<あめじょ>

 

 

 

 

 

 ――目覚まし時計がけたたましい音を立てた。

 朧な意識のまま、目覚ましのアラームを止めた。

 上から槍が降ってきて、頭を貫かれて私は死んだ。

 

 

 ――目覚まし時計がけたたましい音を立てた。

 朧な意識のまま、目覚まし時計のアラームを止めようとして、やめた。

 ベッドから降りる。鳴り続けるベルの音を背中に受けながら、朝陽を遮るカーテンを開けた。

 部屋に差し込んできた灼熱の光を浴び、黒い消し炭と化して私は死んだ。

 

 

 ――目覚まし時計がけたたましい音を立てた。

 朧な意識のまま、目覚まし時計のアラームを止めず、ベッドから降りてカーテンを開けずに部屋を出た。

 階段を通り過ぎ、廊下の突き当たりにあるトイレに入った。

 洗面台の蛇口を捻る。冷たい水が勢いよく流れ始めた。

 顔を洗い終え、蛇口を締める。が、水は止まらない。

 そのまま部屋の中いっぱいに水が溜まり、溺れて私は死んだ。

 

 

 ――目覚まし時計がけたたましい音を立てた。

 朧な意識のまま、目覚まし時計のアラームを止めようとして、やめる。

 ベッドから降りて、カーテンを開けずに部屋を出た。

 階段を下りる。玄関のドアを開けて、ポストに入っている新聞を取った。

 その途端、ポストに入っていた爆弾が爆発して、粉々になって私は死んだ。

 

 

 ――目覚まし時計がけたたましい音を立てた。

 朧な意識のまま、目覚まし時計のアラームを止めようとして、やめる。

 ベッドから降りてカーテンを開けずに部屋を出た。

 階段を下りる。リビングへと移動して、ソファーへと腰を下ろす。

 テレビのリモコンを取り、電源をつけた。

 テレビ画面の中の傭兵に銃で撃たれ、私は死んだ。

 

 

 ――目覚まし時計がけたたましい音を立てた。

 朧な意識のまま、目覚まし時計のアラームを止めようとして、やめる。

 ベッドから降りる。カーテンを開けずに部屋を出た。

 そのまま階段を下りてリビングへ。キッチンに移動して、パンをトースターの中に入れた。

 パンが焼けると、冷蔵庫からマーガリンを取り出してパンに塗った。他に添えることもなく口にした。

 マーガリンに毒が入っており、体がドロドロに溶けて私は死んだ。

 

 

――目覚まし時計がけたたましい音を立てた。

 朧な意識のまま、目覚まし時計のアラームを止めようとして、やめる。

 ベッドから降りる。カーテンを開けずに部屋を出た。

 階段を下りて一階へ。そのまま玄関から外に出た。

庭に回って犬小屋へと向かう。犬の散歩をするために、犬小屋で寝ているゴンタの名前を呼んだ。

 犬小屋から凶暴な狼が出てきて、喉元を食い千切られて私は死んだ。

 

 

 ――目覚まし時計がけたたましい音を立てた。

 朧な意識のまま、目覚まし時計のアラームを止めようとして、やめる。

 ベッドから降りる。カーテンを開けずに部屋を出た。

 階段を下りて一階へ。そのまま玄関から外へ出た。

 家の近くにあるバス停へと向かう。

 バス停へ着くと、ちょうど駅行きのバスが到着したところだった。流れるようにしてバスに乗った。

 発車した瞬間、バスが大爆発を起こして私は死んだ。

 

 

  ――目覚まし時計がけたたましい音を立てた。

 朧な意識のまま、目覚まし時計のアラームを止めようとして、やめる。

 ベッドから降りる。カーテンを開けずに部屋を出た。

 階段を下りて一階へ。そのまま玄関から外へ出た。

 ガレージへと回り、車に乗る。

 エンジンを回した瞬間、車が爆発を起こして私は焼け死んた。

 

 

 ――目覚まし時計がけたたましい音を立てた。

 朧な意識のまま、目覚まし時計のアラームを止めようとして、やめる。

 ベッドから降りる。カーテンを開けずに部屋を出た。

 階段を下りて一階へ。そのまま玄関から外へ出た。

 徒歩で近場の駅へと向かう。途中、近道をするために公園を横切った。

 すると、急に地面が崩れて流砂になり、飲み込まれて私は死んだ。

 

 

 ――目覚まし時計がけたたましい音を立てた。

 朧な意識のまま、目覚まし時計のアラームを止めようとして、やめる。

 ベッドから降りる。カーテンを開けずに部屋を出た。

 階段を下りて一階へ。そのまま玄関から外へ出た。

 徒歩で近場の駅へと向かう。途中、抜けられる公園を見かけたが、そのまま通らず道なりに歩いた。

 十五分ほど歩くと駅に着いた。

 切符を買ってホームへと移動する。丁度電車がやってきた所だった。

 電車がやってきた瞬間、何者かに背中を押されて線路へと落とされた。バラバラになって私は死んだ。

 

 

 ――目覚まし時計がけたたましい音を立てた。

 朧な意識のまま、目覚まし時計のアラームを止めようとして、やめる。

 ベッドから降りる。カーテンを開けずに部屋を出た。

 階段を下りて一階へ。そのまま玄関から外へ出た。

 徒歩で近場の駅へと向かう。途中、抜けられる公園を見つけたが通らないでおいた。

 十五分ほど歩くと駅に着いた。

 駅には入らずタクシー乗り場へと移動する。タクシーを捕まえて会社へと向かった。

 だが、その途中でトラックと正面衝突し、私は死んだ。

 

 

 ――目覚まし時計がけたたましい音を立てた。

 朧な意識のまま、目覚まし時計のアラームを止めようとして、止める。

 ベッドから降りる。カーテンを開けずに部屋を出た。

 階段を下りて一階へ。そのまま玄関から外へ出た。

 徒歩で会社へと向かう。どうやら遅刻は確定のようだ。

 だが、歩いていけば時間は掛かれども死ぬことはない。

 

 結局、会社に着いたのは正午を一時間半過ぎた頃だった。

 大遅刻だが、生きて会社に辿り着くことができた。食事も何も取ってないし、服も昨日のものだが、それは仕方がないことだ。

 安堵の息を吐きながら、会社のホールに入る。エレベーターで移動しようと思ったが、なんだか怖いので階段を使った。

 自分の部署へと辿り着き、自分の席に座る。

 仕事に取り掛かろうとしたその時。

 飛行機が会社に突っ込んできて、やはり私は死んでしまった。

 

 

 ――目覚まし時計がけたたましい音を立てた。

 再び私は戻ってきた。

 目覚まし時計に手をやる。時計の針は八時を指していた。

 私は何もせず、再び眠りについた。

 

 

 

 END

 

 

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