Payback

最終更新日:1999.7.19 JST

草模様

ネタばれ注意!!!

1999年ブライアン・ヘルグランドを監督作品(R) パラマウント配給

主演: メル・ギブソン & マリア・ベロ

相棒に盗んだ金と妻を奪われた男が復讐のために立ち上がる「ペイバック」

もぐりの医者のところで弾丸摘出手術を受けたポーター(メル・ギブスン)が、「7万ドルを取り戻す」というナレーションと共に街へ戻り、社会復帰する様子を描いたオープニングからスタート。まず、ホームレスから金を奪ったポーターは、食堂で朝食をとり、ウェイトレスにチップを払わずタバコをネコババ。通行人のサイフをすって銀行から金を引き出し、ブルックス・ブラザースのスーツを購入。さらに、高級時計を買ってはそれを質屋に持ち込むという作業を何度も繰り返し、足のつかない軍資金を得る。悪党ポーターのストリート・ワイズなキャラクターとタフな生きざまが、数分のショットの積み重ねだけで説明されてしまう。

チャイニーズ・マフィアの裏金を奪って、14万ドルを手に入れたポーターだが、相棒ヴァル(グレッグ・ヘンリー)とヤク中の妻(デボラ・カーラ・アンガー)の裏切りにあい、背中へ2発の銃弾をあび、そっくり金を奪われてしまった。妻のリンは、ポーターが高級娼婦のロージー(マリア・ベロ)が並んで写っている写真をヴァルに見せられて怒り、ポーターを裏切って背中から撃っってしまったと云う訳もある。 

街に戻ったポーターは、裏切ったリンを訪ねるが、ヤクのオーバードーズであの世行きなる。で、ポーターは自分の分け前7万ドルを求めて、ヴァルの行方を捜し始める。ロージーの情報をもとに、ヴァルの居所をつきとめるポーター。しかし、ヴァルは奪った金を組織への借金返済にあててしまい、分け前は残っていないという。どこまでも自分の分け前にこだわるポーターは、組織から金を取り戻そうとする。

組織を牛耳るボスたち(ジェームズ・コバーンやクリス・クリストファーソン)へ次々と戦いを挑み、自分の分け前を取り戻そうとするポーター。そこに、妻にヤクを提供していたディーラーへの暴行容疑で動き出した悪徳刑事(そのひとりがコワ面のビル・デューク)も絡むわ、ヴァルの情婦のサドの中国系コールガール(ルーシー・アレクシス・リュウ)も絡むわの、ややこしいこと。ロージーの儚い恋に一時の安らぎを求めながら次々と殺戮を重ねるポーターは、まるで「殺しの言い訳」を求めるがごとく組織を追う。自分を拒否する社会全体への「仕返し(ペイバック)」とでもいえそうな執拗さで・・・・・・

果たして、ポーターは自分の分け前を取り戻すことができるか・・・ですね。

ジェームズ・コバーン、クリス・クリストファーソン、ウィリアム・ディヴァインの親分衆3人が絡む組織の人脈図があまりに煩雑で分かり難いです。

ポーターは、もともと用意周到な準備できれいな仕事をするプロの強盗。危険に身をさらすような無茶はせず、目立った派手な仕事をして、町を牛耳る組織と対立関係になるようなこともしない。自分の職分を守り、その範囲の仕事で満足しているタイプ。それこそが、ポーターの強盗としての処世術だった。ところが相棒と妻に裏切られたことによって、彼の生き方は180度変わってしまう。彼は自分から奪われたものを取り戻すために、命知らずの冒険をするようになる。相棒のヴァルは、ポーターから盗んだ金を組織への借金返済に充ててしまった。金を取り戻すとしたら、組織を相手にしなくてはならない。ポーターの金は7万ドル。もとより組織を相手にする危険と引き合う金額ではない。だがポーターはその金にこだわる。わずか7万のはした金を取り戻すことが、ポーター自身のプライドを取り戻すことにつながるから。

ポーターがいろんな危機をかいくぐっていくサスペンス&アクションはそれなりに面白い。終盤の組織のボスの息子を誘拐して取引にでたポーターが組織に拉致され息子の居場所を追求され窮地に立つ図。そのあたりの2転3転のツイスト(電話の使い方がキーポイント)は、かなりサスペンスフルで楽しめる。

ドナルド・E・ウェストレイクことリチャード・スタークの小説「悪党パーカー/人狩り」を映画化した1967年度のジョン・ブアマン監督、リー・マービン主演作「殺しの分け前/ポイント・ブランク」は、それまでにない過激なハードボイルドさで話題となったそうだが、「陰謀のセオリー」や傑作犯罪スリラー「L・Aコンフィデンシャル」の脚本家ブライアン・ヘルグランドを監督に初起用し、この復讐劇(リベンジ・アクション)を現代感覚で焼き直したのがこの映画。主演メル・ギブソン率いるアイコン・プロダクションの製作で、「タイタニック」同様、撮影後の事情から封切りが予定より1年近く遅れたのは、編集段階(プリ・プロダクション)へ入ってヘルグランドとギブソンの意見が衝突し、ヘルグランドは抜け、ギブソンの主導権でかなりの手直しをしたためとのこと。キャラクターを入れ替えたり、新たなキャストで一部を撮り直すなど、結局、当初とはかけ離れた感覚の犯罪アクション・ドラマになったそうです。

とにかく、えげつない映画ですので、覚悟してください。

日本公開は99/5/15。

草模様

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