<あめじょ>
――目覚まし時計がけたたましい音を立てた。
朧な意識のまま、目覚ましのアラームを止めた。
上から槍が降ってきて、頭を貫かれて私は死んだ。
◇
――目覚まし時計がけたたましい音を立てた。
朧な意識のまま、目覚まし時計のアラームを止めようとして、やめた。
ベッドから降りる。鳴り続けるベルの音を背中に受けながら、朝陽を遮るカーテンを開けた。
部屋に差し込んできた灼熱の光を浴び、黒い消し炭と化して私は死んだ。
◇
――目覚まし時計がけたたましい音を立てた。
朧な意識のまま、目覚まし時計のアラームを止めず、ベッドから降りてカーテンを開けずに部屋を出た。
階段を通り過ぎ、廊下の突き当たりにあるトイレに入った。
洗面台の蛇口を捻る。冷たい水が勢いよく流れ始めた。
顔を洗い終え、蛇口を締める。が、水は止まらない。
そのまま部屋の中いっぱいに水が溜まり、溺れて私は死んだ。
◇
――目覚まし時計がけたたましい音を立てた。
朧な意識のまま、目覚まし時計のアラームを止めようとして、やめる。
ベッドから降りて、カーテンを開けずに部屋を出た。
階段を下りる。玄関のドアを開けて、ポストに入っている新聞を取った。
その途端、ポストに入っていた爆弾が爆発して、粉々になって私は死んだ。
◇
――目覚まし時計がけたたましい音を立てた。
朧な意識のまま、目覚まし時計のアラームを止めようとして、やめる。
ベッドから降りてカーテンを開けずに部屋を出た。
階段を下りる。リビングへと移動して、ソファーへと腰を下ろす。
テレビのリモコンを取り、電源をつけた。
テレビ画面の中の傭兵に銃で撃たれ、私は死んだ。
◇
――目覚まし時計がけたたましい音を立てた。
朧な意識のまま、目覚まし時計のアラームを止めようとして、やめる。
ベッドから降りる。カーテンを開けずに部屋を出た。
そのまま階段を下りてリビングへ。キッチンに移動して、パンをトースターの中に入れた。
パンが焼けると、冷蔵庫からマーガリンを取り出してパンに塗った。他に添えることもなく口にした。
マーガリンに毒が入っており、体がドロドロに溶けて私は死んだ。
◇
――目覚まし時計がけたたましい音を立てた。
朧な意識のまま、目覚まし時計のアラームを止めようとして、やめる。
ベッドから降りる。カーテンを開けずに部屋を出た。
階段を下りて一階へ。そのまま玄関から外に出た。
庭に回って犬小屋へと向かう。犬の散歩をするために、犬小屋で寝ているゴンタの名前を呼んだ。
犬小屋から凶暴な狼が出てきて、喉元を食い千切られて私は死んだ。
◇
――目覚まし時計がけたたましい音を立てた。
朧な意識のまま、目覚まし時計のアラームを止めようとして、やめる。
ベッドから降りる。カーテンを開けずに部屋を出た。
階段を下りて一階へ。そのまま玄関から外へ出た。
家の近くにあるバス停へと向かう。
バス停へ着くと、ちょうど駅行きのバスが到着したところだった。流れるようにしてバスに乗った。
発車した瞬間、バスが大爆発を起こして私は死んだ。
◇
――目覚まし時計がけたたましい音を立てた。
朧な意識のまま、目覚まし時計のアラームを止めようとして、やめる。
ベッドから降りる。カーテンを開けずに部屋を出た。
階段を下りて一階へ。そのまま玄関から外へ出た。
ガレージへと回り、車に乗る。
エンジンを回した瞬間、車が爆発を起こして私は焼け死んた。
◇
――目覚まし時計がけたたましい音を立てた。
朧な意識のまま、目覚まし時計のアラームを止めようとして、やめる。
ベッドから降りる。カーテンを開けずに部屋を出た。
階段を下りて一階へ。そのまま玄関から外へ出た。
徒歩で近場の駅へと向かう。途中、近道をするために公園を横切った。
すると、急に地面が崩れて流砂になり、飲み込まれて私は死んだ。
◇
――目覚まし時計がけたたましい音を立てた。
朧な意識のまま、目覚まし時計のアラームを止めようとして、やめる。
ベッドから降りる。カーテンを開けずに部屋を出た。
階段を下りて一階へ。そのまま玄関から外へ出た。
徒歩で近場の駅へと向かう。途中、抜けられる公園を見かけたが、そのまま通らず道なりに歩いた。
十五分ほど歩くと駅に着いた。
切符を買ってホームへと移動する。丁度電車がやってきた所だった。
電車がやってきた瞬間、何者かに背中を押されて線路へと落とされた。バラバラになって私は死んだ。
◇
――目覚まし時計がけたたましい音を立てた。
朧な意識のまま、目覚まし時計のアラームを止めようとして、やめる。
ベッドから降りる。カーテンを開けずに部屋を出た。
階段を下りて一階へ。そのまま玄関から外へ出た。
徒歩で近場の駅へと向かう。途中、抜けられる公園を見つけたが通らないでおいた。
十五分ほど歩くと駅に着いた。
駅には入らずタクシー乗り場へと移動する。タクシーを捕まえて会社へと向かった。
だが、その途中でトラックと正面衝突し、私は死んだ。
◇
――目覚まし時計がけたたましい音を立てた。
朧な意識のまま、目覚まし時計のアラームを止めようとして、止める。
ベッドから降りる。カーテンを開けずに部屋を出た。
階段を下りて一階へ。そのまま玄関から外へ出た。
徒歩で会社へと向かう。どうやら遅刻は確定のようだ。
だが、歩いていけば時間は掛かれども死ぬことはない。
結局、会社に着いたのは正午を一時間半過ぎた頃だった。
大遅刻だが、生きて会社に辿り着くことができた。食事も何も取ってないし、服も昨日のものだが、それは仕方がないことだ。
安堵の息を吐きながら、会社のホールに入る。エレベーターで移動しようと思ったが、なんだか怖いので階段を使った。
自分の部署へと辿り着き、自分の席に座る。
仕事に取り掛かろうとしたその時。
飛行機が会社に突っ込んできて、やはり私は死んでしまった。
◇
――目覚まし時計がけたたましい音を立てた。
再び私は戻ってきた。
目覚まし時計に手をやる。時計の針は八時を指していた。
私は何もせず、再び眠りについた。
END