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古代幻想ロマンシリーズ「第〜弾」の謎

reporter:海月(スズメ♂)

 さて、表(「古代幻想ロマンシリーズ」単行本リスト)をご覧になればお分かりのように、一連の単行本の中の「古代幻想ロマンシリーズ第〜弾」とある時の数字に謎があります。
 このコーナーでは、この謎に迫ってみましょう(おふざけですよ、念のため)。


 まず、表の「第〜弾」は、各巻末の「長岡良子先生の単行本」という広告ページや、カバー裏表紙に書かれているもので、いわば"秋田書店公式見解"です。
 ところが、一見して分かるように、

  a.『天ゆく月船』が漏れている。
  b.8〜11弾がない。

という矛盾があります。どうも秋田書店は混乱をきたしているようです。

 試みに、『眉月の誓』各巻を別々に数え、無理矢理通しで番号を付ければ、『初月の歌』が12番目、『昏い月』が13番目、 『春宵宴』が14番目に当たります。
 ところが、それだと『夢の奥城』や『月の琴』が合いません。

 そこで、次のように考えられます。
 秋田書店は、少なくとも『月の琴』を第7弾とした時までは、『眉月の誓』はまとめて1つと数えていました(旧制)。
 ところが、遅くとも『初月の歌』に番号をつける時には、単行本の通算数によって12弾としてしまい、その後は、それが継承されています(新制)。
 従って正確には、『春宵宴』2は第15弾とすべきです。
 また、『眉月の誓』の2〜4巻は、無理に当てはまれば8〜10弾に当たることになりますが、1巻が第5弾であることからバランスが悪すぎますし、この時期には通算番号制ではなかったですから、旧制を尊重して、特に"弾"は付けないままにするのが妥当です。

 では、欠番の『天ゆく月船』は、旧制によって8弾とすべきでしょうか、それとも新制によって11弾とすべきでしょうか。最後にこれを考察してみましょう。
 『天ゆく月船』は、直前の『月の琴』と直後の『初月の歌』のどちらに近いでしょうか。

 (1) 単行本の発行日の間隔で見ると、後とは1年、前とは2月です。
 (2) 収録作品の発表時期で見ると、後とははっきりと間隔があいていますが、
  前とは時期が交錯しています。
 (3) 舞台となる時代も、『天ゆく月船』までと『初月の歌』以後では少しギ
  ャップがあります。「昏い月」は例外的ですが、これは初出の時期からし
  ても、そもそも単行本への収録が遅れたものと思われます。

 よって、『天ゆく月船』は前との連続性が強いと言うべきで、旧制によって8弾とすべきだと思います。


 とまあ、真面目っぽく推論してみました(^^;
 番号が乱れているのはご愛嬌かなと思いますが、『天ゆく月船』が忘れられかけているのが残念です。この中の3編はどれも大好きです。世代が不比等から次(氷高・坂上郎女・四兄弟)へと移っていく過渡期に当たる上に、前後の作品(「眉月の誓」「但馬皇女悲歌」「初月の歌」)を繋ぐ役割を果たしていますし。