ZZRカスタムインプレッション
エンジン編

エンジンフルO/H(tuned by BabyFace)
 エンジン内部の清掃及び消耗品の交換、また各パーツを正確に組むことによって、エンジン本来のポテンシャルを発揮、または復活させるために行う。カスタムというよりはメンテナンスの色合いが濃い。主として走行距離が伸びた、もしくは経年数のあるバイクに有効な手段であるが、新車時においてもメーカー公差があるため(特にカワサキは:笑)有効である。



シリンダーヘッド部にあったキズ  ’97・6・14〜9・3、走行距離8,768km時において実施。私の場合、新車購入時の時からエンジンの調子がおかしかったので(始動性が悪い・アイドリング不安定など)、たまたま仕事が忙しかった折に点検を兼ねて腰上O/Hを依頼。
 しばらくしてBabyFaceから連絡があり、シリンダーヘッド部分に大きなキズがあり、またシリンダー内部も擦り減ってオイルライナーが無くなっている等の欠陥を発見したとのことで、できれば全部バラして状態を見た方がいい旨アドバイスを受けた。その時、このエンジンは「ハズレ」であったこと、そしてある程度の予算を明示した上で、イヤであればこのままフタをすること、このままであれば寿命は短いなどの説明を丁寧にしていただいた。私は既にコイツに愛着を持っていた為、使い捨てで乗り潰すことはしたくなかったので、しばし悩んだ末に発注。

 効果の方は、もともと整備手段であること、また同時にボアアップ・カム交換等を行っている為、O/H単体としては体感できていない。
 また、どうやら再組み付け時に失敗していたらしく(シムの不良)、始動性が悪い等のトラブルは解消されていなかった。これは’99・3・24〜5・23、走行距離17,445km時に腰上O/H(費用は全額BabyFaceが負担してくれた)にて対処し、現在は快調である。なお、フルO/H時にクランクバランス及びポートバリ取り、バルブシートカット等も行ったことも付け加えておく。

◎ここがグッド(^o^)
・エンジンを完調な状態にすることができる。
●ここがチョット(TT)
・予想外の不良個所を発見し、出費が膨らむことがあるかも。

コスワースピストン(77¢)
 イギリス・コスワースエンジニアリング社製鍛造ピストン。コスワースといえば、F1レースにおいてあまりにも有名なフォードコスワースDFVの、あのコスワースだ。素材はロールスロイス社がジェットエンジンに用いる、RR58と呼ばれる特殊アルミ合金であり、それを熱間フル鍛造という手間のかかる手法によって製作している。軽量高強度・高剛性・高精度と3拍子揃った、まさに世界No.1と呼ぶにふさわしいピストン。圧縮比12.0。



コスワースピストン  エンジンO/Hと同時に装着。シリンダー内にオイルライナーを新作するにあたって、ボアを拡大する必要があった為、オーバーピストンを組まざるをえなくなった。カワサキからはオーバーサイズはリリースされておらず、したがってワイセコかコスワースかという選択にせまられた。
 ワイセコにした場合、価格は安いがサイズが2mmオーバーとなり、エンジン耐久性のことを考えると不安があったので、1mmオーバーのコスワースを選択。コスワースだと、熱膨張を考慮してクリアランスを大きめに取る必要があるが、BabyFace独自のノウハウにより、1000分の6〜7mmとノーマルと変わらない数値で組み付けが行われており、雑誌に掲載されている程暖機に気を使うことはない。
 但し、やはりノーマルよりはブローバイガスが多く、オイル寿命が短い(BabyFaceは1500km毎の交換を推奨)、エアクリーナーが汚れる等のデメリットがある。また、オイルもノーマルより消費する。

 体感的にはトルク増大が顕著で、特に低速域においての安定感、信頼感が高い。全体的にも排気量アップによりパワーがみなぎる感じ。もともとZZRの場合、排気量があるので発進に気を使うことなどなかったのだが、その低速域のトルクたるやノーマルの比ではない。たった少しでも排気量が上がるだけで、こうも変わるものなのかと感心するほどだ。
 さて装着の方だが、、あまり意味不明に組むことはお勧めしない。ZZRのシリンダーは、ノーマル段階でウエットライナー等すでにカツカツ状態で、ヘタに組むと寿命が縮む。O/H時など、エンジンを開けるついでにモアパワーを、という時に視野に入れてみてはいかがだろうか。

