義務教育費国庫負担制度とは?
義務教育費国庫負担制度は、憲法(26条)・教育基本法に定められた国民の教育を受ける権利に対する、国としての財政責任を明らかにした制度です。
義務教育費国庫負担法とは?
第1条(目的)「この法律は、義務教育について、義務教育無償の原則にのっとり、国民のすべてに対しその妥当な規模と内容とを保障するため、国が必要な経費を負担することにより、教育の機会均等とその水準の維持向上を図ることを目的とする」
義務教育国庫負担法の概要 「実員・実額の1/3を国が負担」
公立義務教育諸学校の教職員の給与費について、都道府県が負担した経費(実額)の1/3を国が負担。
(国庫負担の対象)
対象学校:公立の小・中・中等教育学校前期課程、盲・聾・養護学校の小・中学部
※養護学校小・中学部については、「公立養護学校整備特別措置法」の規定による
(対象職種)
校長・教頭・教諭・講師(非常勤含む)、養護教諭、事務職員、栄養職員(約70万人)
(対象経費)
給与(給料、諸手当)、退職手当、児童手当
(経費の概算)
2兆8000億円
三位一体の改革とは?
「三位一体」とは、三つの要素が互いに結びついていて、本質においてはひとつであることです。小泉内閣は@国庫補助負担金の 廃止・縮減A地方への税源委譲B地方交付税の縮小、の三つを一体でおこなうととしています。@とかかわって、義務教育費国庫 負担金の「廃止・縮減」が重点にされています。そのかわりに、Aで税源委譲するとしていますが、「徹底的な効率化」や「8割程度」 がいわれており、負担金と同じ額は保障されません。加えて、農山村の自治体では、Aの税源委譲だけでは、到底及ばず、地方交 付税で補填する必要がありますが、Bで縮小を目指していますから、その差額はすべて地方の負担となります。そうなると、地方に は増税も含めた住民負担増しか、道は残されていません。
「骨太の方針2003」は、「三位一体の改革」の具体化として、2006年度までに約20兆円の国庫補助・負担金のうち概ね4兆円 の廃止・縮減などに取り組むとして、@2004年度に定額化・交付金化などのための措置を講じる。A2006年度末までに全額の一 般財源化について検討する。B学校栄養職員・学校事務職員の給与に対する国の関与を見直す。C退職手当・児童手当の国庫負 担の取り扱いについて、2004年度予算編成までに結論を得る。D教員給与の一律優遇を見直す。
文部科学省は、定額化を具体化した「総額裁量制」の導入を計画していると報道されています。
国の負担金の総額を決めた上で、各県の裁量に、地方自治体に教職員数や給与の決定をゆだねてしまうことになります。そのこと は、地域ごとの教育水準の格差を生じさせ、公教育の公平性や水準の確保を掘り崩すことにつながります。そして、「非常勤・臨時 の教職員がますます増加する」「30都道府県まで広がった少人数学級の取り組みが後退させられる」「40人以上の学級がつくられ 、子どもたちの主体性が発揮しにくくなる」など、教育水準が低下することは明らかです。
総額裁量制とは?・・・・・・・教員給与引き下げ自由
報道によれば「国庫負担の対象を給与単価と教職員定数を掛け合わせた定額と市、額の算定については、地理的条件や都道府県の教員の年齢構成を考慮して、都道府県ごとに給与炭化を決定する年、教職員定数や給与などに設けられている現行の上限を撤廃することで、各都道府県が弾力的に教員を採用できるようにする」(読売)と説明しています。
しかし、限られた「定額」の枠内で都道府県が自主的に、教員定数や給与額を決定できるようになることは、給与の奔放を抑えて「優秀教員」の手当てを充実させることができるようになる小手や少人数学級を実施するために、正規職員を減らし臨時教員数を確保することで、いっそうの臨時教職員の増加を招くなど、教職員の分断化や教育条件整備と教員身分もあり方に矛盾を持ち込むものです。
また、少人数学級実施の責任をすべて地方にゆだねてしまうことで、国の責任による30人学級実施を後退させるものです。そして、都道府県ごとに算定される定額が現在の実額よりも低く押さえ込まれ、教育条件の低下につながる危険性もはらんでいます。
文部か楽章が「総額裁量性(仮称)」を導入することは、「根幹は守る」とは述べながらも、本質的には、義務教育費国庫負担金削減・一般財源化に手を貸し、教育の機会均等の原則を掘り崩すものです。
2004年4月 アピール
義務教育費国庫負担制度の堅持を求めるアピール
政府は、いわゆる「三位一体の改革」の一環として、義務教育費国庫負担制度の見直しをすすめ、2003年度に共済費の除外、2004年度に退職手当・児童手当の除外と「総額裁量制」の導入を実施し、2006年度までにその一般財源化について結論を出す方針を掲げています。
私たちは、義務教育費国庫負担制度は、子どもたちが日本のどの地域に住んでいようとも、平等に教育が受けられる条件を確立するために必要不可欠な制度であり、将来にわたり堅持されるべきものと考えており、その動向に重大な関心を寄せています。
義務教育費国庫負担法は、その目的を、「義務教育無償の原則にのっとり、国民のすべてに対しその妥当な規模と内容とを保障するために、国が必要な経費を負担することにより、教育の機会均等とその水準の維持向上とを図ること」(1条)と明記し、都道府県が負担する義務教育諸学校の教職員給与費の2分の1を国が負担することを定めています。この制度のもとで、自治体の財政格差にもかかわらず、教職員の待遇の適正が図られ、その定数が確保され、全国的に均等な学級編成が実施されてきました。2004年度に実施される「総額裁量制」は、国の「40人学級」基準を前提に支出される教職員給与費総額の範囲内で、給与や定数の決定を都道府県の裁量に委ねる制度です。そこでは、教育財政の地方自治が広がるとはいえ、国民の切実な要求である「30人学級」など少人数学級の全国的実施が見送られており、教職員の給与や定数、学級規模は自治体の財政力にますます左右され、地域格差が拡大することが懸念されます。
さらに、今後、義務教育費国庫負担制度が廃止され、一般財源化されるならば、それらの基幹的な教育条件が、自治体の財政力や方針に強く規定され、特に財政基盤の弱い自治体で困難が増大するなど、地域・自治体格差が一挙に拡大し、義務教育の機会均等が根底から崩される恐れがあります。すでに、教育費は長年にわたり抑制・削減されており、公教育のGDP(国内総生産)比は2001年度決算で4.80%であり、1981年度の5.76%より約1%、当年度だけでも約5兆円(文部科学省所管予算6.6兆円の76%)少なくなっています。国際比較でも公財政支出の学校教育費の対GDP比は、日本は3.5%(2000年)であり、OECD(経済協力開発機構)加盟国平均4.8%より約1%低く、30カ国中29位であるなど、日本の教育財政の地盤低下が目立ちます。(いずれも文部科学省調査統計による)
困難な財政事情とはいえ、日本の将来のあらゆる発展の基礎である教育、とりわけその中心である義務教育の財政基盤をこれ以上後退させず、その財源の確保・安定化に努めることは、政府の緊要な責務、課題であると考えます。
以上の理由により、私たちは、義務教育費国庫負担制度の一般財源化に反対し、それが将来とも堅持されることを強く求めます。
呼びかけ人 代表 三輪定宣(千葉大学名誉教授) 土屋基規(神戸大学教授) 浦野東洋一(東京大学名誉教授)