最終更新日:1999.9.20 JST
1999年ジョン・アミエル監督作品(PG-13) 20世紀フォックス配給 1時間53分
主演: ショーン・コネリー & キャサリン・ゼタ・ジョーンズ
美術品専門の泥棒として世界最高の腕を誇るマックの新しい相棒の正体は?2人の仕掛ける銀行預金強奪は成功するのか?「エントラップメント」
美術品専門の泥棒として世界最高の腕を誇るマックことロバート・マクドゥーガル。ニューヨークで起こったレンブラントの名画盗難事件は、あらゆる証拠が彼の仕業であることを示していた。この事件で莫大な損害を被る保険会社の優秀な女性調査員ジンことバージニア・ベイカーは、老練にして孤高の男マックを罠にはめる(エントラップ)ための新たな窃盗を思いつく。最初は追う者と追われる者として出会った二人が、やがて複雑な駆け引きの末にパートナーとなり、80億ドルもの獲物をねらうことになるのだが…。
美術品をこよなく愛し、まるで趣味のように綿密な作戦を練って、鮮やかに仕事をやり遂げるプロ中のプロ、マック。そんなマックを大胆かつおいしい計画で挑発するジンの正体は? 互いに強く惹かれながら、ジンの甘い誘惑を泥棒のルールのもとにはねのけ、あくまで仕事のパートナーであろうとするマック。レンブラントから始まった二人の冒険は、中国の秘宝である黄金のマスク、コンピュータの2000年問題にからんだ銀行預金の強奪作戦へとエスカレートし、ニューヨークからロンドン、クアラルンプールへと展開していく。
■ニューヨーク。ミレニアム=2000年1月1日まであと16日
深夜の摩天楼。黒装束の怪しい人影が、高層ビルの屋上からハイテク装置を駆使して目当ての部屋に侵入する。さるオフィスの一角にあるその部屋の壁にかかっているのはレンブラントの名画。泥棒は絵をカンバスから外して丸めると、ポスターケースに入れてメール・チューブに放り込む。宛て先はクアラルンプールのコンラッド・グリーンなる人物。仕事を終えた犯人は悠然と部屋を出て行く。レンブラントのあった壁には、エルビス・プレスリーの肖像が残される
■クアラルンプール。ミレニアムまで15日
醜く太った闇のブローカー、コンラッド・グリーン(モーリー・チェイキン)が、レンブラントを盗んだ泥棒と電話で取引している。何か取引額をつり上げているらしい。
■ニューヨーク
ウェイバリー保険会社のオフィス。有能な女性調査員ジン(キャサリン・ゼタ=ジョーンズ)は上司クルーズ(ウィル・パットン)に、コンピューターの画面を見せながらレンブラント事件の報告をしている。鮮やかな手並みと、冗談めかしたウィット。すべての手口が、ある人物の仕業だと物語っていた。ロバート・マクドゥーガル、通称マック。ジンはクルーズを説得して、新たな獲物=中国の黄金のマスクを餌にマックを罠にかけることを承知させる。
■ロンドン。ミレニアムまで14日
ジンはマック(ショーン・コネリー)を尾行していた。やがて彼は、コンピューター関運のオフィス・ビルに入っていく。ジンが車の中で待機していると、警報が鳴り響き、マックが人々に紛れてビルから出てくる。ジンがホテルに戻ると、荷物がすっかり盗まれていた。仕方なく裸のまま、クルーズから渡された銃を枕元に置いて眠りにつくジン。夜中にふと気づくと枕の下は空っぽで、暗い部屋の隅にマックが座っている。「ルール1:銃を持つな。ルール2:裸の女を信じるな」。そう静かに言い放つマック。ジンは自分も同業だと言い、黄金のマスクを盗むために彼の協力を乞う。マックは明朝に会う場所を告げると、霞のように消え失せる。
翌日。マックはジンに偽のクレジットカードを渡し、ハースが営む古美術店から高価な中国の壷を“盗んで”くるように命じる。店に入ったジンはハースと一悶着起こした挙げ句、壷で彼を殴りつけ、割れた壷の中にあったフィルムをとっさに拾って逃げ出してくる。マックの本当の狙いは、マスクが展示されるベッドフォード・パレスの情報が入ったこのフィルムだったのだ。二人はハースの追っ手をまいて、とあるビルに到着する。そして彼は、洋服の詰まったバッグをジンに渡す。犯人はマックだったのだ。スーツケースは昨日オフィスから盗んだチップを入れてホテルのセキュリティに預けてあると言う。
二人はビルの屋上に停めてあったヘリコプターでマックの隠れ家に向かった。スコットランドの海に面した美しい城は、彼が集めた絵画で埋まっていた。ジンは得意げにレンブラントの犯人が自分だと打ち明けるが、それを聞いたマックはポスターケースに入ったその絵を取り出す。すべてを見通していたマックは、ジンがチューブに放り込んだ絵をメール・ルームから頂戴したのだ。
二人は早速、マスク強奪作戦に取りかかった。準備が進むにつれ、二人は次第に惹かれ合っていった。しかしある日、マックはジンの電話を盗聴して彼女の素性を知ってしまう。 やがて展覧会のレセプションの日、二人は完璧なチームワークでマスクを手に入れた。しかし帰り際、ジンがボートに乗ったマックにマスクを渡した途端、マックは彼女の頭を水の中に押さえ込んで正体を問いただす。保険会社はセキュリティ・コードを盗むための方策だと弁解するジン。半信半疑のマック。ジンは隙を見てマックの喉にナイフを突きつけるが、これを彼に渡すことで自らの嫌疑を晴らし、次なる大仕事を持ちかける。
