更正登記(土地編)

「更正」という言葉は聞き慣れないかもしれませんね。「修正」と言ったほうが分かりやすいかも。
要するに登記記録の記載内容に誤りがあった場合に行う登記のことです。

表題登記の説明のところでも書きましたが、表題登記は基本的に申請の義務があり、新たに土地や建物を取得したり、それらの内容に変更があった場合は1ヶ月以内に登記の申請をしなければならない、という決まりがあります(守らないと10万円以下の過料という罰則も)。ですが、土地や建物の表題登記に関する誤りを更正することについては申請義務はありません。これもちょっと不思議な気がするルールです。単に条文上に規定が無いからということなのでしょうか...???

申請義務の無いものであれば誰がやるねん?ということになるのですが、土地については地積の更正登記は結構な頻度でなされています。これは、土地を担保に資金を借りるような場合に、土地の地積を明確にしてもらいたいという金融機関側からの要請があるためです。担保価値を明確にして融資の限度額を決めたいということなのでしょう。
ということで、実際に測量をしてみて登記記録と違いがあれば更正登記を行う、という流れになります。

なお、更正登記は申請の義務がありませんので、例え測量した地積が登記記録と大きく違っていたとしても、登記記録に関しては放っておいても構わないです(金融機関などは登記を要請すると思いますが)。
ただし、これが分筆を伴っている場合は少々話が変わります。不動産登記事務取扱手続準則の第72条第1項に以下の規定があるためです(条文をそのまま記載)。

「分筆の登記を申請する場合において、分筆前の地積と分筆後の地積の差が、分筆前の地積を基準にして規則77条第4項の規定による地積測量図の誤差の限度内であるときは、地積に関する更正の登記の申請を要しない。」
(ここに書かれている「規則第77条〜」の「規則」は「不動産登記規則」という政令のことです。)

これ、ややこしいですが、誤差の限度を超えている場合は地積の更正登記を要するということです。
まず、もとの登記記録がありますから、そこに記載されている地積が「分筆前」の地積ということになります。そして、分筆のためには地積測量図を作成しますので、当然測量を行うことになります。この測量の結果得られた地積が「分筆後」の地積ということになり、この地積の差が限度を超えていれば、分筆の登記申請時に地積更正の申請も必要ですよ、ということなのです。

じゃあ、限度とはどうやって決められているのか?
これは数式がありますが、式の中に4乗根やらが出てくるので、ちょっとここでは表現しづらいのでやめておきます^^;
この数式で求められた値をプラスマイナスした範囲内であれば地積更正登記は必要ないということになります。ちなみに、限度の範囲はどの場所でも同じというわけではなく、市街地、村落・農耕地域、山林・原野地域でその値が各2段階(全部で6段階)で定義されています。
例えば、登記記録が100.00uの土地の場合、許される誤差の範囲は一般的な市街地で約±0.81uとなり、山林地域では約±9.42uとなります。人の少ない地域のほうが誤差の制限が緩やかということですね。

でも...ここで疑問に感じる方もいらっしゃるかと思います。
そもそも登記記録の地積にそんなに間違いがあるの?ということですね。

ズバリ!あります^^;

もちろん、最近測量をして登記したものについては、よほどおかしなことをしていない限り地積更正を行うような誤差は発生しません。今は距離を測るのに光波を用いますから、出たとしても数十メートルの距離に対して数mmの誤差といったところですので。
しかし、明治の昔、地租改正の時代だと、必ずしも正しい測量が行われていなかったことがあったりします(租税に影響するため面積をごまかすといったことが行われていました)。また、現在のように測量機器が発達していなかったために測量誤差も発生しやすかった、という面もあります。これらの記録が現在も登記記録として残っている土地がまだまだあります。

また、こんなこともあります。今は分筆の際には分筆後のそれぞれの土地について地積を算出しなければなりませんが、昔は分筆して新しく地番が付けられる方の土地の地積だけを求めて、残りの土地の地積は登記記録から引き算をした値でよい(これを残地計算といいます)、という規定でした。
ここに登記記録では505.00uという土地があるとします。ここから100.00uの土地を5筆分筆して分譲することにしました。そうすると、分筆後の残地の土地の地積は登記簿上は5.00uということになってしまい、実際にそのように記録されました。でも、後日その残地の地積を測量すると200u以上あった。。。というように、昔の残地計算の規定によって地積が実際と大きく異なっている場合もあるのです。

地積更正の話が長くなりましたが、土地の更正登記については、地積の更正が最も重要、かつケースが多いのでこうなってしまいました。他には表題部所有者が違っていたり、その持分が違っている場合、あるいは地目の登記に誤り、などが考えられます。ここで注意しなければならないのは「変更」ではなく「更正」であることを証明しなければならないということです。例えば、表題部所有者がBとなっていて、真正な所有者はAであるということが証明できないと「更正」登記はできないということです。

ちなみに、表題部所有者は「変更」できません。この場合は所有権移転登記によってしなければならないと規定されています(不動産登記法第32条)。持分が変わる場合も同様です。

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