これは、11月初頭から開発に入ったムビラスキイ@アンプ付き仕様。筐体は例の如く廃品利用で今回は米軍の救急箱というチョイスである。この箱の中に、簡易救急キットが詰め込まれていたのだが、賞味期限が切れたので一昨年に退役してパーツボックスと成り果てていたものに再び脚光が浴びせられたというところか。

問題は、スピーカーの選定である。筺内部のクリアランスは防水仕様のために見掛けより幾分か小さな値となってしまうことを考慮すると、スピーカーの厚みは最大で50oがいいところ。この要求仕様と音質というファクターを考えてのチョイスとなる。



当初はケヴラーコーンのBOSE製フルレンジユニットを奢るつもりであったが、スペース不足のために会えなく撃沈。クセのない音質で、それなりのパワーを受けられると言うことで、最終的にはFostexの8cmフルレンジを選択した。が、出力は10Wが限界で、それなりといえばそれなりのキャパが少々心配である。



パネルは全てガラスエポキシで組み立てるという、「アンチ・ナチュラリスト仕様」が当初のコンセプトであった。エコをCIのキーワードに掲げる胡散臭い企業が多いこのご時世に対する反逆とは聞こえがよいが、声が小さすぎて「無意味以下」と言うこともマタ厳然な事実である。が、そのアンチな夢も「音質の耐えられない軽さ」という、楽器としてのレゾンデートルの危機に直面して会えなく玉砕し、楽器部分のベースは以前から使用しているアフリカンブラックウッドの単板に取って代わられる。↓

しかし、無情にも切り倒されたアフリカの木を極東の僻地で「楽器」というなんの役にも立たないシロモノの素材として利用することこそが、ある意味アンチ・エコロジーな行為なのではないか?と自問してみる。「エコと嘘とヴィデオテープ」というところか、なんじゃそりゃ。

一方ボディー側のパネルはガラスエポキシのママで開発を継続することにした。とにかく、1oも余分なクリアランスは存在しないためだ。スピーカーが鎮座するポイントには、Mbを象ったサウンドホールを奢ることにした。



チューニングは1号機で採り上げた、上下レイヤーをオーソドックスなダイアトニックとペンタトニックに分ける組み合わせ。蓋の部分に楽器を仕込むデザインは画期的であったが、筺の内面にセンサーが設置されるために、蓋表の感度が尤も過敏となってしまうところが弱点である。反面、使い方を工夫すれば、蓋をセンサーとして使用することも可能であるが。下の写真は内部回路。残念ながら、当初の計画で入れ込んでいた右側のVCF基板はお蔵入りとなり、同時に採用していた、パワーアンプICLM4940 の使用も要求される音質面をクリア出来ず却下となった。新たにオーソドックスなフェンダータイプのギター用EQ(回路定数はオリジナルから変更されている)がよりハイパワーで使用実績のあるパワーアンプICLM3886と共に採用された。



最終的にパネルは赤く塗ることになった。所謂フェラーリレッドである。残念ながら、当社比で3倍はパワーアップしていない。

エレキ部分としては、当初VCFを奢るつもりであったが、音質がイマイチだったので、即お蔵入りにして、オーソドックスなギターアンプ由来のEQ回路の定数を最適化したものを急遽組み込んだ。が、EQの採用はライヴを考えると大正解で、手元で微妙にハウリングをコントロールすることが可能となった。まあ、アンプ自体も手元にあるので、この表現は?であるが、電源容量よりも、スピーカーの定格よりもハウリングが出力決定に影響してしまったのは想定外の皮肉である。

電源はスイッチングタイプでAC100〜120Vに対応している。
その他、楽器接続が可能な入力端子をパネル右中に追加、ギターや他の楽器をムビラスキイと一緒にアンプリファイすることが出来る。

楽器入力の下のライン出力はごついロック付きコネクターとなっている。規格はアンバラ。

スイッチング電源はアイドリング時の消費が少ないので、発熱は最小だが、アンプにパワーを突っ込むとそれなりに温度が上がってしまうようである。夏場の運用状況が予想されないので、その点に関しては継続的に観察する必要があるだろう。
開発費は総額で約20万円弱。部品代の重複や、加工用の工具、採用した回路の廃棄など、塵が積もった結果がこれだ。売値は13万円だから、大赤字である。プロトタイプ製作はノウハウの蓄積がないのでどうしても無駄の塊となってしまう訳だが、今回は痛かった。やはり、筺は最後に作るべきものなのであって、最初に筺ありきな規格はそれ自体がスタックの危険をはらんでいる、ということを身をもって体験出来たプロジェクトであった。2台目はもう少しクレヴァーに作り込むことが出来そうではあるが、それが何時なのかは判らない。 出来は結構気に入ってはいるのだが。