<目覚め>

 

 

 

 

 

 ドス、と胸に響いた鈍い感触で目が覚めた。

 目が覚めて起きようとしたが、まるで、体に杭が刺さったように体が固定されて動けない。

 おかしいと思って自分の体を見下ろしてみると、僕の胸から包丁の柄が生え出ていた。その辺りには黒々しい血が染み出ている。

 どうやら、僕の胸に包丁が刺さっているようだ。

 どうしてこんなことになったのか分からない。怖くなって誰かいないかと部屋を見渡すと、ドアの前にお母さんが立っていた。

「おはよう、隆志。七時になってもあんまりぐっすりと寝ているものだから、ついつい刺しちゃったわ」

 お母さんは笑って言った。

「良かったわね。今日は学校に行かずに済むわよ」

 よく解らなかったが、そうなのかと僕は思った。風邪を引いている訳でもないのに学校を休めるなんて、とてもラッキーだ。

「だから、今日はもうずっと寝ててもいいわよ。おやすみなさい」

 今日は学校に行かずに、一日中寝ていられる。

「おやすみなさい。お母さん」

 僕は再び目を閉じて、眠りについた。

 

 

END

 

 

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