出した。額からどろりと垂れた白濁が片目を隠す。よく見えない。 何度目かにぴしゃりと飛んだものがうまく口に入り、茨木は嬉しそうに笑ってそれをもらった。 「んっ、んっ…」 涙目で口の中いっぱいに広がった精を味わい、汁にまみれた体を震わせながら嚥下する様子は、とても世間に恐れられる餓鬼には見えない。そこにいるのは必死になって親の愛情を欲しがるちのみごだ。 こういうことをすることに、雄同士であることや親子の契りを交わした仲だという躊躇も一応あるが、本当に雀の涙ほどで、元来好色な酒呑は茨木の歪んだ求愛行動をそのままにしていた。 出会い頭にいい面構えだと褒めたとおり、酒呑は茨木の顔が好きだった。肉を斬り、血を求め、肌が赤黒く染まっても澄んだ色の鋭い眼光が好きだった。 その眼は今うっとりと酒呑の隆起した男根に見とれている。ぺろと、朱い舌が唇を舐めて残り汁を味わう。白い牙が見えて、子が欲望に忠実な鬼だということを知らしめる。醸し出される色香は親の淫蕩の影響か子の天性の気質か、幼子の姿をしているくせにひどく淫靡に映る。 茨木は殺した人間の血を舐めるように指についた精汁を吸いながら、名残惜しげに眼前の雄元を触っている。 「うめぇか」 「ああ、うめぇ…うめぇよぉ」 「そんなもんあんまり喰ったら腹ぁ下すで」 「下さねぇよぉ。おやじの種だ。もっと欲しい……おやじぃ」 「おめぇの豆みてぇな躰じゃわしの魔羅は入んねぇで」 「そんなん知らねぇ。おやじの熱ぃ肉も苦ぇ汁ももっと欲しい。なぁ…ぜんぶくれよぉ」 茨木は酒呑にぎゅうと抱きついて、胸にぐりぐりと顔を埋めた。茨木の腹に魔羅が擦られる。 おやじおやじと呼ぶ声はだんだんと涙声になってくる。この子は一度強請ったらどうなっても他の言うことを聞かない。 「おやじだってまだギンギンに立ってんじゃねぇか〜、それオレん中にくれよぉ」 「…しゃーねーなぁ」 折れた酒呑はまんざらでもなく、茨木の躰をひょいと持ち上げた。尻を向けさせて薄着をぺろんとめくりあげる。 持っていたどぶろくを傾けてびちゃりだらだらと桃尻にかければ、茨木の躰はびくんとはね上がった。 「ひえっ、冷てぇ」 「お前といつか上の口で酒を飲み交わしたいのう。鬼童丸は付き合いが悪うてさびしいでよ」 「はっ…あっ、ぁ…」 震える双丘に自分の指をあてがう。指一本だけでも太刀の柄くらいある。人間の生娘ならこれで裂けてろくすぽ使い物にならないが、「おめぇは鬼だしな。まあ大丈夫じゃろ」 ひとりごちると、酒呑は太い指をその奥へズクンと突き入れた。 「ひぃっ…!」 濡れているとはいえ太い指を固く閉じた小さな穴に埋め込むのは至難だった。 「あっ、あっあっ」 茨木もあまりの衝撃にぶるぶると全身に力が入る。ひいひい鳴いては歯を食いしばり、菊門はきゅうと凝縮して酒呑を締め付ける。 「茨木ぃ、これじゃあ無理じゃて」 酒呑が言うと、茨木は必死に首を振って、引き抜きかけた指をきゅうんと引き止めた。 「む…り…じゃ、ねぇっ…待…ちから抜っからぁっ」 はふはふと乱れた呼吸を整えようとする。全身の痙攣は徐々に収まったが、後ろの締めつけは断続的に続く。 「んううっ…ぁあっ…おやじのゆびぃぃ ふてぇぇ」 うつぶせに尻を突き出した体勢で、茨木は顔を伏せてわき上がる甘い衝動に耐えていた。 「ひ…んっ」 未熟な性器はそれでもひくひくと立ち上がり、先端からぷくりと透明な蜜が出てきては地面に垂れ落ちる。 「ほんにお前はうまそうに喰うのう」 「あふ…ふあぁ…おやじぃぃっ」 「どれ、もう少しほぐしてやるかぇ」 酒呑は茨木の開いたままの口にも指を突っ込んだ。 