宇高連絡船岸壁


 

<宇高連絡船 岸壁>


列車桟橋 乗船口 連絡通路

 

●かつての旅行記録より抜粋(1)

 列車は単線を走る。途中から線路が二股に別れた。
『向こうに行くと橋か・・・・』
『私に橋を渡る機会はあるだろうか。その時どんな気持ちだろうか・・・・・。』
 心の片隅で感傷に浸りつつ、頭は宇野駅での行動計画を起てていた。宇野まであと10分、最終チェック終了。あと5分。ホーム側のドアの前に移動。到着まであと30秒。既に駅の構内。5・4・3・2・1・走れ!

 ドアが開いた途端、脱兎のごとく駆け出す私。乗船口に最も近いポジションにいたので速い。しかし元来足が遅い。結局乗り込む前に5人抜かれた。船に飛び込んだ私は友人に聞こえるように”後部デッキだ”と叫びつつ、デッキに向かって走る。後部デッキ到着。久し振りの競争であった。荷物を足元に置き、手すりにもたれてしばしの休息の後、煙草に火をつける。吸うにつれて熱い血が冷えていく。ふと辺りを見て仰天した。人、人、人。そのうちに太い出航の汽笛。
 巨体を震わせながら緩やかに、しかし確実に動きだす船。その時になって私がデッキに確保した場所は桟橋側でないことに気がついた。でも私は気にも留めなかった。私にはテープを投げるべき相手はいなかった…桟橋にも、そしてどこにも!

●かつての旅行記録より抜粋(2)
 『去年、連絡船に乗ったなあ。』 そんなことを思い出し、懐かしさに駆られて駅へ行ってみた。駅の構内の連絡船乗り換え通路は立ち入り禁止だった。
『この通路で競争したんだなあ。』  それにしても活気のない寂しい駅になった。朽ちるに任されている乗船口、貨車積み込み線、岸壁。私は廃線に腹ばいになって犬の視線で写真を撮る。ファインダーごしに見るそれらの被写体に栄枯盛衰を感じてしまった。
『盛者必衰。物悲しい・・・・・。』



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