北 浜 駅

〜 オホーツクに一番近い駅 〜



<JR釧網線 北浜駅>


●かつての旅行記録より抜粋

 本線といいながら釧網線は本数が少ない。網走から知床へ向かおうと思った私は時刻表を見て驚いてしまった。朝一番を逃せばその次は10時までないのだ。バスで行くにしても網走市街からここまでの区間で460円だったから、かなりの出費を強いられるであろう。結局、朝一番の列車で南下することになってしまった。

 寒さでピンと張り詰めた空気の中を北浜駅に向かう。オホーツクに面した釧網線の北浜駅はマッチ箱のような建物だ。網走番外地という映画を撮るときにこの駅舎を網走駅として使ったのだ、寂しさを狙うために。 現在駅舎は無人で舎内を改装して喫茶店を兼ねている。建物の脇にはここの最後の駅長が作ったオホーツクに一番近い駅という碑が立っている。

 ホームから線路に降りほんの15mで海岸だ。九州、開聞の近くでふらっと立ち寄った西大山駅で感じたような開放的な明るさではなく、どこか翳りのある風景だった。 建物の中は廃止された幸福駅のようにいたる所に旅人の記念品が張ってあった。青切符、期限切れの定期、何かの会員券などが壁にびっしりと。そんな中で小さな写真が一枚目に留まった。普通なら見逃してしまうような証明写真なのだが、それに書かれた文面が私の目を止めたのだ。

『さようなら。私は新しい生活をさがします。』

<JR釧網線 快速>


 たった1両の快速列車は混雑していた。本州と違う北海道の感覚に慣れてきていたので列車の二重窓、白銀の中に延びる鈍い光を放つ2本の鋼鉄を見ても何とも思わなかった。列車は斜里に止まり、人に押し出されるようにして駅を出た。知床半島の付根にいる! 何故かこのときだけ北海道、斜里にいるという実感があった。

 駅前から乗ったバスは頻繁に止まりながら宇登呂を目指す。南*線とか○○宅前とか本土の私には全く馴染みのない名称のバス停で留まる。斜里の郊外に出ると流石に留まる回数も少なくなってきた。所々に交通遮断機がある凍った道路を斜里バスが飛ばしていく。



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