「あぐっ!…んんうぅっ」 「ほれ、ここにツバを出すんじゃよ」 指の腹で舌を撫でると、茨木は言われるままちゅくちゅくと舌を動かしてじわりと唾液を湧かした。 「ふあ……」 十分に濡れた指を口内から引き抜く。とろと粘る唾液が茨木の唇から酒呑の爪へ糸を引いた。 その手を下へ下へ、茨木の双丘の奥へあてがった。 先ほどまでの指をずるりと引き抜いて、 「んぁあっ…」 唾液にまみれた方を酒にとろけた秘所へずぷと押し込んだ。 「――あひいっ!」 突き上げられる衝撃に茨木の躰が前へつんのめる。口の端から唾液が溢れて顎まで垂れた。 「おお、さっきよりやわこおなっとるのう」 先ほどと同じ太さのものが、けれど滑りがよくなっているために無遠慮に抜き差しされる。内壁への摩擦で生まれた熱が全身に飛び火していく。 「あっあ…ゆびっ…おくに、ああっ」 「ほれ、2本に増やすでな。そのまま力抜いとけよ」 「ひいっ…う ああ あうっ」 ぞくぞくと背筋を走る痺れに華奢な躰を弓なりにしならせては、苦しいのと気持ち悦いのがないまぜになってわけもわからず茨木は啼いた。潤滑油に使った酒に酔ったか頭はすでに霞がかっている。 はっはっと呼吸は間隔が短くなり、ハの字にした眉の下できゅうと閉じた目からぼろぼろと涙がこぼれた。 「はひっ、あひぃ…」 「ほんに茨木はかわええのう。そこらの京女よりよっぽどかわええで」 「ぁっ おやじ いい、きもちぃよぉ」 「いっそココ引っこ抜いて女にしてやるかええ」 そう言うと、酒呑は茨木の前に手を伸ばして小さな陰茎をきゅっと包んだ。 「ふあっ…!」 「わしはお前なら息子でも娘でもどっちでもええでな」 ゆるく扱いてやると、先走りを漏らして濡れそぼった陰茎はいっそうビクビクと血をのぼらせた。 「あっ、あっあっ おやじ、っ、ああっ」 茨木は目を見開くが視界はぼやけて何も見えないし、何を見ても認識できない。 酒呑にしがみつきたくて仕方がないのに、力の入らない無防備な躰は与えられる快感を受け入れるだけで精一杯だ。 「おやひ、おやひぃっ」 茨木はひたすら酒呑を呼び続けた。酒呑も応えるように両手の動きに変化をつける。 爪で亀頭を軽く掻いたり、穴の中 敏感な箇所を指の腹で擦ってやれば、茨木はひときわ甲高い声をあげて絶頂に達した。 「あぁぁぁあぁっ…!」 赤く色づいた尿道から白い汁がびゅくびゅくと飛ぶ。躰は勝手に痙攣して、酒呑の指をきゅんきゅん締め付けた。 「はぁっ、はぁっ……ひゅぅ……」 射精しきると、食いしばっていた表情は途端に弛緩して、頭ごとがくりと倒れた。口からはだらりと涎が垂れて地面にじわりと染みをつくる。 「あー…」 「満足かえ」 酒呑は身をかがめて、茨木の顔をのぞき込んだ。耳元で喋ると、虚ろだった茨木の目も酒呑を見る。 「おや ぃ…」 「とんと腰も立たんじゃろ。今日はもう大人しく寝とけ」 酒呑が茨木の頭を優しく撫でる。けれど、茨木は途端に顔をしかめて今にも泣きそうになった。 「……ゃゃ」 「ん?」 手で口元のよだれを拭いてやっていると、茨木は自由にならない四肢の代わりに顔を振って酒呑の指に噛みついた。 がじがじと指に歯を立てられ、鋭い牙が皮に食い込んでじわじわ血が出てくる。さすがの酒呑も少し痛かった。 「こりゃ、茨木。いでぇいでぇ」 「やだ…おいてくな…」 「んん?」 酒呑が茨木の顔をのぞき込む。気が済んだか茨木は指から口を離した。 時折えづきながら、自分でもわけがわかってない様子でぐちゃぐちゃな感情を口走る。 「おいてくな。どこにもいくな。