しあわせな勘違い               2003.5月

大変な勘違いをしてたようだ。
気付いたのは割と最近。その時まで私は子供に言っていた。
「お母さんの小さい頃はかわいかったんだよ。」
嘘をつくつもりはなかった。
(勢いあまって「当然・・・もてたんだよ」というのは でたらめ。)

母が亡くなった後、実家の写真を整理していた。
私の幼少時代の写真を 改めて手にする。
懐かしさで整理する手も止まり、一枚一枚目をやると
まぁ、私の ぶっさいくな事!
・・・あれ?私ってこんなんやったっけ?もっとかわいかったはず。
だって母から「あんたはかわいい。べっぴんさん。」とよくいわれてたじゃないか。
おそるおそる子供に見せた。
「お母さんな、山田花子の写真持ってる。」
信じたかった。
なのに、「ほんまや!どうやって手に入れたん?」・・・悲しかった。
(花子の ラブリーさをも とっぱらっちゃったような私)

子供の頃 母は私達三姉妹に 煌びやかなお揃いのワンピースを作ってくれた。
(これって、下の子、お下がり着るから ずっと同じデザインのを着ることになる。)
服は誰よりもこじゃれてて ダントツ、かわいかった。
・・が,はなぺちゃ かりあげ 毛糸のパンツ。
毛糸のパンツは 長めが主流で わざとのように見せ付けていた。
全てがこっけいで だれが見てもぶさいくだ。

こんな勘違いもあった。
これも大人になってからの話。
「お母ちゃん、私一度も怒られたことなかったな。よっぽど 良い子やったんや。」
今思えば かなりの自信。
「何言うかいな〜。毎日怒ってた。あんたらケンカばっかし しとったけ〜」
・・・怒られてたんだ、私。
怒鳴りつける母の姿は思い出せなかった。
母は私の心の根っこに残る叱り方は してなかったのだろう。

しあわせな勘違いのおかげで
私はいじけず 能天気な大人になった。
私だって負けない。娘に言い続ける。
「あんたは かわいい。お母さんの子やもん」
絶対絶対 かわいいのだ!