最終更新日:2003.2.15 JST
2002年スティーブン・スピルバーク監督作品(PG) 20世紀フォックス配給 2時間25分
主演: トム・クルーズ
トム・クルーズ演じる刑事が、自分が設立の手助けをしたシステムの犠牲者になる前に、真実を明らかにするため奔走する物語。「マイノリティ・レポート」
21世紀後半ワシントンDC。この都市での殺人はすべて消滅していた。未来が見えるようになり、処罰は、罪が犯される前に行なわれた。司法局のエリート集団、犯罪予防局の奥深くで、罪を犯そうとするすべての証拠、殺人現場の場所を始めとする詳細を「プリコグ」が見通していた。半植物人間状態で液体サスペンション・チエンバー水槽の中で暮すサイキックの三人から構成された「プリコグ」(予知能力者)チームの予知した殺人が、これまで、誤報だった事はなかった。それは、世界最高の、もっとも進んだ犯罪摘発チームで、完全なシステムだった。そんな犯罪防止局のために誰よりもよく働いたのが、プレ・クライム部リーダーのジョン・アンダートン(トム・クルーズ)だった。
ジョンには悲しい過去があった。一人息子のショーンが、プールで誰かに拐われてしまい、行方不明のままになっているのだった。そして、彼はこの犯罪防止システムの実現にのめり込み、妻のララ(キャサリン・モリス)ともうまく行かなくなり別居、気力を保つために違法な麻薬も使っている状態だった。
ジョンの現在の最大の目標はここで成功したプリコグによる犯罪予防法案の全国化。そんなある日司法省のダニー・ウィトワー(コリン・ファレル)が査察にやってくる。プリコグたちの殺人予知システム自体に疑問はないが、犯罪予防局が合法的かどうかだ、とダニーは云う。殺人を犯すと予知された人間の運命をを変えてしまう執行に当たって、人為的なミスはないかと。
ダニーに強制され、普段は立ち入り禁止の液体サスペンション・チエンバー施設に入ったとき、不意にプリコグの1人のアガサ(サマンサ・モートン)がジョンにしがみつき、「あれが見える?」と天井に浮かぶプリ・ビジョンに目を遣る。常に《未来》に意識と感覚を漂わせている状態。つまり、未来に生きているプリコグが、現在の人間とコンタクトする、と言う異常事態が起こったのだ。しかも、その予知ビジョンは、アン・ライブラリーと言う女性を溺死させた事件で、犯罪予防局開設当時のものであり、殺人自体は防げなかったが、既に犯人も逮捕されている、と云う過去の事件だった
疑問を持ったジョンは、犯罪者収容所に向かい、管理官のギデオン(ティム・ブレイク・ネルソン)にアン殺しの犯人のカプセルを出させるが、プリコグのデータの記録のうち、アガサのイメージ・データだけが紛失しており、ジョンは違法を覚悟で残りのデータをダウンロードして持ち去る。ジョンは、アガサの件や査察の問題などで局長のラマー・バージェス(マックス・フォン・シドー)に相談に行くが、ラマーは、司法省が犯罪予防局を指揮下に置こうとしているが、心配ない、と保証する。
そんなジョンの運命を変える出来事が。ジョンはいつものようにプリコグチームが見る殺人の予知夢モニターを見ていた。その映像に写された景色には、全く馴染みがなかった。被害者の顔も知らなかった。しかし、殺人犯の身元は、明かだった。それは、彼自身。被害者の名前はリオ・クロウ。名前を見ても、全く見知らぬ他人だ。そんな男を36時間後に自分がどうして殺す羽目になると言うのだ・・・・?
