コートカラーの遺伝子について

 ラブラドールのカラー遺伝子については、色々な分野で紹介されていますのでご存知の方も多いと思いますが、配色は多くの場合遺伝子記号で表現されています。またいくつかの決め事を把握すれば、自分で任意に組み合わせて配色や発生の確率などを知る事が出来、良質な色素形成を目指す人にはとても便利です。

@2つのセットになった遺伝子がラブラドールの配色を支配しています。
セット 支   配   内   容
第1 生まれたラブがダーク(ブラックやチョコレート)になるかライト(イエロー)になるかを決めます。
ダークはライトよりも優勢で、EE(ホモ型接合優勢遺伝子)あるいはEe(ヘテロ接合遺伝子)はダークを生みます。つまり、ee接合劣勢遺伝子のみがライトを生み出します。
第2 ラブラドールがダーク(EEやEe)である場合にのみ支配し、ブラック(優勢形質)になるかチョコレート(劣勢形質)になるかを決めます。

Aラブラドールの毛色の遺伝子構成(遺伝子記号により支配色が決まる)
毛 色 遺 伝 子 記 号 構  成  内  容
ブラック EEBB、EEBb、EeBB、EeBb  EEBB・・ブラックの基礎を作る
 EEBb・・チョコレートの潜在遺伝子を持つブラック
 EeBB・・イエローの潜在遺伝子を持つブラック
 EeBb・・チョコレートとイエロー両方の潜在遺伝子を持つブラック
イエロー eeBB、eeBb、eebb  eeBB・・純系のイエローでチョコレートは発色させない
 eeBb・・チョコレートの潜在遺伝子を持つイエロー
 eebb・・鼻やアイラインがチョコレートの色素形成を持つイエローで、
      スタンダードでは失格とされる
 ☆ee の場合は必ずイエローとなる
チョコレート EEbb、Eebb  EEbb・・純系のチョコレートでイエローは発色させない
  Eebb・・イエローの潜在遺伝子を持つチョコレート
 ☆ bb の場合は常にチョコレートの色素形成を持つ

B具体的な配色例
配    色    例 
両親犬がイエロー同士の場合、必ずイエローの仔犬が生まれる
両親犬がブラック同士でも3色全てのカラーが生まれる可能性がある(下表参照)
両親犬がチョコレート同士の場合、ブラックの仔犬は生まれない
片方の親がチョコレートの場合、必ず次世代へチョコレート遺伝子が受け継がれる

C3色カラーが出現する遺伝子の組み合わせ
両親犬が EeBb(ブラック)× EeBb(ブラック)
EB Eb eB eb 発 生 確 立 内 訳(全数16頭とした時の割合)
EB EEBB EEBb EeBB EeBb 両親犬がブラック同士でも遺伝子が
EeBb 同士なら、下記割合で3色カラーが出現する。
     ブラック    : 9頭 (56%)
     イエロー   : 4頭 (25%)
     チョコレート : 3頭 (19%)
Eb EEBb EEbb EeBb Eebb
eB EeBB EeBb eeBB eeBb
eb EeBb Eebb eeBb eebb

Dチョコレートカラーの研究
チョコレート色のラブラドールはショーでもフィールドでもチョコレートに対する偏見がいまだにしつこく残っています。出陳頭数が圧倒的に少ないのが原因の1つになっているようです。しかし、チョコラブ人気は近年飛躍的に上がってきており、一流のチョコラブ専門ブリーダーもどんどん増えてきています。あと10年もすれば他の色と数が変わらなくなり、数年で受け入れられるかも知れないと予想されるまでになりました。チョコラブファンにとっては嬉しい限りですが、チョコラブブリーダーはそのファンの期待を裏切らないように、クオリティを上げて行く必要があると思います。

