L.A. Confidential

最終更新日:2002.11.17 JST

草模様

ネタばれ注意!!!

1997年カーティス・ハンソン監督作品(R) ワーナーブラザース配給 2時間18分

主演: ケビン・スペイシー、ラッセル・クロウ & ガイ・ピアース

1953年末のハリウッド。ダウンタウンの「ナイト・アウル・カフェ」で6人の男女が惨殺される事件が起きた。被害者の中には、免職されたばかりの元刑事が混じっていた。ロス市警刑事課の刑事たちが捜査に乗り出す。「L.A.コンフィデンシャル」

ゴシップ誌「ハッシュ・ハッシュ」の記者シド(ダニー・デヴィート)の語りによる50年代初頭のハリウッドと街に巣食うギャング達の紹介から始まる。

バド・ホワイト(ラッセル・クロウ)は女に暴力を振るう男を極端に嫌う、と云うより憎む刑事。同僚とパトロール中、仮保釈の男の住まいを回ると窓外まで響く男の罵声と女の悲鳴。バドは家に乗り込むと、男を叩きのめして手錠をかけ、女にポケットマネーで当座の生活費を渡す。

ジャック(ケビン・スペイシー)は女と踊りながら登場。カメラが引くとそこは映画スタジオ。新人の無名女優をくどくジャックの自慢はテレビの刑事ドラマ「名誉のバッジ」の監修を勤めている事。冒頭で語りをやっていた記者シドが現れると女優は怒って行ってしまう。「雑誌でレズ疑惑特集の時に取り上げた女だなぁ」とシドはニヤニヤ。

エド(ガイ・ピアース)はスミス警部(ジェームズ・クロムウェル)から警部補昇進試験が署内1の成績であった事を告げられ刑事部への配属を希望する。スミス警部はエドの若さを指摘し、刑事の仕事が綺麗事では済まされないことを忠告する。

クリスマスの晩、酒の買出しに出かけたバドは、酒屋で女優ベロニカ・レイクに似た女リン・ブラッケン(キム・ベイシンガー)と出会う。外に出た彼は、高級車の後部座席に、鼻に包帯をした女スーザンが座っているのを見て職務尋問をかけるが、そこにさっきの女優似の女が現れ彼女も仲間であることがわかる。車の中の男、ピアース(デビット・ストラサーン)は、バドが警察手帳を見せているにもかかわらず用心棒バズに彼を追い払わせようとする。バドは元刑事だったというバズをねじ伏せ、女に声を掛ける。「これはあなたの思っているような怪我じゃないの」と怯えたような顔で答える女。胡散臭い話だが、追求するだけの根拠が無く、バドは相棒ステンズランドと共に署に戻る。

ジャックはある有名人の息子の麻薬使用現場に踏み込み逮捕する様子をシドに取材させるが、押収物の中から「白百合の館」と書かれたカードを見つける。

メキシコ人の6人が連行されてきて騒ぎになるのは、バド、ジャックが署に戻り、エドが当直の引継ぎを終えた直後のこと。エド達の買ってきた酒が入った刑事達は、留置場前で彼らを叩きのめしてしまう。まずいことにその様子が写真に撮られ、翌日の新聞に「血のクリスマス」という見出しで一面を飾ると、査問会の調査が始まる。

エドは恐れ気も無く同僚を処罰に追いやる証言をすると約束し、望みの刑事部への配属を要求する。裁判で署の刑事達の大量処分が行われ、問題は決着、エドは出世と引き換えにバド、ジャックら同僚の憎しみをかう事となる。

謹慎処分を受けたバドは、スミスに殺人課で自分の下で働けと誘われる。「血のクリスマス」事件で麻薬課から風紀課に配属替えになっているジャックは、取締り対象になるポルノ写真集を横目に「白百合の館」に電話を掛ける。電話張に記載のない闇ダイヤルだ。犯罪のにおいが・・・。

そして、ダウンタウンのカフェ「ナイト・アウル」でバドの同僚で、「血のクリスマス」事件で免職になったばかりのステンズランド元刑事を含む6人の男女が惨殺される事件が起きる。捜査本部が立てられ、主役の3人の刑事達が捜査本部で顔をそろえる。ただ、警察無線が入った時には、殺人課は人が出払った状態で、ただひとり留守番をしていたエドが単身現場に駆けつける。

ステンズランドを殺されたバドは復讐に燃える。ステンズランドの検死に立ち会ったバドは、リン・ブラッケンと一緒にいた鼻に包帯をした女が同じ遺体安置所に運び込まれているのを見て、酒屋に乗り込み、ピアースの住所を聞き出すと、ピアースの屋敷に乗り込む。