そばにいて、ずっと、オレのこと要るって 言っ… 捨てんなぁ」 ――生まれた村への道のりや、産みの親の顔をもう思い出せない。 育ての親は自分が鬼だと悟った途端「近づくな」と叫んだ。髪結いの頭を斬り刻みながら茨木は滑稽な気分になって楽しく笑っていたが、心のどこかでは小さく泣いていた。 人の子として生まれてきたばっかりに、鬼の子はさびしさを覚えてしまった。 いっそ最初から鬼として生きていたらどんなに楽だったか。最初から酒呑童子の子として生まれてきたらどんなに幸せだったか。 同じ鬼で、血の繋がった親子ならば、『また捨てられる』なんて不安に感じることもないのだろう。 いつからか、胸の中にぽっかり黒い穴が開いていて、それは何かを欲しい欲しいと暴れて泣くのだ。 けれどそれが何かはわからない。愛し方愛され方を知らない幼子は見よう見まねでぬくもりを求める。 茨木は喉を震わせて何度も何度も懇願した。 「おやじの種、腹ン中にほしいんだよぉ」 種をのめば腹の中で芽が生えて本当の子どもになれる気がした。 「そんでも、やんねぇっつーなら、いっそおやじ殺してその肉喰ってやる〜」 とうとう物騒なことを言い出す茨木に対して、目を丸くした酒呑は次にがははと豪快に笑った。 「老いた肉など不味ぃばっかだで。喰うならおめぇくらいが上等じゃ。引き締まって味も濃いわ」 そう言って酒呑が茨木の尻っぺたをぱん!と叩いた。激痛に茨木がぎゃんと鳴く。 「いてぇ、おやじ、いてぇっ」 「こんくらいで痛がってりゃ世話ないのう。これからもっと痛ぁなるぞ」 「…え、」 「やめとくか?」 酒呑の問いかけに、茨木が頷くはずもなく、「……め、ねぇ」 じんじんと赤くなった尻をくっと持ち上げて、まだ痺れの残る手を後ろに回す。熱い吐息が口から漏れる。 奥の穴に指を触れさせ、くぃ と左右に拡げて見せた。弄られ蕩けた菊の花が期待にひくんと揺れた。 「ここに、おやじのでっけぇのくれるまで、オレァやめねぇ」 さすがに羞恥を感じるか耳まで赤くなり、眉を八の字にさせている。けれど眼は鋭く酒呑を睨みつける。 ここまでくると酒呑も腹をくくるしかない。 「やれやれ、とんだ淫乱息子じゃのう!」 がははと愉快に笑いながら、茨木の躰をグイと自分の方へ引き寄せる。 「あっ…」 示された秘所に熱く硬いものを押しつけ、そのまま乱暴に圧をかける。 「あっ、あっ――うあああっ!!」 いきり立つ男根が小さくすぼまった穴にめりめり食い込んでいく。茨木は目を見開いて背を反らせた。 質量もそうだが熱が想像を超えて激しい。灼けた火箸の方がまだぬるい。脈動する血管の中には岩漿が流れているのではないか。熱い、熱い。 火傷した心臓がバクバクと暴れる。息を整えて体の具合を抑えたいのに、喉が詰まって呼吸することもままならない。 「ひぅッ……う、あ……ぁ……あぢぃ、あぢぃよぉぉ」 苦しがる茨木の手が地面を引っ掻く。爪がじゃりじゃりと土を喰った。 受けきれない衝撃が体内をおかしくさせる。吐き気すらこみ上げてきた。食いしばった歯から漏れる唾液には胃液が混ざり、じわりと泡立つ。 「痛ぇだけならやらんでええゆうに、ほんにお前は強情じゃ」 呼吸もままならない茨木の背中をさすってやる。 酒呑は極力茨木の体を壊さぬよう慎重に動いていたが、苦しいのを助長させているような気もしたので、亀頭をはめ込んだところからぐっと動きを増させた。 「ひぎッ!」 「ほれ、一番太いんが入ったでな。幾分楽じゃろ」 「ん゛ーっ……はあぅ、う」 確かに雁首を通した入り口が裂ける心配は無くなったが、内壁の肉をごりごりと押し上げる感覚はどんどん奥へ進んでいく。