チョコラブのスタンダードの第一関門である、良質のチョコレートカラーを作り出すことはとても重要なことです。しかし、ブラックやイエローと比べると、難解で複雑な遺伝子パターンとなってます。まず、理想とするスタンダードのチョコレートコートカラーですが、全身が濃いチョコレート色が良く、遠くから見るとブラックに見え、近くに寄ると初めてチョコラブと判るような濃すぎる色は良くありません。また、体の一部に少しでも明るい色が入っているのも良くないとされています。(胸部の白い小さなスポットは許されているようです)
英国 チョコラブ ブリーダ
オークハウス犬舎
マーガレット・リザーランドさん
鼻の色は濃い褐色かレバー色が良いとされています。目の色は濃い色(栗色)が好ましく、黄色は猛禽類(ワシ・タカ・フクロウ等)のような怖い表情をつくるのでよくないとされ、アイラインは鼻の色と同様の色調で、色落ちしていないのが好ましいとされています。ブリーディングにおいては、濃い目の色素作出はチョコレートコートカラーのそれよりはるかに難しいとされています。下表でも述べていますが、チョコラブの繁殖においてはイエローを交配対象から外した場合が多いので、イエローやブラックに比べると交配対象が極端に少ない中、遺伝子レベルで検討すると共に、交配に見合う血統を追求しなければならないので、いかに困難かお判り頂けるかと思います。

遺伝子表記による理想のチョコレートカラー作出
EEBb(ブラック)× EEBb(ブラック)                 EEBb(ブラック)× EEbb(チョコレート) 
EB Eb EB Eb 発 生 確 立 EB Eb EB Eb 発 生 確 立
EB EEBB EEBb EEBB EEBb ブラック:12頭 (75%)
チョコ  : 4頭 (25%)
Eb EEBb EEbb EEBb EEbb ブラック:8頭 (50%)
チョコ  :8頭 (50%)
Eb EEBb EEbb EEBb EEbb Eb EEBb EEbb EEBb EEbb
EB EEBB EEBb EEBB EEBb Eb EEBb EEbb EEBb EEbb
Eb EEBb EEbb EEBb EEbb Eb EEBb EEbb EEBb EEbb
チョコラブ作出割合は25%程度だが、色素の濃いラブが
高い確率で期待できます。しかし、この組み合わせは
黒ラブ同士の組み合わせなので偶然に出来た場合が
多く、チョコラブ専門のブリーダーとしては少ないようです。
チョコラブ繁殖で一般的に用いられる組み合わせです。色素が濃くチョコラブ作出割合も半分なので最適と言えます。

注意したい組み合わせ
Eebb(チョコレート)× EeBb(ブラック)               Eebb(チョコレート)× Eebb(チョコレート) 
Eb Eb eb eb 発 生 確 立 Eb Eb eb eb 発 生 確 立
EB EEBb EEBb EeBb EeBb ブラック:6頭 (37%)
チョコ  :6頭 (37%)
イエロー:4頭 (26%)
Eb EEbb EEbb Eebb Eebb チョコ  :12頭 (75%)
イエロー: 4頭 (25%)
Eb EEbb EEbb Eebb Eebb Eb EEbb EEbb Eebb Eebb
eB EeBb EeBb eeBb eeBb eb Eebb Eebb eebb eebb
eb Eebb Eebb eebb eebb eb Eebb Eebb eebb eebb
色素が薄い eebb が作出(14%)する可能性があるので出来れば避けたい組み合わせです。 高い確率(25%)で色素が薄い eebb が作出する可能性があるので避けたい組み合わせです。

ブリーディングにおける留意点(まとめ)
@チョコラブ繁殖にはチョコレートの潜在遺伝子を持つブラックEEBb(ブラック)との交配が最適
Aチョコラブ同士で交配する場合、表記していないがEEbb(チョコレート)×EEbb(チョコレート)の組み合わせにするか、あるいはEEbb(チョコレート)×Eebb(チョコレート)にすればイエローは出生しないことになる。
B理想とするチョコラブを作出するにはイエローとの交配を避けるのが一般的。

その他

上記内容は、これからショードックとしてより美しいチョコレートカラーを目指す人に、少しでも参考にして頂きたいと願い記述しています。現在一般家庭でペットとして愛育している場合は、チョコレートカラーが薄くても気にすることはないと思います。

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