何が何だか判らぬ内にジョンは逃げ出すが、司法省のダニーは鬼の首でも取ったように、自分で陣頭指揮を取り、ジョンの追跡を指揮する。網膜IDで個人が認識され、すべての行動が補足されてしまう未来社会、逃げるのは容易ではない。犯罪者の烙印を押され、これまでの立場から追われる身に逆転した途端、ハイテク管理社会の恐怖が迫ってくる。局長のラマーが無罪を信じてくれても、未来殺人者に弁護の予知はない。それは、ジョン自身が一番良く知っている。完全管理の磁気ハイウェイ・カーと地下鉄を利用し、狭い路地に逃げ込んだ所で、つい最近まで部下だったものたちに追い込まれた。ジェット・パックを背負った部下たちと派手な空中戦の末追跡をかわしたと思ったのも束の間、今度はダニー率いる捜査官らに車の自動組み立て工場に追い込まれる。ダニーとの一騎打ちで、ベルトコンベアーに落ち、成形ボディに閉じこめられて絶体絶命の危機かと思われたが、組み立てられた車を運転し、ジョンはまんまと脱出に成功する。
ジョンは、郊外に住む殺人予知システムの産みの親アイリス・ハイネマン博士(ロイス・スミス)の私邸に乗り込む。麻薬中毒の親から生まれた先天的脳障害者の研究から、画期的な殺人予知システムを考案した博士は、意外な事実を告げる。3人のプリコグのプリ・ビジョンが必ずしも一致するとは限らない、その場合、2対1になったマイノリティ・リポート(少数報告)は棄却されてしまうと。つまり、ひとつに確定しない未来予知があると云うこと。完全無欠だと思っていた予知システムにも、冤罪のケースがあり得るのでは、そして、ジョンの殺人予知自体がそれにあたるのでは?ジョンは、アン・ライブラリー事件で失われたアガサのマイノリティ・レポートを探すことにする。しかし、それはアガサの脳から直接ダウンロードする以外に方法がない・・・
ジョンの殺人発生まで後22時間。ジョンは、網膜IDを逃れるため、昔検挙したもぐりの医師エディ・ソロモン(ピーター・ストーメア)に眼球交換手術を任せる。回復までの12時間を、老朽化したアパートに身を潜めるが、犯罪予防局のローラー作戦で放たれた網膜探知ロボット“スパイダー”の急襲を受ける。なんとか窮地を脱したジョンは、交換した眼球と顔面筋肉弛緩剤の変装で局内部に潜り込み、アガサを連れ出す。
アガサの脳からアン・ライブラリー事件のマイノリティ・レポートのダウンロードに成功したジョンだが、違いが判らない。そんな状態のまま、殺人発生の時間は迫る。そして、ジョンとアガサはその現場へと到達する。現場へ踏み込んだジョンが見たものは、無人のベッドに散らばっている多くの子供の写真。そして、その中には、ショーンがいた。なんと、リオ・クロウは、ショーンを誘拐した犯人なのだ。そこへ戻ってきたクロウ。彼を問い詰めるジョン。そしてクロウは云う、ショーンは殺したと・・・
予知通り、やはり自分は彼を殺すのか???しかし、ジョンは運命を変えた。彼は自分の意思でクロウを撃つのを止めた。が、意外なことが。クロウが殺せと強要する。彼は、ある男に取引を持ちかけられ、自分が殺されることで得られる保険金を家族に残すことを代償に、偽の誘拐犯を演じていたのだった。ダニーか・・・。そして、自分を殺せ迫るクロウともみ合ううちに、ジョンは誤ってクロウを射殺してしまう。運命からは逃れられないのか・・・再び逃げ出すジョン。
ここで、また話は意外な展開を見せる。現場に一歩遅れて到着したダニーは、現場の不自然さを指摘する。なんで、わざわざ、誘拐犯が、自分の拐った子供たちの写真を此れ見よがしにホテルのベッドに散らばらせているのか???えっ?ダニーが犯人じゃないの?さらに、ダニーはアン・ライブラリー事件のマイノリティレポートの解析にも成功する。それは、波。なんと、アガサのマイノリティレポートに映っている殺人は、他の2人のものと同じように見えるが、殺人現場の池に経っている波の方向が違う。これは、何を意味するのか・・・しかし、この推理を密かにある人物に語るダニーは、射殺されてしまう。アガサが抜けたプリコグチームは、それを予知できなかった。
いつのまにか、ダニー殺しの汚名も着せられたジョンは。妻のララの元に逃げ込む。しかし、遂に彼は捕まる。万事休す・・・
しかし、さらにどんでん返しが。ジョンは犯罪者収容所から脱出できるのか?犯人の狙いは何なのか。プリコグチームの結成に隠された謎とは・・・