太さもあれば長さもある巨根は茨木の狭い中を否応なしに限界まで拡げた。 事前に濡らしていた分の粘液が擦れてずちゅずちゅと卑猥な水音を起こす。 体の中から音を聞いて茨木の頬はいっそう上気し、表情は苦痛と快楽の狭間で歪んだ。 「あっ! はぁあっ ああっ」 ごりゅと亀頭の先が前立腺を撫でる。直接の刺激に茨木の体はびくびく震えた。痛いのに、そこへの刺激がもっと欲しくて腰が勝手に揺れては先をねだった。 「おやひっ、ひもちぃっ…、んっんっ、あっ…そこがええぇ」 「気持ちええならええけど、穴ぁ締めたら動けん。ちぃと力抜け」 酒呑は茨木の興奮をなだめようと前を触って根元から汁を搾った。 「んああっ」 茨木が甲高い声をあげて腰を抜かす。べたっと地面に擦りつけた頬に土がつくが、そんなものは気にならなかった。 ひゅうっと喉の奥から鳴き声が出た。熱い体に外気が冷たい。下半身を支配する熱が体を焼いている。 「あ、ひぃっ…おや、ひ、がっ ぐりぐり、オレん中ぁ あっ」 閉じた目尻から生理的な涙がぼろぼろ出てくる。開いたままの口は涎を流し続け、呼気はますます荒くなるばかりだ。 「あんま張らんようにしとるんじゃから、そんなめんこい声出すなて」 わけもわからず感情ありのままを口走る茨木に、酒呑は苦笑するしかない。一夜限りの女であれば壊れようが何をしようが構わないが、茨木は大切な息子だ。大事に育てたい。これからも、ずっと。 幹を半分ほど入れたところで、そろそろ限度だろうと動きを止める。どくりどくりと脈打つものはどちらのものか、どちらもか。 「あっ、ふぁあっ、んうう…… やじ、おやじ」 茨木が酒呑を呼び、精一杯顔を後ろへ向けて目線を合わせた。 「お…おやじは、きもちぃか…?」 泣きながらの茨木の問いに、酒呑はにっこりと笑って大きく頷いた。 「きもちええで」 「…オレ、うめぇ か? おやじ、うま…?」 「ああ、茨木。うめえな。お前は最高じゃ」 言いながら、幹を軽くじゅぽじゅぽ出し入れすれば、茨木の小さな体は勝手にビクビクはねた。 「ふあぁっ!…ほ ほんとか…?」 「本当じゃ」 「なら、もお、ぉ…おいてくなよ、すてんなよ…っ!?」 「阿呆、置いてかんえ。お前が独り立ちするならまだしも、なんでこんなかわいい息子を捨てにゃならん」 えぐえぐと泣きじゃくる茨木に、酒呑は至極優しく頭を撫でた。 「ずっとわしのそばにおれ、茨木。安心せい、わしもずっとお前のそばにおるでな」 「……ぅん」 酒呑の言葉を信じた茨木は、やっとで涙を止めた。 未だ生理的苦痛に必死で耐えて、性的な感覚に震えていたが、痛みよりも快感よりも、行為そのものが至福だった。生まれてからずっと空洞だった心の穴に酒呑童子の存在が満ちる。 ほぅ、と息を吐くと、それはそれは幸せに微笑んだ。 「…すきだ、おやじ だいすきだ」 とろけるような表情と甘く切ない声色に、酒呑は思わず茨木を抱きしめたくなった。力一杯。けれどそうすれば茨木の小さな体は潰れてしまうかもしれないので、酒呑は結合部の勢いを増すことで衝動を昇華した。 ずちゅ ぐちゅ ぢゅ ずっ 「わしも大好きじゃよ〜、茨木!」 「んあっ あっ! おやっ おやじぃ」 「そろそろ出すで、腹壊さんよぉになぁ」 「んうっ おやじのたねぇぇっ、はやく、いっぱいほしぃ!」 「よしよし、今やるでな」 酒呑の一物が茨木の奥を突き、さらにその奥へ、勢いよく精を射出する。 びゅる!びゅっ!どくっどくっどくっ どくん 「ぁああ――……!」 受け入れる茨木の体はぶるぶると大きく震え、痺れきった腰は勝手に痙攣した。 直腸に粘液を注がれる異常な感覚。