鼻に包帯をした女スーザンのことを問いただすバドに対して、彼女を女優のリタ・ヘイワースそっくりに整形させていただけでなく、たくさんの女たちを整形して有名女優のそっくりさんに仕立て「仕事」をさせているとピアーズはあっさり認める。そして、バドはリン・ブラッケンの家を訪ね、「仕事」というのが「白百合の館」という売春屋で働くことだと知る。ピアースが売春稼業をあっさり認めたのは、他に隠したいことがあるためで、交換条件として、稼業を認めたということだとリンは云う。「おれは買収には応じない」とバド。しかし彼も不幸のにおいのするリンには心惹かれる。「ベロニカ・レイクに似てると言わない男は2年ぶりよ」とリンが云うと、バドはにこりともせずに、「君の方が彼女よりきれいだ」と。

ナイト・アウル事件の容疑者として黒人3人のチンピラが逮捕される。エドが尋問の結果、この3人は事件発生当時若いメキシコ娘を輸姦していたらしいことがわかりるが、まだ別の男に監禁されたままのそのメキシコ娘を救出したバドは怒りに任せて、監禁犯を射殺、真相が判らなくなる。

黒人3人のチンピラ達が尋問の合間をぬって逃亡するしたのを、エドは追跡するが、発砲したためやむを得ず射殺。「ナイト・アウル」事件は、チンピラ達の仕業と公表され、エドに武勲章が贈られ捜査本部は解散する。ところが病院でエドにあった救出されたメキシコ娘は「奴らを殺してくれてありがとう」とあっさり3人のアリバイを認める証言をする。彼らをナイト・アウル事件の犯人にすれば、殺してくれると思ったと。

一方、ジャックはシドにそそのかされて「名誉のバッチ」のパーティに出ていた無名の男優マットを検事エリス・ロウの「夜のお相手」をするようけしかける。その時、マットの口から「白百合の館」の名とオーナーがピアースという男であることなどを耳に挟む。ジャックとシドは、ロウ検事がその若い男優とベッドインしたところで踏み込み、「ハッシュハッシュ」誌に記事を売り込むというものであったが、ジャックはさすがに良心がとがめ、モーテルに先回りしてマットに手を引かせようするが、彼がモーテルに踏み込んだとき、既にマットは殺されていた。

バドは、死んだステンズラントが女と会うと云ってバドと別れたあとに、ナイト・アウルで死んでいることに着目。一体、彼は誰と会っていたのか?検視課を再び訪れたバドはカフェで死んだ女は、ウェイトレス二人とあのリタ・ヘイワースそっくりに整形されていた女スーザンの3人と知り、スーザンの家を訪ねる。彼女の母親から、彼女の恋人はステンズラントであったことを知り、さらにスーザンやステンズラントと一緒にいた、ピアーズの用心棒の元刑事バズの腐乱死体を彼女の家の床下に見つける。

エドは、ナイト・アウル事件を調べ直そうと検視課を訪れ、既にバドによって元刑事バズの腐乱死体が持ち込まれていることを知り、ナイト・アウル事件の再調査協力をジャックに頼む。「うちの課の者では駄目だ。バドを尾行してほしい」。ジャックが、自分の手柄(「ナイト・アウル」事件で与えられた武勲章)を無駄にするつもりか?と尋ねると、エドは「ロロトマシ」と答える。エドの父を撃った男がいた。男は捕まらず、エドはその男を憎んで警官になった。「ロロトマシ」はエドが自分でつけた犯人の名のことだと。逮捕を免れて逃げおおせた真犯人。ほくそえむ男。そんな世の中の「ロロトマシ」を捕まえるために自分は警官になったと。ジャックは自分の男娼(マット)殺しの捜査に協力することと引き換えにエドに協力することにする。

バドはバズが麻薬密売に関わっていた事を知るが、それはバドを尾行していたジャックとエドの知るところともなる。そして、ジャックとエドはバドがリンと愛し合っている姿を覗き見する。ジャックは自分の追う「白百合の館」にバドが関わっているのではと疑いを抱く。ジャックとエドはピアースのところへ行くが、ピアースはふたりを相手しない。

検視課から腐乱死体の身元判明の連絡があり、ジャックは検視課へ。エドはリンのところへ聞き込みに。エドは、リンにバドを買収するつもりで寝たのだろうと問いただすが、「バドを愛している。あなたと正反対だから」と言われてエドは逆上。リンを押し倒してしまう。しかし、窓の外ではピアースから連絡を受けたシドがカメラのシャッターを切っていた。

