最終更新日:1998.5.16 JST
1997年コスタ・ガプラス監督作品(PG-13) ワーナーブラザース配給
主演: ダスティン・ホフマン & ジョン・トラボルタ
銃撃犯が人質を取って博物館に立てこもる。その場に偶然、居合わせたテレビ・リポーターは「ネット局が飛び付くスクープを現場から生中継できる」と考えた。そして、2人の男の運命の歯車は狂い始めた。「マッド・シティー」
サム(ジョン・トラボルタ)は時給$8の博物館の元警備員。資金難に陥った博物館からサムは解雇通知を受け、再考を願い出るが、口下手な彼は何とか館長に話を聞いてもらおうと銃を取り出す。
しかし、たまたま現われた見学の小学生たちにうろたえた彼は、ひとまず館内のドアをすべてロック。さらに銃の暴発で、同僚の警備員を撃ってしまう。偶然館内にいたやり手だが、地方局に飛ばされていたTVキャスター、マックス(ダスティン・ホフマン)は、これをネットワーク復帰のための千載一遇のチャンスだと考えた。
「スクープ」とばかりにマックスは電話に飛び付き、局に一報。事件を生中継することで、視聴率はうなぎ登り。テレビで、家族のために仕事を取り戻そうとして、はずみで事件を起こしてしまった、家に帰りたいと語るサムに、同情が集まり、サムは一躍ヒーローに。
全国ネットに復帰し、思惑通りのマックスだったが、彼を地方局に飛ばしたネットワーク局のアンカーマン(アラン・アルダ)が乗り込んできて、その思惑は狂い始める。マックスを毛嫌する彼は、番組から彼を追い出していく。
そして、3日目の夜に入る。入院していた同僚の容態が急変、アンカーマンによってマックスがサムに要求を指示する場面がTVに流される。FBIもここが山場と乗り込んでくる。サムの運命は?そして、マックスに打ち手はあるのか?
今やワイドショーと区別がつかなくなっているTVニュースの内幕を、痛烈に批判した社会派映画。ニュースを演出し、自分の望むものに変えていくマックスを、ダスティン・ホフマンが熱演。家族を養わなければというプレッシャーからパニックを起こし、短絡的に銃を持ち出したサムをジョン・トラボルタが好演。
サムと過ごすうち徐々に彼に親しみを感じ、人間らしさを取り戻して行くマックスに対して、マックスのアシスタント役のローリー(ミア・カーシュナー)は、少女らしさを残す純真で人間味豊かなアシスタントから、血も涙もない女レポーターへと変貌して行く。
ネットワーク局のアンカーマンは、公平な客観報道を建前として登場。しかし「両論掲載」は必ずしも「公正な報道」ではなく、この映画の中では、少なくとも観客の目から見る限り、マックスの主張の方が真実を的確に描写している。もちろんそれも、彼の利害がからんで歪められているわけだが、その歪みだけを取り出して報道し、すべてを否定するのは公正とは言えない。犯人サムの中から同情しやすい点、ポジティブな面だけを取り出して報道するのも「公正ではない」が、サムにひたすらネガティブなレッテルを貼るのは、それ以上に「公正ではない」、ですね。
日本公開は98/5/9。