けれどそれが欲しくて欲しくてたまらないものだった。ひくひくと、茨木もつられて小さく射精する。幸福感に絞め殺される。 「はっ……ひっ……ああぁ……」 大量の精汁を呑み込みながら、自身の性器からも少量を飛ばす。 口元に寄せた指をはみながら絶頂の快感を味わうと、赤子に戻って母の乳を吸っているような気分だった。 酒呑は茨木のことを息子でも娘でも構わないと言ったが、茨木も、酒呑が父親でも母親でもどちらでもよかった。ずっと共にいられるなら何だっていい。 おやじ おやじと、小さな声で何度も酒呑を呼びながら、茨木の意識は徐々に薄くなった。 +++ あったかい大きな腕に揺り動かされて、茨木は重い瞼をゆっくりと開いた。 「おおい、茨木、生きとるかええ?」 眼前にいたのは先ほどと変わらぬ酒呑だが、背景が異なる。ぼんやりしたまま周りを見渡すと、見知った沼地だった。 それにしても、 「う゛ー…」 頭が鈍い。全身が痺れてうまく動かせないし、腹もだるいし、何よりも尻が痛い。 「具合はどうじゃ。水浴びできるかえ?」 茨木は酒呑の胸板に顔を寄せながら、ふるふると頭を振った。 「……動けねぇ」 「洗ったろうか」 「いい。嫌だ」 茨木は頭を振り続ける。先ほどまでの積極的な様子とは一変して、まるで拗ねて駄々をこねているようになっている。酒呑はいつも通り楽しそうに笑った。 「なんじゃすっかり大人しゅうなったのう」 「……」 茨木は額を酒呑の心臓あたりにぐりぐりと押しつける。角が刺さって痛いが、酒呑は茨木の気が済むまでそのままにした。小さな背中を大きな手でさすってやる。 茨木は普段なら絶対にこんな姿を見せない。他の鬼の前での茨木は無愛想で口も悪く、村や町を襲った後の宴会にもほとんど参加せずに、一人遊びばかりしている。酒呑の元に来てからずいぶん経つが、あまり馴染んでないように思う。茨木が酒呑以外に懐いているのを見たことがない。 対して酒呑は大将であり鬼一族の中心にいる。鬼たちは皆酒呑を慕いついてくるし、酒呑もすべての鬼を自分の息子のように可愛がっている。自分で引き込んだ茨木と実の息子の鬼童丸は少し特別だが、おおむね博愛主義だ。 口には出さなくても、そういう些細な溝すらさびしいのかもしれない。どうすればそのさみしさが埋まるかもわからず。即物的なものはいくらでも求めるくせに、本当に欲しいものは言葉にできない。 まったくもって手のかかる、目に入れても痛くない 可愛いせがれだ。 「薬塗ったるか」 茨木の押しが弱まったところで、酒呑は茨木を持ち上げてすとんと地面に下ろした。 まだうまく立てない茨木は両手をついてへたりこむ。 「ほれ、もっぺん尻出せ」 「……」 持っていた薬を探し当てながら、ぺんぺんと尻っぺたを叩いて急かすが、茨木は逆に服の裾を引っぱって臀部を隠した。 「おかしいやつじゃ、今さら恥ずかしがっとる」 無言の抗議に構わず、酒呑がむんずと茨木の腰を掴んで自分の元にぐいと引き寄せる。 「うわっ…おやじ、いいって!自分でやる!」 「前に保津の河童から万能薬もらったでな、使たろ。遠慮せんでええ」 強引に着物を剥ぐと小ぶりな桃尻が現れた。改めて見ると、こんな小さなものによく自分の一物が収まったものだと感心する。 割れ目をひらいて穴を見れば、そこは赤く腫れぼっていて、痛々しく血が滲んでいた。 「ああ、切れとる。こりゃいかん」 酒呑は手に持った膏薬をたっぷりと掬い上げると、茨木の尻にべたりと塗りつけた。 「ィ……ッ」 「痛いかえ?少ししみるかのう」 酒呑が尋ねると、茨木は四つん這いのままぶんぶんと首を振る。 