■クアラルンプール。ミレニアムまで2日
新たなターゲットは銀行だった。コンピューターの2000年間題に目をつけたジンは、ニューヨークに本拠を置くICB銀行がシステムを変更する2000年1月1日に、マレーシア時間との間に10秒のタイムラグが起こるよう細工を施したのだ。コンピューターがコントロールを失うこの10秒間にプログラムをセットして、ICBマレーシア支店が扱う金80億ドルを自分の口座に移すという途方もない計画だった…。
翌日、グリーンの元に依頼した銀行コンピュータへの侵入に必要な頭取の網膜データなどを引き取りに行ったジンだが、交換に必要なレンブラントとマスクのうち、マスクは密かにマックによって、偽物と置き換えられていた。なぜ?怒りにくれるジン。そのころ、マックは謎の人物と逢っていた。そして、再びジンの元に現れたマックは、マスクをジンに渡し、計画を実行に移す。
大晦日のクアラルンプール。ようやく必要なものを手に入れたジン。しかし、その帰りにクルーズに捕まる。しかし、明日にはマックを逮捕するに十分な証拠を揃えると云い彼女は立ち去る。尾行をつけるクルーズ。そして、そこにも謎の人物が。
新年まであと1時間。年越しパーティーに乗り込むジンとマック。2人の強奪作戦は果たして成功するのか。そして、2人の正体は?
信頼と疑惑が交錯し、仕事に対するプロ意識とプライベートな感情が反発しあい、誘惑とストイックな恋心が葛藤する。そんな複雑な思いの腹を探り合いながらも、しだいに惹かれていく男と女。どんなときにもイギリス的なユーモアを忘れないダンディーでお茶目なマックと、大胆果敢にしてスマートなジンのやりとりが、愉快でコミカルな味わいを醸し出している。
ソフィスティケートされてとびきり魅力的な二人のキャラクターと、ちょっと歯がゆい恋の行方。あっと驚く強奪作戦と、ハラハラドキドキの逃亡劇。これは、まるでヒッチコックの「泥棒成金」を彷彿させるような、ロマンティックでスリリングで洒落た映画。ここには映画のあらゆる醍醐味と楽しさが詰まっている。ラブ・ストーリーとアクションとアドベンチャーが見事に溶け合った、パーフェクトな娯楽作だ。と云うのがうたい文句。
マックを演じるのは、年をとるごとにダンディズムに渋さも加わってきたショーン・コネリー。ウィットに富んだアーティストばりの泥棒を楽しげに演じて、これぞ大人の男のセクシーな香り! ジンに扮するのは「マスク・オブ・ゾロ」で初代ゾロの娘にして二代目ゾロの恋人役を情熱的に演じて注目されたキャサリン・ゼタ=ジョーンズ。映画界に久しぶりに登場したゴージャスな美貌と確かな演技力は、映画全体を明るく輝かせる。防犯用のレーザービームをくぐり抜けるシーンのしなやかな身のこなしはため息が出るほど美しく、タフで知的なキャラクターに熱い息を吹き込んでみせる。この二人のコンビネーションはもう完璧!
また、マックの仲間ティボドーには「パルプ・フィクション」や「ミッション・インポッシブル」のビング・レイムス、ジンの上司クルーズには「アルマゲドン」「追いつめられて」のウィル・パットン、闇のブローカー、コンラッド・グリーンには「ダンス・ウィズ・ウルブス」「マスク・オブ・ゾロ」のモーリー・チェイキンと、多才な俳優たちが脇を固めている。
監督は「コピーキャット」「ジャック・サマースビー」のジョン・アミエル。「レインマン」でアカデミー賞を受賞したロン・バスらによる軽妙洒脱な脚本を得て、スピード感あふれるサスペンスにエモーショナルなラブ・ロマンスを濃厚にからませて最高の出来。ラストのどんでん返しまで、一瞬たりとも観る者の目をそらさせない緩急自在の演出ぶり。
撮影監督は007シリーズの「ゴールデンアイ」や「マスク・オブ・ゾロ」などを手がけているイギリス出身のフィル・メヒュー。プロダクション・デザインは「フック」「グローリー」「未来世紀ブラジル」で3回にわたってアカデミー賞にノミネートされたノーマン・ガーウッド。マックの隠れ家となるスコットランドの古城のクラシカルな雰囲気から、ハイテク都市クアラルンプールのツインタワー・ビルまで、映画の舞台になるロケーションの妙も見逃せない。
なお、製作の一端を担ったファウンテンブリッジ・フィルムズはショーン・コネリーとロンダ・トーレフソンによって設立された製作会社。プロデューサーとしてもクレジットされているコネリーは、脚本、キャスティングにも深く関わっている。
少し話がややこしくて、終わってからああそう云う訳だったのかという感じを受けるのも、また楽し。
冒頭のNYのシーンとか、クアラルンプールの銀行から逃げ出すシーンなど、高所が苦手な私は見ているだけで、足がくがくでしたが・・・
しかし、2年ほど前のイーストウッドの「目撃」と云い、年取って渋くなった俳優さんは、泥棒がお好き?
日本公開は99/8/14。