伝説の作家、フィリップ・K・ディックの小説「ザ・マイノリティ・リポート」を、スコット・フランク(「アウト・オブ・サイト」)とジョン・コーエンが脚色し、ジェラルド・R.・モレン、ボニーーカーティス、ウォルター・F・パークス、それにヤン・デ・ボンが製作を手掛けている。エグゼクティブ・プロデューサーは、ゲリー・ゴーロドマンとロナルド・シュゼット。
トム・クルーズを筆頭に、キャストはバラエティに溢れ、経験豊かな俳優を集めている。司法省ダニー役のコリン・ファレル(「タイガーランド」、「ジャスティス」)、プリコグのアガサのサマンサ・モートン(「ギター弾きの恋」でアカデミー賞にノミネートされた)。さらに名優マックスワォン・シドーが犯罪防止局局長のラマール・バージェス、ロイス・スミス(「プレッジ」、「ツイスター」)が、ハイネマン博士を演じ、キャサリン・モリス(「コンテンダー」)が、ジョンの妻ののララを演じている。その他の出演者は、収容所の管理人ギデオンを演じるティム・ブレーク・ネルソン(「オー・ブラザー)、禁制の手術を行うエディ博士を演じるピーター・ストーメア、それに、犯罪予防局の捜査員フレッチャーを演じる二一ル・マクドノー(「バンド・オブ・ブラザース」)など。
当初はダニー役にはマット・デーモンが候補に上がっていたり、アガサ役には、ケイト・ブランシェットとジェナ・エルフマンが考えられていたり、それに、メリル・ストリープが端役で一旦は出演に内定していたそうだが、取りやめになったとのこと。
スティーブンスピルバーグの選りすぐりのプロダクション・チームには、アカデミー賞を獲得した撮影監督ヤヌス・カミンスキー(「シンドラーのリスト」、「プライベート・ライアン」)、アカデミー賞を獲得した編集者マイケル・カーン(「レイダース/失われたアーク〈聖櫃〉」、「プライベート・ライアン」)、プロダクションデザイナーのアレックス・マクドウェル(「ファイト・クラブ」)、それに、アカデミー賞を受賞した衣装デザイナー、デボラ・L・スコット(「タイタニック」)が含まれる。何度もアカデミー賞を受賞したジョン・ウイリアムズ(「スター・ウォーズ」、「プライベート・ライアン」)が、スコアを作曲。作品の舞台となる近未来の世界のイメージをはっきりさせたのは、インダストリアル・ライト&マジック社の、視覚効果スーパバイザー、スコット・ファラール(「A.1.」)で、作品の画期的な視覚効果のスーパバイジングを手掛けた。アカデミー賞受賞者マイケル・ランティエリ(ジュラシック・パーク」)は、実際的な効果をスーパバイズした。ブライアン・スムルズ(「M:1-2」)は、主要なスタント作業をコーディネイトした。
逃げる場面は近未来らしく、高層ビルの壁面に沿って何台も空飛ぶ車が上下し、そこを跨ぐようにしてジョンは逃走する。高速道路にもビルから直に合流するようになっている。ビル群の間には数十台もの車が空中を往来している。高層マンションには窓の真横に空飛ぶ車は着壁?する。携帯電話は現代のよりももっと小型で簡潔。フィリップ・K・ディックの小説の映画化は他に、ハリソン・フォード主演の「ブレードランナー」(1982))やアーノルド・シュワルツネッガー主演の「トータル・リコール」(1990)。「マイノリティ・リポート」の全体的印象は「トータル・リコール」とリュック・ベッソン監督の「フィフス・エレメント」を彷彿とさせる。
また、この近未来では個人認証は網膜スキャンで行われている。地下鉄の出入りの際にも、ショッピング中の通路にも、スキャンレンズは至る所に設置されて、住民の動きを管理し、また即座に広告や勧誘の呼び掛けもその認識に応じて、ワンテュ-ワンマーケティングになっている。もちろん会社に入るのも、さらに仕事の部署に入るのも当然網膜スキャン。ジョンが時間がない中で敢えて眼球交換手術を行うのも、当然この網膜スキャンをクリアするため。そして、彼がその後、手にしている袋に入っているものは、彼自身の眼球。アガサを連れ出しに、犯罪防止局に忍び込むときに、坂道になっている通路に落として、追い掛けたりするのはお笑い。また、さらに最後の方でも、ひとつの重要なアイテムにもなっている。
でもまあ、ちょっと話がややこしくて、長くて、ストーリー自体は、ちょいと疲れました。映像的には、近未来映像は、なかなか見所あって、良かったですが。
日本公開は02/12/7。