「こんなん、へーきだっ…すぐ治る」 「ほーかほーか」 酒呑は茨木の傷を拡げないよう、優しく丹念に軟膏を擦り込んでいく。 入り口に少し指を進めて動かせば、先ほど茨木の中に注いだ汁と薬が混ざり合ってぐちゅぐちゅと卑猥な音を立てた。 「ふ……ぅ……ぁ……」 欲情がぶり返したか、茨木の体がふるりと震えた。吐き出す息が湿る。 傷のせいでさすがにもう強請らないが、躰の奥からこみ上げる熱をうまく昇華できずにいる姿は、見ていて気の毒だ。 雄の鬼なのだから、本来なら主導権を握る立場にある。今から受け入れることばかりに慣れてしまったら将来が心配になる。 「お前もおなごの味を教えてやらんとのう。どれ、京からええの5,6さらってくるか。なんぞ好みはあるかぇぇ」 それを聞いた茨木は、顔を後ろに向けてじとりと酒呑を見上げた。 「……女なぞいらん」 「そう言うな、いっぺん抱いてみぃ。アレはたまらん」 上機嫌に笑う酒呑に対して茨木はむうと不機嫌になって眉間に皺を寄せた。 「お前にもせっかくええ太刀があるやで、鞘に入れにゃあ」 「そんなら、おやじに入れる」 「阿呆、物騒言うでねぇ」 冗談でも笑えないが、どうやら茨木は本気のようだ。 寄せられた眉はハの字に下がり、切なげな目でじっと酒呑を見る。 「オレは……おやじしかいらん。おやじだけでええ」 「……はっは!」 酒呑は苦笑しつつ、茨木の頭をくしゃくしゃと撫で回した。 「わしもえらい好かれたもんじゃのう」 茨木の酒呑に対する思慕は、まるで卵から孵ったひなが最初に見たものを親と決めて慕うようなものだ。盲目的で、だからこそ半永久的に根付いて残る。 嬉しさ半分、複雑さも混ざる。 「お前に女はまだ早いか。まあ、あと100年くらいはええわな。――けどなぁ、茨木。気が向いたらでええから、他の鬼とも馴染んどくれ。わしはお前や、鬼童丸、他の鬼らと皆で楽しく酒盛りをしたいんじゃから」 茨木の頭を酒呑の手の平が撫でていく。柔らかい感触に睡魔を誘われながら、茨木はとろりと目を閉じた。 「……おやじが、いうなら、なるべくそうする」 「ん、ええこやな〜」 薬を塗り終えて、めくった着物を元に戻すと、酒呑は茨木をひょいと抱え上げて、もう一度自分の胸元に寄せてあやしだした。 「もっぺん寝れ」 「ん〜…」 茨木も酒呑の胸にすり…と顔を寄せると、とろとろとまどろみに頭を浸からせる。 酒呑は茨木の背をぽんぽんと叩きながら、人里で聞いた鬼遊びを子守唄代わりにする。 坊さん 坊さん 何処行くや わたしは丹波へ 鬼狩りに わたしも一緒に 連れしゃんせ お前が来ると 邪魔になる この糞坊主 大間抜け うしろの正面 だァれ 「おやじ……いっぺん聞きたかったんだけどよぉ」 「なんじゃ」 「おやじの言う鬼の世界ってどんなんだ?人間を皆殺しにして、他の妖怪を皆殺しにして、オレたちだけの世界をつくんのか?」 「そうじゃのう〜…あんま考えたことないでなぁ」 酒呑は茨木をあやす手を止めて、ん〜と思案したが、それもまたすぐに止んだ。もともと酒呑は物事を深く考えない。 「今とどだい変わらんかのう。わしら鬼が楽しく暮らせたらそれでええ。近頃は人間も知恵をつけて鬼退治なんぞやる輩もおるが、わしは人間が嫌いじゃないでの、人間を皆殺しにしようとは思わん。他の妖怪とも、仲良ぉできるならすればええ」 「そーか」 「そうじゃ」 「ふぅん…」 酒呑の理想は茨木の想像とずいぶん違ったが、彼が総大将になる世界ならば皆が好き勝手する娯楽の世だろうと思った。群雄割拠の火種は尽きないが、酒呑童子はそれらを一掃する力を持っている。