寝顔をのぞく軍人

これは、私が20歳のころにまだ術科学校の学生だった頃、私の同期の体験話です。

そのとき私達学生が生活に使用していた石造りの隊舎がありました。
それは旧海軍から使われていたもので、老朽の激しい建物でした。
私達学生はその中にある3部屋を27名で使用していました。

ある日、いつものように朝を迎え、体操服に着替えているとある同期が青冷めた顔
でいるのです。

「昨日の夜、軍服を着た男が俺の顔をのぞいていった・・・。」
最初は何のことを言っているのかよくわからなかったのですが、その日に同じ部屋
の同期が同じ体験を全員していたのです。

しかも一人の同期は、「皆が寝静まっている時に白い煙のようなものが出てきて寒
気がした。
すると、廊下からブーツで歩く音がしてきたんだ。だんだん近づいてきて、俺達の部屋
で立ち止まって、しばらくすると部屋の中に入ってきたんだ。最初は奥の奴のところへ
行って、何かじっと見ていたみたいだった。しばらくすると次の奴のところへ、一人ずつ
順番に見ていた。よく聞いてみると、その軍人さんは何か喋っていたみたいだったので
耳を澄ましてみると、『お前か?お前か?』と小さな声で独り言をしていた。
いよいよ俺のところへ来た時、金縛りにあったんだ。目も開けられず、じっと見られてい
る感じだった。しばらくすると、今度は軍人の顔が俺の顔スレスレまで近づけてきた。
そして、しばらくして一言

『お前か!!』

その瞬間、気絶したよ(笑)」と、笑えないような笑い話となってしまった。
のちに教官から聞いてみると、その部屋は毎年その時期に出るで、伝統だそうです^^;
ただ、その隊舎はよく自殺者が出るそうで、数年前にも彼女に振られた隊員が、ガソリン
を頭からかぶり、自分に火をつけて屋上から飛び降りたそうです。
しかも、飛び降りた時に電線にひっかかってしまい、息のあるまま病院へ直行。
そのままもだえながら息絶えたそうな・・・。

その隊舎は今も学生の生活の場として使われているそうです。

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