最終更新日:1999.7.20 JST
1997年マイケル・ケイトン=ジョーンズ監督作品(R) ユニバーサル配給
主演: ブルース・ウィリス & リチャード・ギア
「ジャッカルの日」のリメイクだけど、似ても似つかないアクションに仕上がった「ジャッカル」
世界で猛威をふるうチェチェン・マフィアを壊滅させようと、ロシア情報局とFBIが手を結び、モスクワで合同作戦が決行された。指揮を取るのは、ロシア側のコスロヴァ少佐(ダイアン・ヴェノーラ)とFBIのプレストン副長官(シドニー・ポワチエ)。彼らは、マフィアのボス、テレクの弟を射殺するが、これによってテレクの恨みを買う。
弟の死の報告を受けたテレクは、大規模な報復計画を企て、暗殺者ジャッカル(ブルース・ウィリス)を雇った。7千万ドルの報酬でこの大仕事を引き受けたジャッカルは、偽造パスポートと変装を駆使してヘルシンキからイギリス、カナダへと飛び、着々と殺しのお膳立てを整える。
その動きを察知したコスロヴァとプレストンは、刑務所に服役中の元IRA幹部デクラン・マルクィーン(リチャード・ギア)を訪ねた。デクランを通じて、ジャッカルの素顔を知る唯一の女、正体を隠してアメリカに住んでいる元バスク祖国と自由の過激派の女闘士イザベラ(マチルダ・メイ)に接触するのが、彼らの目的だった。が、自分もジャッカルの顔を知っていると主張するデクランは、捜査に協力する代わりに刑務所から出してくれと取り引きを持ち掛ける。プレストンはこれを承諾し、デクランはジャッカル追跡に加わった。
カナダで武器を入手したジャッカルが、ヨット・レースにまぎれてアメリカに入国するのではないかというデクランの推察を頼りに、捜査陣はシカゴのハーバーに飛ぶ。ついに桟橋で対面するジャッカルとデクラン。だが、武器の携帯を許されないデクランに、ジャッカルが仕留められるはずもない。そして浮かび上がる捜査陣内部の裏切り者の存在。イザベラの身に危険が迫っていると気づいたデクランは、彼女の隠れ家に急行する。
暗闇の中、突然なりだした激しいロックのリズム。その音にかき消されるように、ジャッカルの銃から放たれる銃弾。その銃弾がコスノバの身体に突き刺さる。
そして、ジャッカルのターゲットを割り出した時、すでにジャッカルはそのターゲットの前に現れていた。ジャッカルが、所有するミニバンを探せ! その中には・・・
「ジャッカルの日」とは全く別の作品として考えた方がいいとのことです。でも、ブルースの徹底した変装演技は、釣りマニアのブロンド男、チリチリの赤毛のオッサン、黒髪のラテン男、シルバー・ブロンドのパンク野郎、七三分けのエグゼクティブといろんなタイプの人間になりすます『セイント』状態で楽しめます。
監督は「ボーイズ・ライフ」「ロブ・ロイ ロマンに生きた男」等の、俳優の持ち味を生かした演出に定評があるマイケル・ケイトン=ジョーンズ。2大スターのどちらにもかたよることなく2人の男の闘いを描いている。アクションの描きかたは若干弱いが、じわじわとジャッカルが要人暗殺に迫るサスペンス演出はこの監督独自のもの。ただ、不思議な点はいくつも・・・
飛行機も落とすという超巨大マシンガンを買ったジャッカルは、砲座を発注するが、作った男は言う。「なあ、アンタ。これをヤバい仕事に使うんだろう? 設計図を返してほしいんだったら、報酬にもう少しイロつけてくんなきゃなあ」そんなことを言うと殺されると思ったら、あんのじょうそいつは、巨大銃の試し撃ちとして殺される。しかし殺したまではいいが、なぜ死体の始末をしない? 設計図を取り戻さない?死体の始末もせず、設計図を取り戻しもしなかったジャッカルは、当然FBIに足取りを掴まれる(男を殺したのは、設計図を取り戻すためじゃなかったのか!?)。以後のジャッカルの足取りは、移動する→邪魔者が現れる→殺す→死体の始末をしない→足取りを掴まれる(繰り返し)。これでは自分の足取りを追えと言っているようなものではないか。こんなやり方で、二十年間も捕まらんかったとは、警察がサボっていたとしか思えませんね。
クライマックスの暗殺シーンは、ジャッカルが、超巨大マシンガンに台座をつけ、これをミニバンの荷台に隠し、ノートPCから通信を利用したリモコン操作で狙撃するとのこと。警官に扮装してターゲットの演説会場に潜り込んだ彼が、後方のベンチに腰掛けてこのPC操作を行うが、それを見逃すシークレットサービスのお間抜けぶりや、現場にいる必要のないジャッカルが現場にいるといったところは笑って見逃すしかないですね。さらに、ジャッカルが暗殺に使おうとしたマシンガンは散弾で、腕に当たったら、腕がとぶ、木に当たったら、幹がめりめりと折れる。貫通力はすごい。暗殺ターゲットが現れた時点で、ターゲット周辺を弾のあるかぎり、ばりばり撃ってしまわないの?何故か、ターゲットをライフルで狙撃するように一生懸命狙い、結果的に邪魔されてしまい、必殺の一撃が外れてしまう。そのあと、舞台が裂けるぐらいばりばり撃っていたが……そんなことやっても、もう遅い。舞台が壊れるぐらい弾があるなら、どうして最初から連射にしないんでしょうねえ・・・。
最後に地下鉄を逃げるジャッカル。追いかけるデクラン。傷を負う、ジャッカル。地下鉄に詰めていた警官を殺し、女の子を人質にとるジャッカル。悲鳴をあげて地上に逃げる市民。デクランと相対し、銃を下ろすことを要求するジャッカル。仕方がないので、言うことをきくデクラン。人質を放すジャッカル。そして駅の構内には二人きり。そろそろ警官隊が来てもいいころなんだけど、警官は来ない。調子に乗って、世間話をするジャッカル。そんなことをしている間に、イザベラが急に現れ、ジャッカルを撃つ。いくらデクランから連絡を受けていたとはいえ地上の、本当にすぐ上に山のようにいた警官たちよりも、どうして早く来れるの!? 警察は暗殺会場で人員整理をするのに必死だったのか!?
最後に、IRAテロリストで「捜査に協力するために外に出してもらっています」のデクランに対して、刑事が言う。「俺は今回のことで手柄を立てたから、(中略)以後どんなヘマをしても、クビにはならない」。しかし、懲役50年の刑に服していたテロリストを逃がしたら、さすがにクビが飛ぶのでは・・・
日本公開は98/6/20。