最終更新日:1999.7.19 JST
1998年ヴィンセント・ウォード監督作品(PG-13) ポリグラム・フィルム・エンターテイメント配給
主演: ロビン・ウィリアムス & アナベラ・シオラ
事故死した夫を追って、後追い自殺した妻を地獄より救い出す「奇蹟の輝き」
クリス・ニールセン医師(ロビン・ウィリアムス)は若い頃、湖で出会った理想の女性アニー(アナベラ・シオラ)と結婚し、幸せな生活を送っていた。4年前、愛する子供たち、イアン(ジョッシュ・パドック)とマリー(ジェシカ・ブルックス・グラント)を不遇の事故で失った不幸も何とか乗り越えてきたクリスとアニーだが、今また、さらなる不幸がふたりに訪れる。
気がつくとクリスは自分の葬儀に出席していた。雨の夜、事故に巻き込まれて彼の肉体はこの世での務めを終えたのだった。だが魂の方はそうではなかった。彼はひとり悲しみに沈む妻アニーに寄り添うと、僕はまだここにいる、と語りかける。だが彼の声は届かない。それどころかかえってアニーの悲しみを深めるだけだった。「彼女の悲しみを終わらせるのは君だ」。誰かの“声”がクリスにそう教える。やがてクリスは心を決め、アニーの側を離れる。
次に目覚めた時、クリスは美しい草原にいた。どこか見覚えのある風景、そして草も花も地面も絵の具でできている……これは画家のアニーが描いていた絵の中の風景だ。そこがクリスの“天国”だった。“声”の主が現れる。若い黒人の男だ。クリスはそれが彼の恩師アルバート教授(キューバ・グッディング・ジュニア)のこの世界での姿だと気づく。アルバートの導きでクリスはこの新しい世界について学んでいく。
ここでは望めばどんなこともできた。水の上を歩くことも、飛ぶように走ることも。まるで子供のようにはしゃぐクリス。やがて彼は、アニーの絵にはなかった紫の花をつけた木を発見する。クリスの死後、彼女が描いたものがクリスの世界に現れたのだ。ソウルメイト(魂の友)の間でだけ、稀に起きる現象だ、とアルバートも目を丸くする。ふたりの心は絵を通じて今も堅く結ばれていたのだ。だが突然、木ははかなく花を散らせてしまう。アニーの淋しさがクリスに痛いほど伝わってくる。
アルバートに代わって、リオナと名乗る東洋人の女性(ロザリンド・チャオ)が現れる。リオナはクリスを、水辺の階段に多くの人々が楽しげに集う、彼女の世界へ連れていく。リオナの求めに応じて娘のマリーの思い出を語るクリスーーー初めてチェスを教えた日のこと、事故で亡くなるまでとうとう彼女は勝てなかったと……。リオナもまた、父の思い出を語る。シンガポールに旅行した時、飛行機の中で父が東洋人のスチュワーデスをほめるのを聞いて、自分がそうなりたいと願ったこと。それはクリスもよく覚えている懐かしい思い出だった。「今もチェスを?」彼女を優しく抱き締めるクリス。リオナはマリーだったのだ。
その頃、地上では遂に孤独に耐えかねたアニーが自ら命を断っていた。自殺者は地獄へ行かなければならない。クリスはアルバートから二度と彼女に会うことはできないと聞き、激しいショックを受けるが、すぐさま自ら彼女を探しに地獄へ向かう決心をする。だが自殺した者が天国へ来た例はない。果たしてクリスに彼女の魂を救うことができるのか?
アルバートはクリスを道案内人(マックス・フォン・シドー)のもとへ連れていく。案内人は、たとえアニーを見つけることができても、彼女にはクリスのことがわからないと警告する。「閉ざされた心は愛よりも強い。愛ゆえに強いのだ」と。だがクリスの決意は変わらない。
案内人は、クリスの弱みを利用してアニーを探そうと言う。息子イアンへの悔いがそれである。クリスは生前、落ちこぼれのイアンに過剰な期待をかけ、反発を招いていたのだった。クリスらが嵐の海を抜け、巨大廃船の横たわる地獄の入り口にたどり着いた時、恐ろしい形相の兵たちが襲ってくる。勇敢に立ち向かおうとするアルバートの姿に、クリスはイアンにかけた言葉を思い出す。―――「地獄を行く時は誰よりお前に居てほしい」。彼はアルバートがイアンだということにようやく気づく。イアンはクリスの信頼を得るために、彼が敬愛していた師の名前を借りていたのだ。
イアンは案内人の指示に従い、残ることになる。「僕らが死んだ時、ママを立ち直らせた言葉を思い出して」―――イアンの言葉を胸に受け止めながら、地獄へと降りていくクリス。そして遂に彼は、アニーが閉じ込もっている廃虚にたどりつく。それはふたりが一緒に暮らした家の荒れ果てた姿だった。中へ入って行こうとするクリスを呼び止めた案内人は、自分がアルバートであることを明かし、愛弟子に最後の助言を与える「彼女の世界に呑みこまれて正気を失ったら戻る手立てはないぞ」。
案内人が言った通り、アニーはクリスの姿を見てもそれが誰だかわからなかった。 そして、どんなに思いを伝えようとしてもアニーを救うことはできないと悟ったクリスにとって、残された希望はひとつしかなかった。それは、愛の力がもたらす“奇蹟”だけだった。
オスカー候補の天国の美術はたいしたもの。この映画の天国は、死んだ人間がそれぞれ心に描くファンタジーの世界が実現するという設定。で、ロビンの場合は、愛妻の描いた絵がそのまま彼の天国になる。最初、その風景はすべて絵の具でできていて、歩くと絵の具がグチャグチャ混ざり合ったりするのを、CGを使ったSFXはかつてないパターン。
と云っても、キリスト教のバックボーンがない私にはとてもついていけない世界・・・
日本公開は99/6/5。