◎ここがグッド(^o^)
・何といってもブランドネーム!
・排気量UPによりパワーもりもり、トルク増大!
●ここがチョット(TT)
・アイドリングに多少気をつかう必要がある。
・オイル管理が面倒(品質/量/汚れ/交換ルーチンなど)
・エンジン発熱量が大きくなり、ノーマルよりもさらに熱くなる。
・高い(笑)

ヨシムラカムシャフト(ステージT)
 言わずと知れた有名パーツ。カムといえばヨシムラである。インテーク・エキゾースト共リフト量を大きくとっており、より多くの混合気・燃焼ガスを吸排気する。また、同じくオーバーラップも大きめで、中高速域においてよりエンジンが伸びる。素材もノーマルと同等で耐久性も申し分なく、バルブスプリングもノーマルのままでいける。エンジンチューン必須のパーツ。



ヨシムラ カム  エンジンO/Hと同時に装着。ピストンは交換しなければならなかったが、カムは必要なかった。ノーマルに不満を感じていた訳でもない。つまり、ただミーハーなだけ(笑)。エンジン開けるついでに着けた。
 性能の方だが、正直言うとつい先日まで、その全てを堪能できていたとはいいがたい。O/H項目に記述したように、シムの不良で調子が今一つだったからだ。
 とはいえさすがはヨシムラで、本調子でなくともよく伸びる。特に7000rpmからは凄いの一言で、てっぺんまでギュイーンと、まるで鬼のようだ。この感覚は、ノーマルのキャブセッティングによるギミックな加速感とは根本的に違う。エンジンそのものが伸びていこうとするのだ。混合気を無理に押し込めるのではなく、エンジンが混合気を欲しがってる感じ。違うエンジンになったと言っていいだろう(事実性格が違う)。なお、心配していた低速域の方は、ボアアップのおかげで全く問題なかった。
 装着後、ならしに少々手間がかかるが、それも新車を購入したと思えばたいしたことではない。注意点としては、長すぎる暖機は禁物ということ。アイドリングが一番カムにとって悪い(ピストンとは条件が相反する)。たまには上まで回してあげよう。
 なお、現在ヨシムラはモデルチェンジを行い、スペックが変わった(今までのステージTはZRX用になった。ちょっとくやしい)。参考までに新型スペックも下に記述しておく。

※データは1mmリフト実測値(データ提供:ヨシムラジャパン)
項 目最大リフト作用角オープン-クローズロブセンター
INノーマル9.4mm236°11°-45°107°
ステージT9.6mm238°14°-44°105°
新型ステージT10.0mm245°17.5°-47.5°105°
EXノーマル9.0mm234°37°-17°100°
ステージT9.2mm236°43°-13°105°
新型ステージT9.5mm242°43°-19°102°

◎ここがグッド(^o^)
・中高速の伸びが凄い。誰でもヨシムラマジックを体感できる。
・スプリングなどがノーマルのままでいいので経済的、耐久性も問題なし。
●ここがチョット(TT)
・アイドリングに多少気をつかう必要がある。
・低速トルクがスカスカになるかもしれない。

バーネット強化クラッチ(シリーズK)
 アメリカ・バーネット社製強化クラッチキット。クラッチ強化の定番中の定番である。シリーズKキットはケプラー配合フリクションプレートと強化スプリングのセットとなっており、耐久性・動力伝達能力に優れる。パワーアップエンジンの必需品。



バーネット シリーズKクラッチキット  エンジンO/Hと同時に装着。ボアアップを行ったことに伴い、エンジンパワーも上昇しているであろうことから、念の為に着けた。
 但し、ヘタにつけるとクラッチが重たくなるので、BabyFaceと相談し、汎用性の高いシリーズKを選択。一般的な使用ではこれで十分とのことで、事実トラブルも発生していない。
 体感的には、先にクラッチマスターをブレンボに交換していた為、そんなに重くなったとは感じなかった。
 交換後約1万km走行した現在でも特に滑るような気配も無く、減りも概ね順調なようだ。そんなに無茶な繋ぎ方をする方ではないので、性能的にはこれで十分だと思う。そもそも容量が足りていればそれでいいのだから。次回交換時も他に浮気することなく、これにする予定。
◎ここがグッド(^o^)
・大パワーを確実に繋げる。
・耐久性が高い。
●ここがチョット(TT)
・クラッチが重くなる。

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