最終更新日:2002.9.16 JST
1999年ジョゼフ・ラズナック監督作品(R) ソニーピクチャーズ配給1時間40分
主演: クレイグ・ビアーコ & グレッチェン・モル
30年代のロサンゼルスを再現したバーチャルリアリティー空間制作者の一人が殺された。犯人と目された男がその謎を追うと、そこには意外な事実が・・・「13F」
1937年のロサンゼルスから映画はスタートする。クラブで楽しそうに寛ぐ1人の老人。それは、驚異のバーチャル・リアリティの世界だった。まるでその世界にいるかのように虚像の世界に入り込める世界。
その老人はハノン・フラー(アーミン・ミュラー=シュタール)と云い、この驚異のシステムを開発した会社の社長だった。しかし、彼はその旅を終えて、バーで寛いでいる最中、何者かにバーの裏に呼び出され、刺し殺されてしまう。
ダクラス・ホール(クレイグ・ビアーコ)はフラーと共に6年前からシステムを開発して来た技術者。開発現場は、とあるビルの13階だった。ある朝、電話の音で目覚めた彼の部屋には、全く覚えのない血のついた服が。そして、電話は警察からのもの。警察に駆け付けた彼の前には無惨なホールの死体。事件を捜査する刑事マクベイン(デニス・ヘイズバート)は、いきなり最先端企業の後継者となったホールを疑う。また、天涯孤独のはずだったフラーの娘を自称する美女ジェーン(グレッチェン・モル)が出現。混乱しながらもホールは、どこかで会ったような記憶のある彼女に惹かれていく。
フラーは殺される直前、場末の酒場からホールの留守番電話にメッセージを残していた。「とんでもないことに気づいた。万一のことを考えシステムに君宛てのメッセージを残しておく」さらに、ホールをゆすりに来た酒場のバーテンまで惨殺されてしまう。自分の潔白に自信の持てなくなったホールは真相を探すべく、同僚のホィットニー(ビンセント・ドノフリオ)の協力を得て、初めて1937年の仮想世界に飛ぶ。
ツェッペリン墜落の号外が飛びかう1937年の世界。ここではホールはファーガソンという銀行員、フラーはグリアソンという名の善良な古書店主。ホィットニーはアシュトンという高級ホテルのバーテンダーとなっている。生前のフラーは堅物だったが、37年の世界にやってくるとシルクハットの正装で浮き名を流していた。古書店主としてのグリアソンはフラーとなってさまよう夜の記憶があいまいだった。
ファーガソンの姿をして古書店主グリアソンを訪れたホールは、グリアソンのおぼろな記憶から、フラーのメッセージはアシュトンが預かり、なおかつ密かに開封して読んでしまったことを突き止める。アシュトンはその手紙で自分が仮想の人間であることを知り、かつ「人間最大の秘密をこの目で見てきた。」ことでその事実を確認したという。自分が作られた仮想の存在で、それをあやつっているのがフラーとホールだと思い込んだアシュトンは激昂してホールを襲う。しかし時間切れとなり、ホールはかろうじて現代に逃げ延びるが手紙の内容は知らぬままだった。
ジェーンが消えてしまった。ホールが足跡を辿ると、ナターシャの名前でスーパーのレジをやっていた。「前に会ったことがある気がする」とはいうもののホールは知らない様子。ホールはその夜車をどこまでも走らせ、「人間最大の秘密」を見てしまう。
ジェーンがオフィスに訪ねてきて真相を明かす。「こんな事がいくつあるんだ?」「数え切れないほど存在するわ」。ジェーンは、「人間最大の秘密」を見破ったフラーの死後、コンピューター回路を閉鎖させるためにどこからか送られてきたのだった。ジェーンはホールの意識にシミュレートした。
デイビッドは最初は普通の人間だったが、やがてシミュレーションで遊ぶことに熱中し、神になった気で異次元での世界で殺人を楽しむようになってしまった。そしてホールに恋したジェーンを殺そうとしていた。
一方13Fでは好奇心をおさえきれなくなったホィットニーが1937年に飛ぶ。彼がシミュレートしたアシュトンはホールの分身ファーガソンを縛って車のトランクに閉じ込め移動中だった。警察に怪しまれ焦ったアシュトンは突っ走ってきたトラックに跳ねられ突然の死を迎える。アシュトンの姿をしたホィットニーは37年の世界で死に、現在にもどったのはホィットニーの姿をしたアシュトンだった。
目分はいったい誰なのか?目の前にいるのは何者なのか?これは果たして現実なのか?「人間最大の秘密」知った者たちが、自身の存在と謎の結末を求めて「13F」を駆け巡る。
あ〜あ、ややっこし・・・^
「インディペンデンス・デイ」「ゴジラ」の監督として大ヒットメイカーの名を不動のものとしたローランド・エメリッヒが今度は製作者の側に回り、才能あるドイツ映画人を結集、クールで渋く、スタイリッシュで悪夢のようにそら恐ろしい世界を織りなした。13Fから縦横に、無限に広がる恐るべき"人間最大の秘密"を解き明かす、これは新世紀のSFミステリーであり・・・もしかしたら現実かもしれない。
監督はエメリッヒの「ゴジラ」で第2班監督をつとめたジョゼフ・ラズナック。故国ドイツではすでに高い評価を得ている実力派。ラズナックはラベル・センテノ=ロドリゲスと共に、ダニエル・F.ギャルイの小説「シミュラクロン−3」を原作に脚本も書いた。製作は他に、ウテ・エメリッヒ、マルコ・ベーバー。撮影はドイツの映画、テレビで活動するベディゴ・フォン・シュルツェンドルフ。編集は「暴走機関車」でアカデミー賞候補となったヘンリー・リチャードソン。美術は「ブレイド」のカーク・M.ペトルチェッリ、衣装は「インディペンデンス・デイ」「ゴジラ」のジョゼフ・ポッロ。音楽はやはりドイツから、ハラルド・クローサー。
原作に比べると、物語の大筋は同じだが,登場人物をかなり整理して,映画用にすっきりさせている。仮想空間の入れ子構造という発想は目新しいものではないが,仮想空間で描かれるシーンが,未来ではなく1930年代と過去なのが新鮮だ。CGも過去の町並みとセットの融合で多用されており,特典映像ではCG使用前後のシーンを比較している。現代はシャープな蛍光灯の明かり,過去は暖かみのある白熱灯の明かりと区別している。
主役のダグラス・ホールには、「ロング・キス・グッドナイト」のクレイグ・ビアーコが扮し、相手役である「ラウンダーズ」のグレッチェン・モルと共に、古典的美貌で映画のロマンティックな面を浮き立たせているほか、「シャイン」「Xーファイル」、また最新作で「聖なる嘘つき」に出演しているベテラン性格俳優、アーミン・ミュラー=シュタール、「MIB」で怪演を見せたビンセント・ドノフリオ、「メジャーリーグ」シリーズのデニス・ヘイズバートらが、がっちりと脇を固めている。
この映画は1998年の2月に撮影が開始された。ロケ地は、ロンクビーチに停泊している有名なクィーン・メリー号、サンペドロ周辺、パサディナ、ハリウッド・ヒルズを含むロサンジェルス全市。撮影班は1つのロケ地に3、4日いては移動、最終的にはロスのダウンにあるウノカル・ビルで数週間、過ごしだ、午前中はサンペドロのロケ地で30年代のダンスホールのシーンを撮影、午後からは街に出て現在のシーンを撮る、などどいうこともあったそうです。
ちょっと難しい内容ですが、SFファンなら結構楽しめます。映像もなかなかしゃれてますし。
日本公開は2000/2/19。