<コンコン>

 

 

 

 

 

 枝に木の実が生っている。

 一本の木にたった一つ、ぶら下がる果実。

 

 木の実の食べ時はいつなのか?

 ――それは果実が熟した時。

 

 木の実はいつから食べられるのか?

 ――それは枝から捥いだ時。

 

 木の実を食べられるのは誰なのか?

 ――それは最初に捥いだ者。

 

 木の実は未だ熟していない。

 森の皆が待っていた。

その実が熟すのを待っていた。

熟して、食べ時になるのを待っていた。

 

 

 

 ある日、狐が木の下を通りかかった。

 ふと上を見ると、枝に青みがかった果実がぶら下がっている。

 狐は木の実を見つめて暫らく考える。

そして、木の幹を駆け上がり、木の実を捥ぎ取った。

 

 熟してなくても実は食える。

誰もが食べない今だからこそ、木の実を独り占めできる。

狐はそう考えたのだった。

 

 

 何より、そもそも、未熟な木の実は狐の大好物なのだ。

 

 

 

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