いつまで待っても待ち合わせの店に姿を見せぬエドに、ジャックは上司のスミス警部の家を訪ね、ここまでの経過を説明する。バズはステンズランドと組んで、ピアースの店に出入りする客を恐喝していたらしいのだが、証拠不十分で不起訴になっている。当時のバズとステンズランドの上司だったスミスが何か知らないかと。しかし、質問した途端、スミスはジャックをピストルで撃つ。驚愕のジャック。スミスの顔を見て、「ロロトマシ、、」と呟き息絶える。

翌日、スミスの命令でジャック殺しの捜査が始まる。スミスは出かけていこうとするエドを呼びとめ、ジャックの友人を知らないか、と尋ねる。「ロロトマシという名なのだが」。愕然とするエド。

そして、スミスはシドを呼び、バドに立ち合わせて尋問する。バドの暴力にひるんだシドは、ピアースは売春屋をやっていて、リン・ブラッケンという女と刑事のセックスを写真にとって脅迫する気だ、と白状する。逆上し、シドの車のトランクを探すバドの前に出てきたのは、自分ではなく、エドとリンのベッドインの写真。そして、バドは雨の中を表に飛び出して行き、その後、実はすべてが芝居であったシドは仲間であったスミスに殺されることに。

エドは署内で事件の背後関係を洗い直し、スミスこそ最有力容疑者であると確信する。そこに逆上したバドが。写真を見せてバドはエドに飛びかかるが、エドは叫ぶ。「スミスはジャックを殺して、こんどはお前に俺を殺させるつもりだっ」と。

初めて理解し合ったエドとバドはロウ判事のところへ乗り込み、素直には脅されていたことを白状しないロウをビルの窓から突き出して脅し、すべてを白状させる。ロウはマットの死でスミスの脅迫を受けていた。証言を取り付けたエドとバドはピアースの屋敷に、しかしピアースは既に殺されていた。エドはリンの安全確保のために彼女を迎えに行き、バドはシドを捕まえに行くが、ハッシュハッシュ誌の編集部に死体として転がっていた。

町はずれのモーテルにエドが来るように言っているという伝言を受け取ったバド。しかし、モーテルで出逢ったエドはバドが呼んだと云う。罠だ。逃げ出そうとする2人だが、すでに囲まれている。ジャックに続き、2人も殺されてしまうのか。真相は闇に葬りさられるのか・・・

ジェイムズ・エルロイの原作をベースにはしているが、ナイト・アウル事件の展開解決部はほとんど映画のオリジナル。原作は単行本上下2巻の大作で、「ブラックダリア」「ビッグノーウェア」「L.A.コンフィデンシャル」「ホワイトジャズ」からなる「L.A.4部作」の第3作目。この原作者のエルロイも10歳の時に母親を何者かにレイプされ惨殺されている過去を持つ。犯人は捕まらず、17歳にして孤児となったエルロイは、麻薬、窃盗、酔払い運転、押し込みなどで逮捕暦もある人物で、6フィートを越す大男でありながら細々とした手書きの原稿を書くとも伝えられている。

今のハリウッドに綺羅星のごとく輝くスター達の夢の競演映画。「アメリカン・ビューティー」、「ユージュアル・サスペクツ」で2回のアカデミー賞受賞のケビン・スペイシー、「グラディエーター」で同じくアカデミー賞受賞のラッセル・クロウ、「タイムマシン」、「メメント」のガイ・ピアースの3人が主役を演じ、「ナイン・ハーフ」のキム・ベイシンガー、「ベイブ」でアカデミー賞ノミネートのジェームズ・クロムウェル、「ツインズ」や「ジュニア」などのダニー・デヴィートが脇を固める。オールスターものは「オーシャンズ11」等のように緊張感の無い顔見世作品になってしまいがちだが、自らを“米国文学の狂犬”と称する作家、ジェイムズ・エルロイの描いた50年代の退廃と虚栄をテーマのハードボイルドの傑作を映画化を試みたプロデューサー(カーティス・ハンソン他)の手柄と云える。

キム・ベイジンガーがアカデミー助演女優賞を、カーティス・ハンソン監督とB・ヘルゲランドが脚色賞を受賞。作品賞や監督賞にもノミネートもされた。

う〜ん、なかなか1回見ただけでは、簡単に理解できない映画でした。でも、まあ、面白かったです。

日本公開は98/7/18。

草模様

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