何も問題はない。 茨木はまた目を閉じる。どのような世界だとしても、彼の隣に自分がいるならば、酒呑の隣で生きられるなら、それでいい。 暗闇の中ちゃぷちゃぷと沼の浅瀬から水音がわく。 「ああ、そうじゃ、あれがしたい」 「アレ…?」 「人間が話しとった、理想郷にあるって酒の泉じゃ。いっぺんやってみたいのう」 酒呑は口を開けば酒か女の話しかしない。酒に強くない茨木は内心辟易した。 「この沼の水を全部抜いて、古今東西の酒を混ぜ入れにゃ、樽はいくつ要るかのう。50かー100かー」 「……オレは血がいい」 「血はお前、そこらへんの動物しぼれば出るじゃろ」 「酒だって人間おそえばいくらでも出てくる」 「酒の泉っちゅーのが浪漫じゃ」 「血の池地獄も、ろまんだ…」 しょうもないことで譲らない2人だったが、やがて酒呑がひらめきを思いつく。 「じゃあこうじゃ。酒の沼と肉を吊した木で酒池肉林にすればええ。肉なら血も出るわ」 「ん……しゃーねぇなぁ。それでいぃ…」 妥協点に茨木も納得したらしい。だが言い終わるか終わらないかのところで、茨木はすうと寝入った。 (おやじの右には ずっとオレがいるんじゃ。なぁ、おやじ…) その言葉が声に出たかも、酒呑が笑って何と答えたかも、茨木にはわからなかった。 『坊さん 坊さん 何処行くや』 夢の中、先ほどの鬼遊び唄が相応な子供の声で繰り返される。 『わたしも一緒に 連れしゃんせ』 まどろみの中で、茨木は 坊主の後ろにいた者は誰で、それから何処へ行ったのかが気になった。 『うしろの正面 だァれ?』 +++ 「あ――……」 口の中に赤黒い血の味が広がる。自分の血の味はとても不味い。 茨木童子の目の前には酒呑童子が倒れている。その向こうにはよくわからない者たちがいる。 自分がなぜ血だらけなのかも、酒呑がどうして倒れているのかも、鬼たちがよくわからない者たちに従いはじめたことも、今の茨木の理解できる範疇ではなかった。 まるで屍肉の塊のようになった大切なひとがもう一度笑ってはくれないものかと、そればかり考えていた。 『茨木童子』 女の声がした。綺麗な優しい声色はまるであどけない少女のようでもあった。 『お前はどのような妖怪じゃ?』 純粋に尋ねられて、茨木は自分が人ではなく妖怪であることを思い出した。けれど何の妖怪であったかがわからない。 ただ自分の折れた膝元にじわりと伝わる血溜まりがまるで自分を慰めてくれているようで酷く安心した。 ほら、やっぱり、血の池の方がいいじゃないか。 「おれは ちをみるのがすきだ」 見るのも、飲むのも、浴びるのも好きだ。好きだからその血はおいしい。 「きりきざむのが すきだ」 その肉は斬りきざみやすい。だいすきだ。もっと血がほしい。血がでる肉がもっとほしい。 目の前にいるのは大切なひとで、けれどもう動かないし話さないし笑ってくれない。それならば流れる血も、色褪せた肉も、目も鼻も耳も口も牙も角も 自分の中に入れてもいいだろう。息子だと言ってくれたじゃないか。 墓の中で横たわり腐っていくくらいなら自分の中で根を生やしていつまでもそばにいてほしい。 ざくざくと大きな肉を小さくして、そのひとかけらを自分の顔にぐいぐいとがんばって埋め込んでいたら、どこからか彼の笑い声が聞こえてきた。 『お前が右におるならわしは安心して昼間っから酒が呑めるのう』 「――……あああ」 そうだ 思い出した。オレは鬼の子だった。酒呑みの大鬼の子どもだった。 ああ、ああと悲しいと嬉しいがない交ぜになった声をあげながら、鬼子はいつまでも血の味を肉の感触を楽しんで嗤っていた。 |