<僕はこうだと思うんだ>

 

 

 

 

 

 あなたは辛い旅の末、ようやく我が家に帰ってきた。

 よほど長い間家を空けていたのだろう。あなたが住んでいた家の風景は、あなたが住んでいた頃とはまったく違っていた。

 

 まず寝床がない。いつも寝ていたふかふかの布団に、あなたが転がるスペースはなかった。

 

 次にご飯がない。自分が使っていた食器はないし、水すらも飲めなくなっていた。

 

 更には用を足す場所もない。そこら辺で漏らせとでも言うのだろうか、ここまでくればただの嫌がらせだ。

 

 そして、住人達も変貌していた。旅に出る前はあれ程自分を構ってくれていたのに、今では見向きもしない。どれだけ擦り寄っても、声を上げても、気付く素振りすら見せてはくれない。長い間外に出ていたから、忘れられてしまったのだろうか。

 

 それでも、あなたには甘えがあって。暫くの間、ずっと自分の存在をアピールし続けた。しかし、いつまで経ってもあなたの『家族』はあなたを無視し続ける。

 そうして、ようやく諦めたあなたは、かつて住んでいた家を去っていく。

どこに行くのかは分からない。

あなただけが、知っている筈。

 

 

 私には、その去っていく、寂しそうな背中が見えるようで。

 

少しだけ、悲しくなってしまう。

 

 

 

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